76章 展示会終了
6時間にわたる展示会が終了した。
最初はアカネの絵を見ている人は多かったものの、時間が経過するにつれて、ミライの絵に人が集まっていくこととなった。会場に集まった人たちの反応を見て、絵のレベルの違いを見せつけられることとなった。
目の前で突き付けられた現実に対して、劣等感を植え付けられることとなった。他のことは全てダメだったとしても、絵だけは認められたいという欲求が強かった。
憂鬱な気分でいると、マツリに声をかけられる。落ち込んでいるからか、いつもとは異なる温
かさを感じることとなった。
「アカネさん、おつかれさまでした」
「マツリさん、おつかれさまです」
「本日は絵を展示していただき、本当にありがとうございました」
「上手に書けなかったので、消化不良は否めないです」
「いいですよ。絵を展示することを目的としていました」
多数の住民の前で恥をさらすこととなった。こんなことになるのであれば、仕事を引き受けなければよかった。お金を得た代わりに、心を失ってしまった。
「ミライさんの絵は大好評でしたね」
「はい。彼女には絵描きとしての才能があると思います」
アカネはどんなに努力をしたとしても、あのレベルの絵が描けるようにはならない。才能という大きな壁に阻まれている。
「ミライさんの絵については、購入希望がたくさんあります。本人とお話をして、販売の手続きをしていくことになるでしょう」
あれだけの絵を描けるのであれば、最初から絵描きとしてやっていけばよかったのではなかろうか。長時間労働をしたために、過労で命を落としかけることとなった。ミライは完全に選択を誤っている。
ミライの絵は購入希望があるのに、アカネの絵についての話はなかった。それだけで、どのような評価をされているのかはっきりとわかった。「セカンドライフの街」の英雄であったとしても、ひいきはなされることはないようだ。
「アカネさんの絵を、子供が欲しいといっていました。どうされますか?」
持ち帰ったとしても、処分をするだけである。それなら、欲しいという人にプレゼントしたほうがよいのではなかろうか。
「絵が欲しがっている子供にあげてください」
「わかりました・・・・・・」
魂のこもった絵を大切にしてくれるといいな。そうしてもらえるだけで、1か月近くの苦労が報われるような気がする。