116章 エサ
「エサをください」
「ありがとうございます。こちらがリストとなっています」
餌として、「パン」、「チーズ」、「ミルク」、「バナナ」、「パイナップル」、「オレンジ」などがあった。動物の種類が多いため、餌は必然的に多くなる。
前回はあったはずの、「セカンド牛」は見当たらなかった。本日は入荷していないのだろうか。
「セカンド牛はありませんか」
「ありません。調理する時間が取れないこと、必要量の確保が難しいこと、肉の値上がりなどもあって、メニューから消えることになりました」
ワンちゃんたちに肉をプレゼントしたいという、希望を叶えることができなくなった。そのことを残念がっていると、ミライの母親から声をかけられた。
「家庭用の肉が2キロだけ残っています。それを調理しましょうか」
前回にやってきたときは、水の節制をしていた。そのような家庭においても、肉を当たり前のように食べている。「セカンドライフの街」の生活水準は、見違えるほどよくなっている。
肉を食べられるようになったのは、ミライの功績も大きい。彼女が絵を描くことによって、莫大な恩恵をもたらしている。
「食用の肉に手を付けるのは、気が引けますね」
「スーパーで購入できるので、だいじょうぶですよ」
「それなら、お願いします」
肉を与えられると知ったことで、アカネの鼻息は荒くなっていた。
「アカネさんが必要とするのであれば、ハルキに買い出しに行ってもらいます。遠慮なくいって
くださいね」
「カウドック」、「ワンキャット」、「カバーン」などは、肉を大好物としている。全てに肉を与えるとなると、かなりの量が必要となる。
「セカンド牛を20キロください」
「ありがとうございます。娘を呼んできますので、しばらくおまちください」
ミライの母親は、個室に向かっていく。アカネはその様子を、ゆっくりと見守っていた。
5分ほどで、二人がやってきた。
「おかあさん、買い出しに行ってくるね」
ハルキが出発する前に、アカネは声をかける。
「私も一緒に行きたい」
「わかりました。一緒に行きましょう」
二人以上で買い物に行くのは久しぶりである。アカネの気分は、大いに高まることとなった。