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人の確保は大変なわけで その3

 巨木の家に戻った僕。

 そんな僕を、メイド姿の女性達が出迎えてくれました。
 
 よく見ると、その女性達は人種族でも亜人種族でもありません。
 エレやスシスといった、木人形に似ている感じです。

 その顔がのっぺらぼうで、口の部分に切れ目が入っていて、そこが上下して言葉を発している感じです。

 その横にスアが立っていますので、おそらくスアが開発したのでしょう。

「スア、この5人というか5体はなんなんだい?」
 僕がそう尋ねると、スアは
「……新型、よ」
 そう言うと、今度は両手の親指をグッとたて、いわゆるサムズアップしていきました。
 その顔に、さらなるドヤ顔を浮かべていますけど……

 その姿は、以前僕が元いた世界のテレビで見た「懐かし特集」の中で見かけたことがある「指圧の心は母心~」的な仕草に見えなくもなかったのですが、それは置いておくとして……

 改めてスアの説明を聞きましたところ、この5人は
「……チュ木人形、よ」
 とのことでした。

 以前から木人形の改良に取り組んでいたスアが、ついに完成させた試作品とのことです、はい。

 木人形は、ある程度の意思をもった状態で使役主の言うことを聞き、あれこれ仕事をこなすことが出来ます。
 自分で自分を修理できますし、何か問題が発生しましても自分で判断・対処するだけの能力を持ち合わせています。自分で判断出来ないと判断すると、使役主に相談にいく能力もあったりするわけです。

 エレとスシスは、総合的な能力が高い、木人形の中でも上位種にあたるそうでしてこのレベルの木人形を作成するのはスアでもちょっと難しいそうなんです。
 魔法的には問題ないんですけど、素材が稀少らしくてなかなか手に入らないそうなんです。

 3号店で働いている他の3体、ワザン・チカラン・デスワンは、木人形の中でも下位種にあたる量産型でして、魔女魔法出版から発行されている「木人形をつくろう全10巻」を買いそろえれば誰でも作り上げることが可能です。

 ただ、これ……僕が元いた世界の価格に換算すると数千万円しちゃうという高級品なんですよね。
 なので、コンビニおもてなしでもおいそれとは導入出来ていないといいますか……

 で、おもにその値段を抑えることに成功したのがこのチュ木人形達なんだそうです。

「……今回はね、いい素材がいっぱい手に入ったから……そのおかげで安く出来たの」
 そう言って笑うスア。

 うん?……いい素材?

 ……木人形に使用出来るような特殊な素材をそんなに一杯仕入れたりしたっけ?
 おもてなし商会でそんな物を仕入れたって報告は受けてないし……
 他に仕入れに行ったとなると、この間みんなでドゴログマに行ったくらいだし……


 思案を巡らせていた僕は、ここであることに気が付きました。

「チュ木人形?」
 確かスアはそう言いました。
 
 チュ……チュ?

 ……チュ……チュパ……厄災のチュパカブラ!?

 まさか……その木人形達に使用されている素材って……ドゴログマでスアが大量に仕留めた、あの、厄災のチュパカブラ……

 改めてそのチュ木人形達を見てみると……牙みたいなものが生えてて、背にトゲが生えているような……

◇◇

 まぁ……その素材の事はあえて深く聞かないことにして……

 とりあえずこの5人に、コンビニおもてなしで働いてもらうことにしました。
 勤務場所は、今回新人さんがやめた店です。

 2人辞めてしまったコンビニおもてなし6号店に2人配置したのを筆頭に、翌日から早速勤務を開始してもらいました。

 名前は、便宜的に

 チュイチ
 チュニ
 チュサン
 チュシ
 チュゴ

「……店長殿、いくらなんでも安易すぎではござらぬか?」
「1・2・3・4・5キ……」
 イエロとセーテンに思いっきり突っ込まれましたけど……僕にネーミングセンスを求められても困るといいますか……

◇◇

 そんなわけで各店に配置した5人ですが……その評判は上々でした。

 もともと、3号店で問題なく仕事に従事しているワザン・チカラン・デスワン達のデータを元にして、スアがさらに改良を重ねている木人形達ですからね。
 むしろうまくいかない方がおかしいといいますか。

「……まだ材料があるから、作成は可能、よ」
 スアがそう言って笑いました。
「あ、じゃあ……」

 ここで僕はあることを思いつきました。

 スアに、このチュ木人形を量産してもらってですね、それを人手不足で困っている人達のところに派遣してみたらどうだろうと思ったわけです。

 僕が元いた世界でいいますところの人材派遣会社みたいなものといいますか、そんな部署をコンビニおもてなしの中に立ち上げてみたらどうかな、と、思ったわけです。

 こうすれば木人形が高額だからと導入に躊躇している皆さんのところに、お安く木人形を派遣出来ますからね。

 あくまでもメインはコンビニおもてなしの人員不足解消。
 あとは、知り合いのお店からの人材派遣依頼を主に請け負って、その評判次第で事業拡大を考えてみたらどうかと思った次第です。

「……そうね、今なら増産可能だし、いいよ」
 スアもそう言ってくれましたので、
『おもてなし木人形派遣 (仮) 』
 の運営を試験的に開始してみた次第です。

 まだ試用期間ですので、担当は僕が、本店の店長と、コンビニおもてなしグループの会長と一緒に兼任します。

 チュ木人形達を期間を区切って貸し出して、返却してもらう際にアンケートを実施することにしています。
 そのアンケート結果を受けて、あれこれチュ木人形を改良していけばいいかな、と思っているわけです。

 で、この話を、ナカンコンベの商店街組合で出会ったルアをはじめとした人材不足でお悩みだった皆さんにしてみたところ。

「そりゃありがたい」
「ぜひ利用させてください」
「私の店でもぜひ」 

 皆さん、即座に導入を決められた次第です。

 それを受けて、スアが新たに作成したチュ木人形を、どんどんあちこちのお店に派遣しました。

 ちなみに、追加されたチュ木人形達の名前は、

 チュロク
 チュナナ
 チュハチ
 ・
 ・
 ・

 なんだよイエロとセーテン……言いたいことがあったらはっきり言ってくれないかな……
 ジト目で見られていると、ちょっと辛いんだけど……いや、自覚もあるしさ、安易すぎるって……

◇◇

 そんなわけで、チュ木人形をあちこちのお店に貸し出しし始めて1週間が経ちました。

「いや、マジで助かってる! すごくいいよあのチュ木人形達!」
 ルアが歓喜の表情を浮かべながらお礼と追加派遣の依頼にやって来たのを筆頭に、多くの皆さんが笑顔で感謝の言葉を伝えてくれました。

 どうやら、チュ木人形の木人形派遣は成功のようですね。

 コンビニおもてなしの各支店に派遣したみんなの評判も上々のようです。

 2体を派遣したコンビニおもてなし6号店の店長チュパチャップも
「2人ともとってもよく働いてくれますし、お仕事もしっかりこなしてくれますので、すごく助かっています」
 笑顔でそう言ってくれました。

 で

「しかも、私のスカートがズリ下ろされるのを事前に防いでもくれるんですよ……」
 そう言葉を続けたチュパチャップ……なんですが……気のせいでしょうか、その事を口にしたチュパチャップがなんだか少し寂しそうな気がしないでもなかったといいますか……


 まさかチュパチャップ……スカートをズリ下ろされなくなって……寂しく思っている?

「そそそそんなわけなななないじゃないですか」
 顔を真っ赤にして否定したチュパチャップなんですけど……う~ん……

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