魔法風邪ウイルスのその後
先日、かなり久しぶりに大風邪を引いてしまったスアですが、それを受けまして最近のスアはその対策に余念がありません。
巨木の家の中に設置してあります室温調節魔石の設定を少し高めにし、
適度に湿度を含むように、加湿機も設置している次第です。
この加湿機ですが、仕組みは僕の世界で販売されている加湿機とほぼ同じです。
いえね、これは当然なわけです。
何しろ、僕が個人的に購入して部屋で使用していた加湿機を、スアが調査研究した上で作り上げていますので。
仕組みは同じですが、動力源などは全然違います。
スアが作成した加湿機は、魔石を動力源として使用しています。
この魔石って、スアの説明では
「……魔力がね、ぎゅっと詰まっているみたいな」
そんな品物らしいんです。
僕の世界の品物で例えるなら、そうですね乾電池といえなくもないかもしれません。
ただ、電池は、電気を提供することしか出来ませんが、、魔石はその特性に応じて様々な効果を提供してくれます。
火属性の魔石は、そのまま使用すればコンロの動力になりますし、専用の機器に設置して使用すれば魔法灯という灯りの動力源にもなります。
ちなみに、この加湿機に使用しているのは水属性の魔石です。
それを、スアが作成した加湿機に設置すると、水属性魔石が含んでいる水成分を室内に適量ずつ散布してくれる仕組みになっている次第です。
このスア製の加湿機は、「おもてなししっとりくん」という名前で、コンビニおもてなしで商品化し販売し始めたのですが、「風邪の予防に効果があります」と宣伝したのが効いたのか、販売開始から好調な売り上げを記録しているんです。
で、
新しい人気商品が出ますと、それにあやかろうとする人々が出てくるのが世の常と申しますか……
このおもてなししっとりくんもですね、例によって真似をして海賊版を作成して販売した商会が出現したりしていたのです。
……ですが、この水属性魔石の水分を適量ずつ散布する仕組みが非常に複雑だったらしく、海賊版のほぼ全てがですね
「使ったら部屋中が水浸しになっちまった」
とか
「使ったら逆に室内がカラカラに乾いちゃったわ」
といった苦情が殺到してしまい、そういった品を販売していた商会のほぼすべてがクレームと返品の嵐にあい、中には夜逃げ同然な感じで逃げ出してしまったケースもあったんだそうです。
この一件が口コミで広がったもんですから
「やっぱり加湿機は本家本元のコンビニおもてなし製の商品が間違いないな」
「何しろ伝説の魔法使いが製造に関わっているんだし」
そんな噂があっという間に広がっていきまして、さらに売り上げが上がっている次第なんです。
◇◇
加湿機に加えて、スアは魔法薬も新たにあれこれ精製している次第です。
先日、テリブルアが採取した魔法風邪ウイルスの本体。
これをスアが早速調査研究した結果、新たな風邪薬を開発することに成功したんです。
今までのスア製の風邪薬は、僕の世界で販売されていた風邪薬と同じように体の免疫力を高めたり、滋養強壮成分で体を元気にすることで風邪を撃退していた次第です。
要は、薬で風邪の完治の手助けをしていた、といった感じです。
まぁ、僕の世界でも風邪を完全に治す薬は存在しませんでしたしね。
それを造ることが出来たらノーベル賞がもらえるって話もまことしやかに語られていたように思います。
ですが
今回スアが新たに精製した魔法薬はすごいんです。
この薬が、体内の風邪菌をすべて無力化する効果を持っているそうなんです。
つまり、飲むだけで風邪が完治するという……まさに、ノーベル賞物の商品が出来上がった次第です、はい。
スアによると、
「……魔法風邪ウイルスの成分を入手出来た、ので、風邪菌が体内で繁殖する仕組みを……」
と、まぁ、ここからは専門用語をふんだんに交えた説明が延々1時間近く続きますので割愛いたしますが、
要は、魔法風邪ウイルスの成分を調査研究出来たことで風邪完全撃退魔法薬が出来たわけです。
ただ、風邪を引いていた人は体力や免疫力が落ちていることも少なくありません。
そのため、この風邪魔法薬をテリブルアが販売する際には
「これで風邪は完全に治るけど、最低1日は安静にしているようにな」
そう、申し添えている次第なんです。
まぁ、やはり普段から健康に留意することも大事ってことです、はい。
◇◇
そんなわけで、コンビニおもてなしでは、今回の魔法風邪ウイルスの一件以降、新商品が投入された次第です。
そして、その両方が早速大人気になっているんです。
これを受けまして、定番のお弁当やサンドイッチにも一工夫加えています。
野菜や、栄養価の高い食材を調理して加えた
『風邪予防弁当』『風邪撃退サンドイッチ』
なるものをラインナップに加えた次第です。
どちらも、従来の物よりもボリュームがアップした感じの品々なのですが、風邪が流行っているもんですから
「へぇ、試しに食べてみようかな」
「どうせなら、こっちの方が」
そんな感じで、好評を博している次第です。
毎日各店舗数量限定で販売しているのですが、どの店舗でも早々に売り切れているんです。
「これだだけ人気だと、増産も考えたいね」
厨房で作業しながら、僕は一緒に作業してくれているラテスさんとヨーコさんに話してみました。
すると、2人とも
「そうですね! せっかく人気なんだし、いいと思います」
と、ラテスさん。
「はい、私もいいと思いますわ」
と、ヨーコさん。
2人とも笑顔で賛同してくれた次第です。
いつもでしたら、弁当作成は魔王ビナスさんがお手伝いしてくれています。
ですが、今の魔王ビナスさんは絶賛産休中です。
その代わりに、今は、オトの街のラテスさんとヨーコさんの2人がお手伝いしてくれているわけです、はい。
パン工房のテンテンコウ♂も
「はい、問題なく対応可能です」
そう言ってくれましたので、明日から早速増産に取り組もうと思っている次第です。
◇◇
こうして、コンビニおもてなしでは、毎日のように新しい商品がラインナップに加わっている感じです。
最近は、
「あの、うちの雑貨屋でこんな商品を開発してみたんだけど、コンビニおもてなしさんで扱ってくれないかな」
とか
「こんなお弁当を作ってるんだけど、コンビニおもてなしさんで販売してもらえない?」
と、いった、いわゆる売り込みが寄せられることも少なくありません。
売り込み自体は以前からありまして、その頃はその都度対応・検討させて頂いていたのですが、最近はそうもいかない感じです。
何しろ、多い日には本支店ならびに出張所まで合わせまして全部で2,30件の売り込みが寄せられることも少なくないんですよね。
さすがに、それを毎日その都度対応していたら、僕の体がいくつあっても足りないと言いますか……
今、僕が勤務していますコンビニおもてなし本店は、ただでさえ魔王ビナスさんというスーパー店員さんがお休み中なもんですから、僕が極力お店で接客していないと、お店が回らなくなってしまいかねません。
チュ木人形を配備して応対にあたっていますので、以前の最悪だった時期に比べればかなり状況が改善されていますけど……魔王ビナスさんのスーパーぶりを補おうと思ったら、感覚的にチュ木人形を100体は配備しないと……
まぁ、そんなにお店にチュ木人形が入るわけがありませんし、物理的に不可能ですしね、それってば……ははは
店員・パート募集のチラシを各地の商店街組合を中心に配布していますので、そろそろ反応があるかもしれません。
まぁ、それまでは今のみんなで頑張っていかないと、と思っている次第です。
そんなわけで、
そんなことを今日の店長会議でみんなに伝達させてもらいました。
「……というわけで、チュ木人形の配布などで人手不足にはできる限り対応させてもらいます。他にも何かあったら遠慮なく言ってくださいね」
僕の言葉に、みんなも頷いてくれた次第です。
ここに集まってくれている各店の店長さん達。
その下で、各お店で頑張ってくれている店員やバイトのみなさん。
そんな皆さんに支えられているコンビニおもてなしですからね。