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さぁ新年の営業開始です

 ヒローカ詣を終えた僕達は家に戻りました。
 屋台街をしっかり3往復したもんですから、家に戻ったのはお昼をずいぶん過ぎてからでした。

 しかし、さすがはナカンコンベで開催されているお祭的なイベントですね。
 あの人出たるや、ブラコンベ辺境都市連合が開催している季節の祭りの人出に勝るとも劣らない感じでした。
 定期魔道船を利用して季節の祭りにやってこられるお客様も多いのですが、今回は逆に定期魔道船を利用してヒローカ詣にこられたお客様も多かったってことなのかもしれませんね。

 その夜の子供達は、屋台を見て回ったのがよっぽど楽しかったらしく、お風呂にみんなで入った際にも、
「パパ! また来年も行きましょうね!」
 僕の横に座って湯船につかっているパラナミオが満面の笑みでそう言いまして、それに、
「リョータも行きたいです!」
「アルトも、ぜひお願いしたいですわ」
「ムツキもにゃしぃ!」
「アルカも、リョータ様やみなさんと一緒に行きたいアル」
 と、他の子供達も、笑顔で手をあげていた次第なんですよ。

 この笑顔を前にして、僕は
「うん、絶対にいこうね」
 そう、笑顔で返答したのはいうまでもありません。

 興奮し過ぎたのか、夜はいつもよりも早くベッドで寝入った子供達でした。
 そんな子供達の寝顔を笑顔で見つめていると、スアが僕の手を引っ張りました。
「どうかしたのかい? スア」
「……旦那様、お正月の行事をしないと……」
「お正月の……って、僕の世界の行事ってことかい?」
「 (コクコク) ……旦那様の本に書いてあった、よ」
「えっと……こんな夜中にする行事なんてあったかな?」
「……姫始め」
「あぁ!?」
 ポンと手をうつ僕。
 そんな僕の前で、モジモジしながら顔を赤らめているスア。
 
 僕は、そんなスアをお姫様抱っこすると、そのまま3階にありますスアの研究室の中へと移動していきました。

 で

 その中にあります簡易ベッドにスアを横にしまして……

 おっと、ここからは黙秘させていただきますよ。

 まぁ、新年早々ってことで少々がんばらせていただきましたとだけお伝えさせていただきます。

◇◇

 翌日。

 コンビニおもてなしは本日より新年の営業を開始します。
 それに先立ちまして、コンビニおもてなし6号店の2階にあります会議室の中には、コンビニおもてなし本支店ならびに関係店舗の責任者のみんなが集まっています。

 この責任者会議は、以前はコンビニおもてなし本店の応接室でおこなっていたんだけど、支店や出張所が多くなった関係で応接室では人が入り切らなくなったもんだから、最近は一番大きな応接室があるここ6号店で行っているわけです。

 いつもは毎週月曜日の営業時間終了後に行っているこの責任者会議ですけど、今日は新年最初ってことで朝一番に行っています。

 まず、夜明け前に起きだした僕は、本店の厨房で今日の調理作業を終えてからこの会議室へ向かいました。

 ちなみに、厨房に入ると、
「ててて店長さん、今日から復帰させていただきますでごじゃりまする」
 ヤルメキスが笑顔でスイーツを作っていました。

 そうなんです、育休中だったヤルメキスが本日より復帰なんです。
「ヤルメキス、子供の事があったらいつでも言ってね、無理なくやってくれたらいいからさ」
「ははははいです、いいいいつも温かいお言葉本当にありがとうごじゃりまするぅ」
 そう言うと、ヤルメキスは笑顔でジャンピング土下座をしていきました。
 久しぶりですが、キレ味は以前のままでしたね。

 そんなヤルメキスを加えたコンビニおもてなし本店も、これでフルメンバーが揃いました。


 僕が到着した応接室にも、すでに会議のフルメンバーが揃っていました。

 辺境都市ブラコンベにあります2号店店長シルメール
 魔法使い集落にあります3号店店長のエレ
 辺境都市ララコンベにあります4号店店長のクローコさん
 辺境都市ナカンコンベにあります5号店東店店長のシャルンエッセンス
 同じく、5号店西店店長のスシス
 オザリーナ村にあります6号店店長のチュパチャップは、この会場の店長なのでみんなにお茶を配ってくれています。

 おもてなし商会3店舗を代表して、ナカンコンベ店のファラさん
 コンビニおもてなし出張所テトテ集落店からはリンボアさん
 同出張所チウヤゲレンデ店からはクマンコさん

 クマンコさんは4号店の店員だったのですが、お父さんのクマタウロさんがおもてなしゲレンデ宿を再開することになったもんですから、そのお手伝いをするために里帰りすることになった次第なんですよ。
 そんなわけで、クマンコさんは新しく系列店になったおもてなしゲレンデ宿の代表代理としての参加でもあります。

 系列店としまして……
 辺境都市ブラコンベにありますおもてなし食堂エンテン亭からは店長のテンテンコウ♂
 辺境都市ナカンコンベにあります食堂ピアーグからは店長のライヘ
 同じくマクローコ美容室兼クキミ化粧品製造部門からは両方の責任者を兼任しているマクローコ
 おもてなし診療所からはテリブルア
 薬品製造部門兼太陽光発電部門兼人材派遣部門の3部門の責任者を兼ねているスア
 狩猟部門の責任者イエロ……は、すでに狩りに出ていて欠席です

 最後に、コンビニおもてなし店舗検討部門より責任者のブリリアン


 以上、16名が一同に介しています。

 正式には、ティーケー海岸出張所や、おもてなし酒場が2軒、定期魔道船などもあるのですが、
 ティーケー海岸出張所は、ファニーさんがおもてなし商会と兼務しているので、ファラさんが代理ということで。
 おもてなし酒場は、ガタコンベ店は本店の僕が責任者を兼務、ブラコンベ店は2号店店長のシルメールが責任者をそれぞれ兼務しています。
 定期魔道船も、僕が責任者を兼務なわけです、はい。

 
 席に着きながら、みんなを見回した僕なんですけど……気がつけばコンビニおもてなしも本当に大規模になったなぁ、と、改めて思った次第なんですよ。

 この世界に飛ばされてきてすぐの頃はどうなるかと思ったもんですけど……ホントに感慨深いです

 これに、協力店的な立場にある、ルア工房やペリクドさんのガラス工房なんかもあるわけですからね。

 それだけに、みんなのためにも僕はより気を引き締めて頑張らないと、と、気持ちを新たにした次第です。

 みんなが着席したのを確認すると、僕はおもむろに立ちあがりました。
「みんな、忙しい中集まってくれて本当にありがとう。年始ってことで一言だけ。今年もよろしくお願いします」
 僕がそう言って頭をさげると、
「「「lこちらこそ、よろしくお願いします」」」
 みんなが一斉に返事を返してくれました。

 なんとも心強い返事を前にして、僕は思わず笑顔になりました。

 その後、

 ・クマンコさんの転勤
 ・ヤルメキスの復帰
 ・マキモ10人姉妹の配属

 これらの事務連絡をみんなに伝えていきました。
 みんなからは、特に何もなかったので会議は早々に終了になりました。

 僕も、チュパチャップにお茶のお礼を言うとすぐに1階へ降りていったのですが、

「うわぁ、ま、また何もないところで転んでしまいましたぁ!」
「へぁ!? だ、だからなんでマキモのスカートをズリ下ろすんですかぁ!?」
 お店の方から、アレーナの困惑した声と、マキモの絶叫が聞こえてきていまして……なんといいますか、いつもの光景というか、新しい光景というか……これも6号店名物になっていくんですかねぇ?

 そんな事を考えながら僕は、すり寄ってきたスアの肩に手を置いていきました。

「スア、今年もよろしくね」
「……旦那様、こちらこそ」
 僕とスアは、笑顔を交わし合いながら転移ドアをくぐっていきました。

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