第19話 エルフな勇者さまは、鋼の乗り物を見て驚きます! (8)
〈ギャン!〉
〈カン!〉と。
鈍い金属音──。
その後には、〈ブル、ル、ルン〉と音──。Nコロのエンジンに火は灯され。灯されるから。
〈パァ~ン!〉
〈パン!〉
〈パン! パン!〉と。
二サイクル独特のエンジン、金属音が甲高く、物静かな住宅街中に、裏山の山彦の音、反射音と共に、煩いくらい響き渡る。渡るからね。
「な、何~。こ、この音は~。か、一樹~。う、煩いよ~!」と。
エルは自身の両耳……。魔法で小さくなった自身の両耳を、華奢な掌で押えながら怪訝しい表情で僕へと不満を漏らしてきたのだ。
でもさ、この時の僕は、車好き。車を改造、チューニングするのが好きな人達ならばわかる。理解ができると思うのだが?
自分のマイカー、愛車の自慢と説明するのだ。僕が宇宙人だと思っているエルフな奥さまへとね。
「ああ、これはね? この車の排気量を360ccから加工してピストンを大きくして450ccにボアアップした上にウェーバーキャブを装着しているからエンジン音が大きいんだよ」と説明をする。してもさ。エルは女性だから興味が無い。と、言うよりも?
未だこの昭和の終わり。世紀末が近づいている異世界日本にきたばかりだから。僕がこんなことを説明をしてもわからない。