第10話 ウォンの策(7)
地面に物が倒れる。倒れ込んだ鈍い音と共に、自称此の国の漢王だと叫ぶウォンの口から悲痛な声が漏れてくる。と、言うことは?
う~ん、どうやらウォンは、健太の親衛隊の隊長ダイの叫び! 下知! と、共に放たれた鋼の戟の一本が、逃げる。逃走する。ウォンの両足の間に上手く落下したが為に、彼は足を盗られ、そのまま地面へとダイブ! 転がってしまったようだ。
だからその時にウォンは自身の身体全体を強く打ってしまい苦痛、悲痛な顔、相。そして声を「うっ、ううう」と漏らすのだ。
でも、彼を追ってくる健太の親衛隊の隊長ダイと部下達は、いくらウォンが元自分達の領主であり。主。主従関係だったとしても見逃してくれる訳ではなく。
(む、無念……)と。
ウォンは思いながら、自身の瞼を閉じ死。冥府へと誘われる覚悟を決めるのだ。
う~ん、やはり、ここつい最近は、まともに食事や水も飲まず食わずでいたウォンだから。以前のような一騎当千万夫不当の、切れのある活躍。武勇を元家臣達に魅せることもできずに。多勢に無勢で敵の、元家臣達の戟の刃の錆と化し、骸になるしか、ないようなのだ。
だから死を覚悟したウォンは目を瞑り。愛する女性……。
女王アイカの幼い頃から今の大人に至るまでの成長過程の容姿の思い出……。
幼い自分自身と仲良く手を繋ぎ、このジャングル内を冒険して駆け回っていた。幼い頃の淡く、甘い。楽しい日々の思い出を懐かしく思い出すのだ。何で自分達は大きく……。
そう、大人になってしまったのだろうか? あのまま幼い頃の楽しいひと時のままならば、女王アイカを自分が独占をしながら楽しく冒険、遊ぶことが可能、続けることができたのに。
今の自分では直ぐに、野心と覇王になりたい願望ばかりでて、女王アイカのことを好き! 好きなのだ! 愛している! それも、心の奥底から愛しているのだと、叫ぶ! 呟く! 囁いても。自身の愛するアイカは信用をしてくれない。直ぐに猜疑心のある目で自分を見詰めてきて、あの男……。健太の許へと直ぐにいき。寄り添い始め。己の身体を委ねるから口惜しくて仕方がない。仕方がないのだ。
でも口下手の自分は、死ぬ間際まで、アイツのこと。女王アイカのことをこんなにも愛する。愛おしく想えるほど純真に好きなのに。
ウォンは、そのことを女王アイカに告げることもできずに冥府へと旅立つようになってしまう自分自身が口惜しくて仕方がないのだよ。
だから「無念」、「無念だ……」と、何度も嘆くように呟く。