きみといっしょで
年末の本日……
週末の休日でもありますので、今日のコンビニおもてなし本店はお休みなのですが
魔法使い集落にあります3号店
ララコンベにあります4号店
オザリーナ村にあります6号店
この3店舗は例外として今日も営業を行っています。
3号店は、四六時中研究に没頭している魔法使いの皆さんを相手にしているため、24時間をお店をあけている次第なんですよ。
この店舗では、図書館並のスペースを割いて魔女魔法出版の刊行物を取り扱っているのですが、それを目当てに魔法使いの皆さんがやってくるわけです……昼夜問わず。
以前、夕方で閉店していた頃にはですね、魔法の箒にのって本店裏にある僕の家にまで押しかけてきて
「ちょっと、お店が開いてないわよ?」
とか言ってくる魔法使いさんが少なくなかったもんですから、こんな仕組みになった次第なんですよ。
これも、3号店で働いているのがみんな木人形だからこそ出来る芸当なんです。
一応、交代で休憩をとってもらいながら接客にあたってもらってはいるのですが……
この3号店の裏にはですね、広大なプラントの木農園があるんです。
ここで、味噌や塩、胡椒といった調味料だけでなく高級紅茶の葉なんかをプラントの木を利用して毎日栽培している次第なんです。
その収穫・運送作業はすべて益獣の牙目クモがやってくれているんですが、エレ達木人形の面々はお休みの際にはですね、この農園の雑草取りやゴミ収集などを自主的にこなしてくれているんです。
この農園……僕の世界で例えると東京ドーム20個分くらいの広大さになっていますので、それを掃除作業しているだけで休日が終わってしまうはずなんですけど、
「私はメイドとして作成された木人形ですので、休んでいるよりも働いている方がしっくりきますので」
エレを筆頭にみんなそう言うばかりなんですよねぇ……
一応、故障対策としてスアに定期的に検査してもらっていますので、ケアは万全です。
◇◇
ララコンベにあります4号店とオザリーナ村にあります6号店が休日でも営業しているのにももちろん理由があります。
この2店舗が存在しています辺境都市ララコンベとオザリーナ村はですね、ともに温泉郷なんです。
温泉でお客さんを呼び込んでいるわけです。
と、なりますと、各地にお住まいに皆さんがですね、ご自分の休日を利用してやってくるわけなんですよ……そのため、両都市の商店街組合からですね
「申し訳ないのですが、コンビニおもてなしさんにも休日営業していただけたら助かるですです」
そうお願いされたもんですから、それにこたえさせてもらっている次第なんです。
クローコさんが店長を務めています4号店は、正社員としてララデンテさん、クマンコさん、ツメバがいますので問題なくまわせていたのですが、問題は6号店の方でした。
こちらは、配属していた新人正社員がごっそり辞めてしまった関係で、店長のチュパチャップと新人のアレーナの2人しか正社員がいなかったんです。
そのため、スアが経営しています人材派遣会社からチュ木人形を派遣してどうにか急場を凌いでいたのですが……このチュ木人形は、エレ達のような木人形よりも性能が劣っているため
会話が出来ない。
単純作業しか出来ない。
といった欠点があるんですよね。
それでも単純作業は完璧にこなせるもんですから、ルア工房やドンタコスゥコ商会なんかではすごく重宝されている次第なんですよ。
この差は、稀少パーツの有無が影響しているそうなんです。
エレやスシスなんかは、遙か昔に作成された木人形でして、稀少パーツをふんだんに使用されているもんですから、なんでもござれなオールマイティーなんです。
スアが魔女魔法出版から発行していた「木人形をつくろう 全10冊」に付随しているパーツを組み合わせて作成することが出来る木人形達もですね、エレ達ほどではないものの、この稀少パーツを使用しているおかげで話をしたり複雑な業務にもあたれているんです。
ただ、この稀少パーツがですね最近枯渇気味なんだとか。
そのため復刻版が販売されていた魔女魔法出版の「木人形をつくろう」も現在は休刊中なんだそうです。
スアも
「……稀少パーツ……この世界には、もうないかも」
なんて言っているんですよね。
ただ、その稀少パーツを、代替品~チュパカブラもどきの体を使用したチュ木人形をつくりだしたスアなわけです。
代替品のため、エレ達に比べて能力が劣ってはいるのですが、稀少パーツが見つからない現在のこの世界で、代替品を使ったとはいえこうして木人形を大量に生産出来るのは、やはりすごいと言いますか、スアにしか出来ない芸当なんだそうです。
そんなわけで、スアは魔女魔法出版から「「チュ木人形をつくる」の刊行をぜひ!」そう言われ続けているそうなんですよ。
で、まぁ、そんなわけで……休日出勤の対応に非常に苦慮していた6号店なのですが、先日研修を終えたマキモ10人姉妹のうち、マキモとその姉のユウモさん、あと妹さんを2人の合計4人を新たに配属したおかげでこの問題も無事解決した次第なんです。
この4人というかマキモ10人姉妹の皆さんはですね、魔王ビナスさんをして
「最高の逸材達でしたわぁ」
そう言わしめただけありまして、配属後すぐに即戦力になっているんです。
おかげで、店長のチュパチャップも大喜びしているんですけど……
どう言うわけかですね……それまで一生懸命やっているにもかかわらず、日に何度かすっころんではチュパチャップのスカートをズリ下げていたアレーナがなんですが……
「うわぁ!? すごく気をつけていたのに、また何もないところですっころんでしまいましたぁ!?」
「へぁ!? すすすスカートは駄目だって言ってるじゃないですかぁ!?」
そんな感じで、なぜかマキモに対してスカートおろしを行うようになったそうなんです。
……いえ、わざとじゃないのは、スアにそれとなく魔法で思考を調べてもらってわかってはいるのですが……いやはや、なんでまたこうなるんでしょうねぇ……
まぁ、そんなことがありながらも6号店は前以上に元気に営業している次第です。
◇◇
目を覚ました僕……
今日は休日ですので、早起きする必要はないのですが……習慣でしょうね、夜明け前に目が覚めてしまいました。
今日も営業する3店舗には、昨日の夕方に商品を配送済みですので、作成する必要もありません。
ベッドの中へ視線を向けますと……
僕の横ではパラナミオが寝息をたてています。
その横には、順番に
リョータ
アルカちゃん
アルト
ムツキ
が横になって眠っています。
その向こうに、スアが眠っています。
いつもこうして、僕とスアが、子供達を挟むようにして巨大ベッドの上で寝ているんです。
……まぁ、夜、僕とスアが夫婦の営みを行う際には3階にありますスアの研究室、この中にあります簡易ベッドを利用して行為を行い、それから子供達を起こさないように気をつけながら、このベッドに戻ってくるのがいつもの僕達なんですが、昨夜も同じことを行ったのは言うまでもありません。
今日は、みんなが起きたらチウヤゲレンデに遊びに行くことになっています。
宿のクマタンゴさんの孫娘のクリッタちゃんと仲良しになったパラナミオが
「遊びに行きたいです! クリッタちゃんに会いに行きたいです!」
そう言いまして、それに他の子供達も賛同したもんですから、その予定を立てた次第なんですよ。
そういえば……
クマタンゴさんの娘さんの、4号店のクマンコさんも年明け早々にこの宿に里帰りすることになっています。
これも、4号店にマキモ10人姉妹のうちの2人を配属出来たからなんですよね。
子だくさんなクマンコさんが里帰りなさることで、チウヤゲレンデのおもてなしゲレンデ宿も賑やかになること請け合いですね。
窓の外では、山の端が徐々に白み始めています。
その光景を見つめながら、僕は今年のことをあれこれ思い返していました。
すると、そんな僕の背後から、スアが抱きついてきました。
いつもお寝坊なスアですが、珍しく早起きです。
……とはいえ、まだ少し眠たそうなスア。
「……今年もいろんなことがあった、ね」
「うん、いろんなことがあったね」
僕は、スアへ視線を向けました。
「スアと一緒だったから、全部が楽しかったような気がするよ」
にっこり微笑む僕。
そんな僕に、スアがキスをしてくれました。
「……旦那様、私も、よ」
そう言いながら、僕の首に抱きつくスア。
僕は、そんなスアを抱き寄せながら、外の景色を一緒に眺めていました。
……ほどなくして、3階にありますスアの研究室へ、スアをお姫様抱っこして移動していったのは……まぁ、大目にみてくださいよ。