第19話 エルフな勇者さまは、鋼の乗り物を見て驚きます! (9)
「えぇ~。何? それ?」と。
「私にそんな事を言ってきても解らないよ。一樹~」と。
僕に不満、だけではない。
「本当にこんな鋼の塊が動くの~?」と、再度尋ねてきた。
だから僕はエルへと、自分自身の指先を動かし。ある物を指し。
「うん、動くよ……。ほら、見て?」と、エルに告げると。
「あっ、本当だ? 一樹の鋼の乗り物よりも大きな鋼の乗り物が動いている……」と。
エルは自身の口を動かしながら、僕達二人の前を下る普通車。白のクレスタを見詰める。
「……でしょ?」
だから僕はこんな言葉をエルへと告げると。
「うん」と、僕の可愛い金髪碧眼の奥さまは頷く。
〈ガチャン!〉
そんな様子──。走り去るクレスタのテールをいつまでも見続けているエルの真横に僕は寄ると。このようにNコロの助手席の扉を開け。
「お妃さま、どうそ。御乗りください」と。
何故か僕は、大変に畏まった単語で、エルを呼んでしまったのだ。
そう僕は、『奥さま!』、『勇者さま!』、『宇宙人さま!』『エルさま、どうそ~』ではなくて。何故か『お妃さま』と、自身の口から自然と単語が出たから。『あれ?』と、思い困惑をするのだった。
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