コンビニおもてなし界隈では、おめでたい話が満載です。
コンビニおもてなし4号店のバイトのチュンチュが可愛い女の子を出産し、
「この子とチュンチュのためにも、より一層頑張ります!」
それを受けまして、旦那で同じ4号店の店員を務めていますツメバが気合い満々の様子で日々すごい勢いで頑張ってくれている次第です。
ここ、コンビニおもてなし4号店がありますララコンベ温泉郷ですが、その中にはちょっと変わった観光名所的な場所があるんですよね。
門(ゲート)の遺跡と言いまして、4号店で働いてくださっているララデンテさんが生前、守護者としてこの門を守られていたんだとか……
あ、ララデンテさんはすでに肉体が消滅していまして、今は思念体と言われる状態でこの世に存在されているそうなんですよね。
僕が元いた世界でいうところの、まぁ、幽霊ってわけですね、はい……
で、この遺跡なんですけど、この世界に全部で5つあるそうでして、観光というか、聖地巡礼的な感じでここを訪れる方がとても多いんです。
なんでも、
「かつてララデンテ様がここを守護なさり、この門の周囲に住んでいた皆を守ってくださったのですじゃ」
と、この辺りにお住まいの長老の方がおっしゃられますように、そのお礼の意味で定期的にここを訪れる人や、
「ここに来ると、パワーをもらえる気がするんです」
と、定期魔道船を利用してやってきた方がおっしゃられますように、パワースポット的な意味合いでここを訪れる人も。
そんな人々で日々賑わっているこの門の遺跡。
この遺跡は小高い丘の山頂部分にあるのですが、そんな悪立地にもかかわらず毎日かなりの数のお客さんが足を運ばれているんです。
で
そのお客様に、丘の上で弁当や飲み物を販売するために、鳥人族で空を飛べるツメバが毎日お昼前に木箱を抱えて、公園化されているこの遺跡のところまでやって来て出店を出しているんですが。
「チュンチュのためならえ~んやこら! チュチュチュのためならえ~んやこら!」
と、以前の3倍近い木箱を抱えて飛行していっているんだそうです。
しかも、毎日それを全部売りさばいているという……
それを聞いた僕は、
「やっぱ、子供の影響はすごいんだなぁ」
と、改めて思い知らされて次第です、はい。
あ、そうそう、ツメバとチュンチュの娘さんは、チュチュチュになったそうです、はい。
◇◇
テトテ集落の新妻魔法使いの皆様の中からも
「無事産まれましたぁ」
「私もですぅ」
そんなめでたい声がチラホラ聞こえ始めています。
それにともないまして、テトテ集落でお店を構えていますコンビニおもてなしテトテ集落出張所における赤ちゃん用品の割合がどんどん増えているんです。
で
さすがに今のままでは手狭になってきたもんですから、コンビニおもてなしテトテ集落出張所を増築することにしました。
元々コンビニおもてなし商会のテトテ集落店として、テトテ集落で生産された野菜や収穫してきた果物を買い取りさせてもらっていたここですが、このお店の店員を引き受けてくださったリンボアさんのご自宅の倉庫を間借りさせてもらっているんですよね。
そこに、集落の皆さんから要望が高かったコンビニおもてなし出張所まで開店していたわけです。
ただでさえ狭かったところに、出張所まで出来てしまい、さらにその取り扱い品目がどんどん増えているという悪循環だったわけですので、増築もいたしかたないわけです、はい。
いっそのこと別の場所に店舗を新築することも考えたのですが、
「倉庫(ここ)に店舗がありますと、お客さんがいない時間は家のことを出来ますので、とっても助かるんですめぇ」
というリンボアさんのご希望もあり、倉庫を増築する方向で調整することになりました。
これにともないまして、リンボアさんとも話合いをさせて頂きまして正式にリンボアさんの倉庫部分をコンビニおもてなしで購入させて頂くことにしました。
「購入といいましても、リンボアさんは今までどおりご自分の倉庫としてご使用くださってもかまいませんので」
「それは助かりますめぇ。よろしくお願いいたしますめぇ」
これを、リンボアさんも笑顔で了承してくださった次第です。
で
増築に関しては、ルア工房のナンバー2こと、ヤルメキスの旦那さんのパラランサくんと打ち合わせをしていきました。
ルアも現在産休中なんで、今のルア工房はパラランサくんが中心になって取り仕切っているそうです。
「ルア師匠は『産まれる直前まで仕事する』と言い張られていたのですだ、旦那さんのオデン6世さんが強固に反対なさったんですよ」
「ルアらしいといえばルアらしいけど……これに関してはオデン6世さんが正しいよなぁ」
僕とパラランサくんはそんな会話を交わしつつ、増築の計画を練っていきました。
幸い、リンボアさんの倉庫の裏は空地になっています。
で、そこも買い取りまして、お店部分を一気に増築していく方針です。
お店を奥に長くして
手前側にコンビニおもてなしテトテ集落出張所
奥に、おもてなし商会テトテ集落店の買い取りカウンター
それぞれの場所にそれぞれ設置します。
まぁ、買い取りカウンターに関しましては買い取った品をすぐに魔法袋に詰めますので、そんなに広いスペースはいらないんですよね。
そんなことを考慮しながら図面を引いていくパラランサくん。
「……では、こんな感じでいかがでしょう?」
「そうだね、これでお願いしようかな。どうですか、リンボアさん?」
「はい、私もこれでお願いしたいです」
そんなわけで、パラランサくんの意見にゴーサインがでました。
これを受けて、パラランサくんは、
「では、早速明日から工事に入ります。あ、お店は開店したままで大丈夫ですよ」
そう言ってくれました。
工期は約2週間。
「パラランサくん、よろしく頼むね」
「私からもよろしくお願いいたしますめぇ」
「はい、最善を尽くします! ルア師匠の名にかけて!」
パラランサくんは、僕とリンボアさんの魔で気合い満々の様子でガッツポーズをしていました。
そういえば、パラランサくんも奥さんのヤルメキスが12つ子を出産したばかりで、パパになったばかりなんですよね。
そりゃ気合いが入りますよね、やっぱり。
◇◇
そういえば……
少し前に、オザリーナ温泉郷が王都の中央辺境局から正式に
『オザリーナ村』
として認められました。
これで王都から公道の整備費や公共事業費として結構なお金が支給されることになるんです。
で
テトテ集落も最近賑やかになってきていますので
「うちも久しぶりに村昇格のお願いをしてみようと思っていますニャあ」
と、テトテ集落の長のネンドロさんも言われていたんです。
この世界の街の規模には大きくわけて以下のようなランクがありまして
辺境都市→辺境小都市→街→村→集落
だいたいこんな感じです。
テトテ集落は昔は街だったそうなんですが、山奥の不便な立地のために若い人達がどんどん流出。
その結果、街から村へ……村から集落へと格下げされて今にいたっているそうなんです。
集落だと、王都から公的資金が一切支給されないんです。
「これだけ若い奥さんが増えて、赤ちゃんまで出来て、それに店長さんのおかげで果樹園の経営も大盛況ですしにゃあ。これならバッチリいけると思いますにゃあ」
リンボアさんは笑顔でそう言われていました。
そうですね、僕も近隣の辺境都市の領主代行として推薦文を書かせてもらって後押しさせてもらおうと思います。
……ただ「若い奥さん」と、ネンドロさんは言われていますけど……新妻の魔法使いの皆さんって長命種のエルフの方々ばかりなんですよね……つまり、みなさんテトテ集落のお年寄りの方々よりも年上なんじゃ……
うん、このことは気が付かなかったことにしようと思います。
◇◇
そんなこんなで、赤ちゃん騒動以来、あれこれ忙しく各地を飛び回っては、あれこれ対応している僕です。
元々地域密着型のコンビニエンスストアを目指していたとはいえ、異世界で領主代行を務めることになったり、町おこしのお手伝いみたいなことまでさせてもらったりと、なんか多種多様なことこの上ない気がしないでもないんですけど……
でも
こうして僕が頑張ることで、笑顔になってくれる人達がいるわけです。
その人達のためにも頑張らないと……
僕がそんなことを考えていると、そんな僕の手を、転移魔法で出現したスアがそっと握ってくれました。
「……旦那様、私もお手伝いする、よ」
笑顔のスア。
「ありがとうスア。これからもよろしく頼むね」
僕の言葉に、スアは笑顔で頷いて……って、あれ、スア、ど、どうしたのかな? そのまま僕の手を引っ張って
「……うん、みんなに負けたくない」
「え?」
「……あのね、パラナミオも、リョータも、アルトも、ムツキも、アルカちゃんも、みんな弟か妹が欲しいと思うの」
そう言いながら、嬉しそうに微笑んでいるスア。
そんなわけで、僕はこのあとめちゃくちゃ……っと、あとはご想像にお任せしますね。