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125 水の中の精霊樹へ

サーヤはフゥとクゥを道連れに、うへへへ~と夢の中。
『『助けて…』』ぷるぷる…
「ふへへへ…」すぴ~
がんばれ!フゥ!クゥ!

おいちゃんとちびっこ同盟はわいわいしながら色々散策を楽しんでいる。
『おいちゃ~ん!これはどうかな~?』
ぴゅいきゅいっ『『これは?』』
『『これも見て~?』』
『『『これ、おいしい?』』』
『おーっ!みんな偉いな!全部使えるし、妖精トリオのは食えるぞ!』
『ほんと~?』
ぴゅいきゅいっ『『やった~!』』
『『もっと探すぞぉ!』』
『『『おーっ!』』』


その頃、精霊樹の精様とケルピーのじぃじたち、妖精たち泉の住人たちは水中の精霊樹の元へ来ていた。

『こんな所にいたのねぇ』
のんびりと暢気なことを言いながら、水の中で光を浴びる樹に触れて見上げる精霊樹の精様。

『精霊樹の精様、やはりこの樹は先程のお話の…』
遠慮がちに声をかけるケルピーのじぃじ。それを見守る泉の住人たち。お魚さんたちまでなんだなんだと見ているようだ。

『間違いないわぁ。あの時の種の子ねぇ。まさかこんな泉の底でこ~んなに育つなんて。びっくりねぇ。こんなに大きくなってぇ偉かったわねぇ』
そう言いながら樹を撫でるどこまでも暢気な精霊樹の精様。

『精霊樹の精様、この樹はこのままここにあって良いものなのでしょうかの?』
『地上に移さないで大丈夫でしょうかのぉ?』
じぃじたちが心配そうに聞く。

『大丈夫よぉ。というより、この子はもうここで役割りを持っているから、移せないわぁ』
ぽんぽんと幹を軽く叩きながら言う。

『え?役割ですかの?』
『それはどのようなものでしょうかのぉ…』
役割と聞いて驚いたじぃじと亀じぃ。妖精さんたちは口を開けてポカンとしている。

『この泉、明らかに他の泉と違うわよねぇ?水は清らかだし、貴重な花や水草、薬草がそこかしこに生えてるでしょう?これはここの地上が聖域になるずっと前からよねぇ?』
精霊樹の精様はここに来るまでの景色を思い出しながら話す。

じぃじと亀じぃは顔を見合せ
て昔を思い起こします。
『そういえば』
『その通りですのぉ』
『清らかな水に、豊かな水性植物、そして生き物』
『昔から確かに変わっておりませぬのぉ』

精霊樹の精様は頷く
『やっぱりねぇ。もう随分前から、この樹が水中に聖域に似たものを既に作っていたのよ。地上の精霊樹が土壌を豊かにし大気を清浄にし、豊かな実りをもたらし、小さな聖域を作るように、この樹はこの水中の土壌を豊かにし、大気の代わりに水を清浄にしていた。だから水はどこまでも澄み渡り、貴重な植物も育っている。言わば水の精霊樹という感じかしら。ねえ?』
そこで一度言葉を切り、水の妖精たちを見る。

『違うかしら?自称水の妖精さんたち?』

見つめられたいつも賑やかな水の妖精たちが何も言わずに黙りこんでしまった。


その頃、地上では
〖はあ…〗
『おや、大きなため息ですね。魔神様』
〖まあねぇ。やっぱり私たちも行った方が良かったかしら?〗
『まあ、精霊樹の精様が自ら任せてと、仰ったのですから、何かお考えがあるのでは?』
〖バート、分かってないわね。だから余計に心配なんじゃない〗はあ…
『それは…』
『否定しないのだな。バート』
『じじい共、大丈夫でしょうか』
〖さあ…ああ、やっぱり一緒に行くべきだった気がするわぁ。絶対何かやらかしてるわぁ~〗
はああ…
地上で大きなため息が合唱されていた。


そして水の中。
精霊樹の精様に見つめられ、静かになってしまった妖精たち。その様子にただならぬものを感じたじぃじと亀じぃは

『精霊樹の精様?それは』
『どういうことですかの?』
と、訳が分からず聞き返します。

『あなた達はおそらく元は一つ。この樹から生まれたのね?ごめんなさいね。水の底は誰もいなくて寂しかったでしょう?』

精霊樹の精様は静かに水の妖精たちに話しかけ、妖精たちはそれを静かに聞いている。

『どういうことですかの?』
『この子達は水の妖精ではないのですかのぉ?』
じぃじと亀じぃは精霊樹の精様と水の妖精たちを交互に見る。

『ううん。わたしたちは水の妖精だよ』
そう言って六人の妖精が前に出ます。後から出会った妖精たちです。
『わたしたちは』
『その精霊樹から』
『うまれたの~』
『だから』
『その精霊樹が』
『おうちなんだよ~』
妖精さんたちが話し始めます。

『では、この四人は?』
『水の妖精ではないと?』
じぃじと亀じぃは下を向いてしまっている四人の妖精たちを見ます。
『ん~?水に関係する妖精、違うわね。精霊には違いないから、近しいけど異なる者ってところかしらぁ?ねえ?』
そう言うと水の妖精さん三人が輝いて、サーヤくらいの大きさになりました。
『水中の花の精霊です』
『水中の草の精霊です』
『水中の薬草の精霊です』
『私たちがいるから』
『ここにはたくさんの』
『水中植物があるの』
急に姿を変えた三人の妖精たちに、いや精霊たちの姿にじぃじと亀じぃは驚き、目をぱちぱちさせていた。
『お前たち、姿を変えていたのか…』
『精霊だったとはのぉ』

そんな二人に精霊樹の精様が優しく説明します。
『精霊は自分より下の位の者になら姿を変えられるからねぇ。この姿でいた理由は …』
そう言って精霊たちに話をするように促します。

『小さい方が動きやすいし、それに』
『小さい方がみんなが仲良くしてくれたから』
『私たち嬉しかったの』
『『『ごめんなさい』』』

目に涙を貯めて謝る精霊たち。じぃじも亀じぃも真剣に話を聞いてくれている。

『精霊も妖精も長寿な分、子供の時期が長いわ。この子達もまだまだ子供。やさしくしてくれて、本当のおじいちゃんと孫のように仲良くしてくれるあなた達が大好きなのよ。許してあげてくれないかしらぁ?出来れば今まで通りに接してあげてくれると嬉しいわぁ。出来ればこの子もねぇ』

そう言って精霊樹の精様は最後の一人のそばに行き、その手をとる。すると、その子が光り、やがてフゥとクゥと同じくらいの年の女の子が姿を現した。

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