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人の確保は大変なわけで その2

 求人のチラシを作成した僕は、早速それをコンビニおもてなしの関連店舗に配りました。

 ちなみにこのチラシですが、コンビニおもてなしの店長である、

 シャルンエッセンス・クローコさん・チュパチャップ

 この3人が笑顔で立っている写真を採用しています。

 シャルンエッセンスみたいなお嬢様でも
 クローコさんのようにギャル入ってても
 チュパチャップのような亜人種族の方でも

 と、まぁ、誰でも気軽に働ける職場ですよ、っていうのをアピールした人選だったんですけど……はたしてどこまで影響力があるでしょうか……

 その写真を、僕がパソコンで画像処理し、出来上がった原稿を魔女魔法出版で大量印刷してもらっています。

 もともとコンビニおもてなしに置いてあるパソコンは、ほとんど仕事用として使用していました。
 僕が元いた世界でコンビニおもてなしを経営していた頃は、経費削減のためにポスターやチラシ、ポップなんかをすべてこのパソコンで自作していたんですよね。
 なので、画像加工ソフトなんかもかなり充実しています……まぁ、大半はフリーソフトなんですけど。

 インクに限りがありますので、カラー見本を1枚だけ作成して、それを魔女魔法出版でコピー印刷してもらっているわけなんですけど、スアのお母さんが経営しているこの魔女魔法出版のおかげでホント助かっています。

 まぁ、魔女魔法出版は魔女魔法出版で、スアが執筆している本のおかげで潤っていますので、ウィンウィンの関係といえなくもない、と、いいますか。
 あ、親族会社ですけど、ちゃんと印刷代金はお支払いしていますからね。

◇◇

 チラシを持って、僕は各地の商店街組合を回っていました。

 スアの転移ドアがありますので、コンビニおもてなしの支店のある都市すべてを1時間とかからずに回れるので、こういうとき、本当に助かります。

 で、ナカンコンベの商店街組合へ出向いたところ、そこにルア工房のルアの姿がありました。
「あれ、店長じゃないか」
 ルアは、僕の顔を見るなり笑顔で駆け寄ってくれました。

 このルアってば、もともとコンビニおもてなし本店の向かいにお店を構えているルア工房の店長なんですよね。
 今はこのナカンコンベに支店を出していて、主にこっちで仕事に従事しているそうです。

 支店とはいえ、このナカンコンベの方が街の規模もでかいうえに、仕事の規模もでかいため、ルアが直々に陣頭指揮をとらないとおっつかないそうなんです。

「店長は、今日はどうしたんだい?」
「あぁ、実はさ、新人さんが辞めちゃって、その補充をするための求人のチラシを置かせてもらおうと思ってさ」
 僕が苦笑しながらそう言うと、ルアは
「店長さんとこもかい? 実はアタシもなんだよ」
 そう言って、苦笑しました。

 ルアの話によりますと、なんでもルア工房も扱っている仕事量の急増に合わせて夏頃に若い新人さんを大挙雇用したそうなんですが、ここに来てその人達がごそっと辞めてしまったんだとか。

「いやぁ……思い直すようにかなり説得したんだけどなぁ……」
 ルアはそう言って顔をしかめています。

 すると

「実はうちもなんだ」
「恥ずかしながらうちも……」
 僕とルアの周囲に、そんな方々が集まってきた次第なんです。

 皆さんの店でも、最近雇用した若い店員さん達がここに来てごそっと辞めてしまったんだとか。

 そんな話をしていますと、
「皆様にはご迷惑をおかけしてしまい申し訳ないですです」
 商店街組合の蟻人さんが申し訳なさそうな表情をうかべながら歩み寄ってこられました。

 そうなんですよね……
 僕のコンビニおもてなしで雇用した新しい店員さんって、この商店街組合の推薦を受けて雇用させてもらった方が多いんです……というか、この夏に雇用した新人さんでいえば、ほぼ全員がそうですね。

 ルア工房や、他のお店の皆さんも、状況は同じようでした。

 それを受けて、相変わらず申し訳なさそうな表情の蟻人さんは
「実はですねぇ……商店街組合としても非常に困っているんですです。お仕事を紹介させていただいてもすぐに辞めてしまう……そんな若い人がすごく増加しているものですですから……」
 そう言いながら、大きなため息をつかれました。

 そういえば、僕が元いた世界でも雇用してもすぐに辞めてしまう若い人が問題になっていたような気がするんですけど……異世界でもそういった事情は似たようなものなんだなぁ、と、つくづく思ってしまったわけで……

 まぁ、だからと言ってすぐに解決策が見つかるはずがありません。

 そもそも、すぐに解決出来るような問題であれば、僕達がこうして商店街組合の中で輪になってため息をついてたりしませんからね。

◇◇

 その後、改めて持参したチラシを商店街組合の蟻人さんにお渡ししまして、所定の求人票に記載していきました。

「というわけで、よろしくお願いしますね」
「はいです、少しでもご期待に添えるお方を斡旋出来ますように頑張りますます」
 蟻人さんはそう言いながら何度も頭を下げてくれました。

 ナカンコンベの商店街組合でそんなことがあった後、僕は残りの都市も回っていきました。

 で、

 その全てを配布し終えた僕は、本店がありますガタコンベへと戻りました。

 店が閉店してから都市を回ってきましたので、外はすでに暗くなっています。
 閉店作業はすでに終わっていますので、僕はすぐに巨木の家へと向かいました。

 もともとスアの家だったこと巨木の家ですが、今は僕達家族の家になっています。

 以前は、木の幹の内部の壁がすべて本棚になっていて、その中すべてがスアの研究室になっていました。

 それが、今では中が何層かに区分けされていまして、

 1階がリビング兼応接室、あと厨房もあります
 
 2階が寝室とみんなの個室、トイレとお風呂はここにあります

 3階がスアの研究室

 とまぁ、こんな感じになっています。
 足りない部屋は、スアの魔法で木の枝の先に巨大な実を生成してまして、その中を部屋として使用しています。
 なんでもこれ、木の実の部屋っていうらしいんですけどね。

 この木の実の部屋は、私物を保存するための倉庫や、スアの書棚置き場として少しずつ増加し続けています。

「ただいま」
 玄関のドアを開けて中に入ると、

「パパお帰りなさい!」
 いつものようにパラナミオが真っ先に僕を出迎えてくれました。
 次いで、リョータ・アルト・ムツキ・アルカちゃんの順番で、玄関までやってきてくれます。
 みんなは、僕の周囲を囲むようにしているみんなと一緒にリビングへ移動していきます 
 アルカちゃんだけは、リョータの横にピタッとくっついていて、その位置から動こうとしていないんですけどね。

 で、そんなみんなとリビングへ入った僕だったのですが、

「「「オ帰リナサイマセ」」」
 そんな僕を、メイド姿の女性達が出迎えてくれました。
 全員、まったく同じタイミングで頭をさげ、同時に言葉を発しています。

 そんなメイド姿の女性達の横では、スアがドヤ顔で右手の親指をグッと突き立てていました。

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