121章 ミライが倒れる
ペットに餌をあげていると、見覚えのある女性が顔を見せた。
「アカネさん、こんにちは」
仕事を終えたばかりなのか、疲労が残っているように感じられた。人間の身体というのは、簡単に疲れを取ることはできない。
「ミライさん、こんにちは。仕事はどうしたの?」
ミライの目元を見る。寝不足なのか、目にクマができていた。
「予定よりも早く終わったので、こちらにやってきました」
仕事を早く終えるために、睡眠を削ったと思われる。ミライは自分の身体に、強烈な鞭を打ってしまった。
「疲れがたまっているみたいだから、身体を休ませた方がいいよ」
ミライは多忙であるため、休みを取るのは難しい。身体を休められるときは、しっかりと体を休めたほうがいい。身体は消耗品であるため、体内ダメージを減らすのが重要となる。ダメージを蓄積すると、早い段階でガタが来ることになる・
「仕事をしていないときは、アカネさんと一緒に過ごしたいです。アカネさんと過ごすことによって、生きる希望をもらうことができます」
身体は重たそうなのに、声はハキハキとしている。ミライの心の中の喜びが伝わってくるかのようだった。
「ミライさん・・・・・・」
「火傷が治ったからこそ、心の底から笑えるようになりました。火傷をしていたままだったら、楽しいという感情は芽生えなかったと思います」
ミライの身体が左右に揺れるたので、手を差し伸べることにした。
「ミライさん、睡眠をしっかりととろう」
「そうですね。睡眠をとってきます」
ミライはゆっくりとした足取りで、母親の部屋に向かっていく。足取りの重さからして、無理をしていたのが伝わってきた。
ミライを連れていくときに、ミライの母親と出会った。
「ミライさんが疲れているみたいなので、睡眠を取らせるようにしてください」
クタクタになっている娘を見て、母親の瞳が潤んでいた。心配しているのが、はっきりと伝わ
ってくる。
「ミライ、ゆっくりと休むんだよ」
「おかあさん・・・・・・」
「あんまり無理をしないでね」
ミライは小さく頷いた。
「うん、わかった」
「明日は休みだから、熟睡をするように」
ミライは静かに首を振ったあと、地面に倒れてしまった。アカネは回復魔法を使用して、彼女のケアを行った。
「私が部屋まで運びます」
魔法で移動させようかなと思っていると、ミライの母親から声をかけられることとなった。
「私も手伝います」
一人で運んだ方が早いけど、母親の思いを優先させることにした。
「私が足を持つので、頭を支えてください」
「わかりました」
ミライの足を持つと、骨の感触があった。骨からは彼女の苦労、疲れなどが凝縮されているように感じられた。