171 お、鬼がいます。しかも、二匹
鬼が、鬼がいます。
『ほい。サーヤ、両手離して~バランス!』
「あい~」
ただいま、温泉に浸かりながら、おいちゃんの太ももの上に立たされてバランスをとっているサーヤです。両手広げてバランスとってるけどグラグラです。おっとっと。そして何故か……
『サーヤ、お尻とお腹に力入れて下さい。上に引き上げる感じですよ』
バートさんまで。しかも楽しそう…
「あ、あい~」グラグラ
おかしいです。みんなで楽しく温泉のはずだったのにぃ…
『ほい!そのまんま、「あいうえお」』
「あいゆえよ」
ぐらぐら~
『もう一回。腹に力入れて「あいうえお」』
「あ・い・ゅう・え・お」
うえ~ん
『まあ、いっか。ほい!「かきくけこ」』
「きゃきぃきゅけきょ」
ぐらぐら。うっうっうっ
『もう一回!口をはっきり動かして「かきくけこ」』
『太ももの力も入れてください』
うぅぅ
「か・きぃ・くぅ・けぇ・きょ」
しくしくしくしく…
あついよ~ちっとも楽しくないよぉ
『ねぇジーニ様ぁ、あれはぁ…』
〖そうね。ちょっと、かわいそうね〗
結葉様とジーニ様、初めは微笑ましいと思って見ていたが、だんだん様子が…
『ほい!次~「さしすせそ」』
『ほら、ぐらぐらしてますよ』
「ふぇぇ。しゃしぃしゅしぇしょ~」
ぐらぐら。しくしく…
ちっとものんびり温泉じゃないよ~
『サーヤちゃん、大丈夫でしょうか?』
『そうよね。それに、あんなに温泉楽しみにしてたのに』
『あれじゃ、ちっとも楽しくいよな』
青葉ちゃんとフゥとクゥもハラハラ...
『ジーニ様~。サーヤ泣いてるよぉ』
ぴゅい『おかお』
きゅい『まっかっか』
『『三分たったよ~』』
『『『のぼせちゃう~』』』
ちびっこたちも可哀想だから助けてと、訴えます。
〖そうね、さすがに酷いわね。二人とも、そのくらいにしてあげたら?サーヤの顔、真っ赤よ〗
『泣いてるしねぇ、せめてどっちかにしてあげたらぁ?』
ジーニ様~、結葉様~、えぐえぐ
『ん?そうだな~。ちょっとやりすぎたか』
ちょっと?ちょっとじゃないです。
『そうですね。つい、楽し…熱が入りすぎました。すみません』
ううう…ウソだぁ
『いま~絶対』
ぴゅい『たのちい』
きゅい『いおうと』
『『したよね』』
『『『うん』』』
そうだよね?絶対そうだよね?
〖ほらほら、サーヤいらっしゃい〗
「ふぇぇ~」
ジーニ様~。
ジーニ様が抱っこしてくれて、やっと救出されました。えぐえぐ。
『とにかく一回出てお水飲みましょう~。ね?』
「あい」えぐえぐ。
結葉様もありがとう。早く出たくてジーニ様に抱きつきます。もう、おいちゃんとバートさんとは入りません。
『サーヤ~』
ぴゅいきゅい『『だいじょうぶ~?』』
『『大変な目に』』
『『『あっちゃったね~』』』
「あい」ぐすぐす
ハクたちが優しいです。
『サーヤ、みんな、こっちだ』
『ここで休ませてやろう』
アルコン様とギン様が呼んでくれたところには、おっきくなったアウルとおっきくなってべローンってなったアルがいました。
きゅるるる『サーヤ、ここ、座る。ひんやり、きもちいい』
きゅるるる~『『『それにね~』』』
きゅるるる~『『『『ぷにぷに~』』』』
絹さん親子たちもいます。ひんやり気持ちいいから早くおいでしてくれてます。
「あい。あいがちょ~」
みんな、やさしいです。
『サーヤちゃん、これ頭に乗っけて』
青葉ちゃんが頭に乗っけてくれました。ひんやりタオルです。ちょっとスースーします。
『サーヤ』
『これ』
『飲んで~』
泉の精霊さんたちがコップを渡してくれました。
『飲むといい。いつものはちみつレモン水に』
『イズミノ、セイレイタチガ、タシテクレマシタ』
青葉ちゃんたちと、レンゲたちの合作ですか?ありがとうございます。こくこく
『おいちい。しゅっきり』
ひんやり、甘くておいちいよ~。ううう…
『よかったですね。それ、珍しい薬草ですよ』
『水の中にしか生息してないんです』
山桜桃お姉ちゃんと春陽お兄ちゃんがどこで見つけてきたのか大きな葉っぱで仰いでくれます。きもちいです。
『つかれがとれて~』
『ちょっとスースーして~』
『スッキリする~』
『『『すいすいミントだよ~』』』
「ありがちょ~」
泉の妖精さんたちが教えてくれました。頭に乗っけてるタオルにも使ってくれたみたいです。ミントの爽やかないい匂いがします。
『え~すごい!確かそれって』
『なかなか捕まえられないんだよな?』
「ふぇ?」
ミントなのに『捕まえる』?フゥとクゥは何を言ってるの?
『ふふ、サーヤ。すいすいミントの、すいすいはねぇ?捕まるのが嫌ですいすい泳いで逃げちゃうから、すいすいなのよぉ』
結葉様が教えてくれました。逃げるの?泳いで?葉っぱが?
「しゅご~」
びっくりだね。さすが異世界。
〖涙も止まったし、顔の赤みもだいぶ取れたわね~。もう大丈夫かしら?〗
「あい」
ジーニ様がおでこに手を当てて聞いてくれます。お熱の測り方は異世界共通?
それにしても、温泉はゆっくりのんびり入りたいです。
『そうよね~ゆっくりのんびりがいいわよねぇ』
本当です。
『やりすぎた二人は』
『いま、じじい共が説教してくれてるしな』
「ふぇ?」
アルコン様とギン様にそう言われて見てみると、おいちゃんと、バートさんがじぃじと亀じぃに怒られてました。温泉に浸かったまま。
『まったく。幼子にあんな無茶させおって。具合が悪くなるまでやらせるものではないの』
『そうじゃのぉ。何も体幹を鍛えるのと言葉の練習を一緒にやることはなかったのぉ。あげく』
『『可愛いサーヤを泣かすなど、言語道断じゃの(ぉ)』』
『はい』
『すみません』
あらら。じぃじたちの迫力においちゃんだけじゃなくて、あのバートさんまで小さくなってます。
『そういえば、サーヤ、頭のぴっこんぴっこんはしなかったのか?』
クゥが今思い出したけどさ。と、言いました。
「あい。ちてにゃい」
『あれね、頭洗ったあと、タオル巻いちゃったからしなかったのよ』
フゥがいいます。
『お風呂に浸かる手とかだと意味が無いと思ったしね~』
〖改良の余地有りだったわねぇ〗
結葉様とジーニ様も言います。
『それじゃ、サーヤも落ち着いたみたいだし、そろそろみんなでもう一回浸かりましょうか』
〖そうねぇ、今度はゆっくりのんびりねぇ〗
「あ~い」
大賛成です。
〖今日は私が抱っこね〗
ジーニ様にひょいって抱っこされちゃいました。
『あら~残念。くすくす』
〖結葉は昨日抱っこしたから、今日は私よ〗
『はいはい。わかってますよぉ』
結葉様が楽しそうです。結葉様、時々ジーニ様で遊んでると思うのは気のせいでしょうか?
『うふふ。さあ?どうかしらねぇ?』
気のせいじゃない気します…。
あっそうだ
「みんにゃ、あいがちょ」
お礼はちゃんと言わないとね。
そして、
『まったく、いい大人がの』
『ほんにのぉ、気をつけてやらねばのぉ』
『『……』』ぶくぶくぶくぶく
じぃじたちのお説教はまだ続いてました。
〖蒼に青磁、二人とも、もういいわよ〗
『二人とも、のぼせたみたいよぉ』
うん。ぶくぶく沈んでるよ?
『なんじゃ、これしきで』
『最近の若いもんはだらしないのぉ』
ジーニ様と結葉様の声でようやく終わったみたいです。
『まあまあ、とりあえず、そこに打ち上げておこう』
『そうですね』
アルコン様とギン様が二人をポイポイってしました。
『ほんに最近の若いもんは』
『情けないのぉ』
じぃじたちが呆れてます。じぃじたちはのぼせないのかな?
『それにしても』
『やっぱり』
『すごい』
『違和感』
青葉ちゃんたちがしみじみ言うと
『いまの』
『じぃじたちが』
『わかいもんだって』
『いってもね~』
『じぶんたちも』
『わかがえってるもんね~』
泉の妖精さんたちもそれに続きます。
『『『『すっごく』』』』
『『『『『『へん~』』』』』』
うんうん。同感です。
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