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14.当日(2)



「委員長、おかえり…大丈夫?顔赤いけど…」

 教室に入ると用事を頼まれた女子に言われる。
 もう熱は冷めたと思っていたのに。

「気にしないでくれ、大丈夫だ。それより、ドリンクはどうだ、足りそうか」
「えーと、うん、大丈夫!それだけあれば何とかなるでしょ。そうだ、委員長、今の時間余裕あるし他のクラス回って来てもいいよ?」

 と、言われてもなぁ。一人で行くのも虚しいので学を呼ぶ。

「回って来てもいいらしい。行こう」
「あ、おう」

 ケータイを一度見てから俺に着いてくる。

「約束あったか?」
「いや、無いよ。別に一緒に行こうとか言ってないし…」

 煮え切らない態度だけど、本当は一緒に回りたかった相手がいたのは明白だな。俺でも分かる。迷ってしまう。余計なことをするのは悪いと分かっていても保険は掛けておきたい。

「向こうから誘ってきたらそっち優先しろよ」
「分かったよ。でもそれはないんじゃない?アイツ気まぐれだし」

 そうは言っても気にしてるのはバレバレだ。学が最近、誰かのことをよく気にするようになって正直嬉しい。2次元ばかりで恋愛なんて…と言っていた学が現実の誰かを気にするようになったのは良い事だ。その誰かというのもきっと、アレから進展があったのなら彼のことだろう。
 学がその人と行ってしまったら俺はどうしようか。鷹也が空いていたら誘ってみるか。

「学、行きたいところあるか」
「わたあめ無かったっけ?」

 地図を見て確認する。

「外だな。行くか」

 外に移動しながら地図でもう一度見る。さっきはよく見ていなかったから気づかなかったが、3年の特進クラスじゃないか。
 今年の生徒会のほとんどが特進クラスから出ている。鷹也もその1人だ。変な動悸がしてきた。

「そういえば、わたあめってどこのクラスがやってんの?」

 それを答える前に目的地付近まで来てしまっていて、呼び子の声が聞こえてきた。

「甘いわたあめどうですかー、3年特進クラスです!」

 その呼び声を聞いてから学を見て頷く。

「特進科だ。今年の生徒会の何人かはここだな」
「あ、そっか…じゃ、秋山もいるのか…」

 秋山…といえば書記だったか。彼も確か特進だったと記憶してる。
 わたあめの屋台に近づくと機械でわたあめを作っていた人の手が止まり、カウンターに進み出た。

「注文どうぞ」
「あ、2本お願いします」

 すでに出来上がっていた2本を手に取ると俺たちにそれぞれ渡してくれる。

「ありがとうございましたー。そうだ…学!休憩もうすぐ入るから待ってて、一緒に行こう」

 わたあめを渡してくれた人が学に言ったことで、そういえば書記の顔がこんなだったことを思い出す。

「俺いま友達と回ってるんだけど」
「…和美くんだよね、僕に学を譲ってくれないかな」

 俺はもともとそのつもりだったからあっさり了承する。そんな俺の反応を面白くなさそうに学が見てくるがせっかく誘ってくれてる相手を優先してやるべきだろう。

「鷹也も今なら暇なはずだよ」

 彼からそう言われてハッとする。

「そうか、ありがとう!」

 わたあめを持って二人をその場にし、生徒会まで走った。
 途中、人の多い廊下を慌ただしく走るものだから、先生に注意を受けたが、まさか俺だと思わなかった先生たちから何事かと心配されてしまった。
 扉の前で一度深呼吸をする。
 ノックをするといつものように「どうぞ」と声が帰ってきた。
 勢いよく開けると、中から物を落とす音が同時に聞こえてきた。

「鷹也?」

 生徒会室に入って、鷹也を見つけると駆け寄る。棚からいくつかのファイルが散らばっていた。

「悪い、驚かせてしまったか」
「まぁね。和美ちゃんだとは思わなかった」

 一緒にファイルを拾い上げ、鷹也に渡す。
 その後、落ち着くと俺はよくやく口を開く。

「学とあの書記、上手くいっているみたいだな」
「ん?…あぁ!相談乗ってやったしな、上手くいってくれないと困る。良かったな、和美ちゃん学くんのこと気にしてたし」
「あぁ、さっきも彼と回るからと別行動になったところだ」
「なるほど。だから来てくれたんだ?でも、ラッキー。俺、あの後もう会わないかもって思ってたから」

 目線を泳がせながら言うものだから、鷹也を凝視してしまう。
 そういえば、あの時…恥ずかしいことをしたんだっけ。

「別に…俺でも期待する時だってある…」
「ふーん…そっかそっか。それは良い事聞いたなぁ」

 見てくる目線がいやらしくて、後ずさりする。

「い、今は!ダメだからな!ここ!学校!」
「あれっ、もしかして、本当に期待してた?学校ではしないって。さすがにバレるリスクを俺は2度もしないって」

 ニヤニヤしながら言われて失敗したと確信した。
か、からかわれた…!

「まぁまぁ…この後、どこか行く予定は?無かったらここってゆっくり過ごさない?俺もう生徒会の仕事で疲れた…」

 そういうなり、机に伏せると動かなくなった。相当な疲れを溜め込んでいたみたいだ。
 傍にあった椅子に座ると話し相手が居ない空間で1人で居るのも虚しいので、自分もそっと目をとじた。


***
やっと更新出来ました…
読んでくれていた皆さま、お待たせしました…自分の作品ながら、内容忘れて前のエピソード読み返すなどしてました(笑)
次もまだ文化祭続きます…!

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