90章 ご飯を提供
ゴッドサマーが目を覚ました。
「わらわは意識を失ったはず・・・・・・」
「回復魔法をかけておいたよ」
「回復魔法?」
「病気を完全に回復させる魔法だよ」
回復魔法は万能で、あらゆる病気を治すことができる。どんなに医学が進歩したとしても、魔法に追いつくことはない。
ゴッドサマーはお腹に手を当てた。
「何も食べていないのに、空腹から解放されている」
「一時的に空腹をごまかすスキルも使ったの」
空腹をごまかすスキルを使用することで、一時間だけ空腹を感じなくなる。普段は使うことはないけど、長期的に食事をとれなかった生物には有効となる。
空腹をごまかすスキルは一日で一度だけ有効だ。二度目、三度目となると、効果は限りなくゼロとなる。病気は直せても、空腹に対しては無力に等しい。
「おぬしは超人じゃのう」
通常の人間に超人といわれるのもきついけど、魔力を備えている者に超人といわれると意味は違ってくる。自分が化け物のように感じてしまう。
「ゴッドサマー、何か食べたいものはないかな」
「わらわたちは雑食なので、食べられないものはないぞ。路上の草であっても、おいしく食べられるかのう」
路上の草を抜いてこようと思ったものの、人間としてやってはいけないような気がする。アカネはきっちりとしたものをふるまうことにした。
冷蔵庫の中身を確認する。「セカンド牛+++++」、「セカンド鶏+++++」、「セカンド豚+++++」、「みかん+++++」、「キャベツ+++++」などが入っている。これ
で、ゴッドサマーに食事を作ることにしよう。
「一週間もかけてきてくれたから、最高級の食事をごちそうするね」
「セカンド牛+++++」を、200グラム振る舞うことにした。これを食べれば、体力、気力を取り戻すことができるはずだ。
「気を使わなくても結構じゃ。わらわは食べ物をもらえればいい」
「冷蔵庫の中に、最高級の食材しか入っていないの。今回だけの特別大サービス」
来客を想定していないので、自分の食べたいものばかりを冷蔵庫に入れることになる。それゆえ、最高級の食材のみとなってしまうのである。
「肉が焼きあがるまでの間、パンを食べていてよ」
ゴッドサマーに、「セカンドロールパン+++++」を提供する。パンという名前が入っているものの、食感は綿あめのように柔らかい。口の中ですぐに溶けるのが特徴だ。
ゴッドサマーは「セカンドパン+++++」を口に運んだ。あまりにおいしかったのか、10個のロールパンを三〇秒ほどで平らげてしまった。
「うまい、うまい、うますぎるのじゃ」
食べ物ばかりでは、喉が乾燥することになる。パンを食べたばかりの男に、飲み物を与えるこ
とにした。
「セカンド牛乳+++++だよ」
「セカンド牛乳+++++」の特徴は、独特な甘みと風味があること。牛乳というよりはヨーグ
ルトに近くなっている。
ゴッドサマーは高級な牛乳を一気飲みする。何も口にしなかったことで、喉が渇いているようだ。
「こちらも最高だ。いくらでも飲めそうだ」
「セカンド牛+++++」が焼き上がる。いつもよりも品質がいいのか、肉は黄金色に輝いていた。
「ゴッドサマー、肉が焼けたよ」
ゴッドサマーは最高級の肉を、一口で平らげていた。2000万ゴールドが、数秒間で消えることとなった。
「うますぎるのじゃ。美味なのじゃ」
人間界における最高の肉は、魔物にとっても最高クラスのようだ。
「おかわりをしたいのじゃ」
さっきは草でいいといっていたのに、おかわりを要求するとは。最高級の肉を食べたことで、理性が崩壊してしまっている。
「牛肉はこれで終わりだよ」
ゴッドサマーは物足りなかったのか、本音を小さくつぶやいた。
「つまんないのう・・・・・・」
「ゴッドサマーが食べた肉は、200グラムで2000万ゴールドもするんだよ。たくさんの肉を用意
するのは無理だよ」
パンは10万ゴールド、牛乳は20万ゴールドの値がする。数時間で2030万ゴールドの食事をしたことになる。
「2000万ゴールドはどれくらいの価値なのじゃ」
「一般人の時給が600ゴールドくらいなので、33333時間分の労働に匹敵する値段だよ」
現在は付与金がついており、1600ゴールドくらいとなっている。そうだとしても、12000時間くらいの労働が必要となる。
「そんなものを食べてもよかったのか」
「それについては気にしなくてもいいよ」
「アカネが生活できなくなる・・・・・・」
「私は特殊なスキルで、お金をたくさん稼いでいるんだ。これくらいなら痛くもかゆくもないよ」
申し訳なさそうにしているゴッドサマーに対して、アカネは炊き立てのご飯をよそった。
「ご飯もあるから、こちらも食べてよ」
炊飯器の中には、「セカンド米+++++」が入っている。砂糖を使っていないにもかかわらず、口の中に甘さが広がっていく。米とはついているものの、チョコレート、飴よりもずっと甘みがある。
ゴッドサマーはご飯を口にする。
「こちらもうまいのじゃ」
ご飯を七割食べたところで、箸がストップすることとなった。
「わらわはお腹が一杯じゃ」
魔物の形をしているので、人間の十倍くらいは食べると思っていた。胃袋については、人間と同じレベルのようだ。
「飲み物が欲しい」
満腹のお腹に「セカンド牛乳+++++」は重いと思われる。アカネはコップを洗った後、水道水を入れることにした。
ゴッドサマーは、コップ5杯くらいの水を一気飲みする。食べ物は満足しても、水分量は全然足りなかったようだ。
「ごちそうさまなのじゃ」
飲食をしたことで、顔色がかなりよくなっていた。アカネはその様子を見て、おおいに安堵することとなった。
「今日は外で眠ることにする。明日になったらやってくるのじゃ」
外で眠らせるのはどうかと思うけど、寝室は一つしかない。誰かを宿泊させるのは厳しい状況となっている。
ゴッドサマーは部屋を出ていく前に、頭を深々と下げた。
「今日はありがとう・・・・・・」
言葉遣いは悪いものの、礼儀はきっちりとしている。そんなところを見ていると、不器用な性格なのかなと思った。
ゴッドサマーがいなくなったあと、自分の夕食を準備することにした。「セカンド牛+++++」はなくなってしまったので、「セカンド鶏+++++」を食べようかなと思った。