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秋の収穫祭 その1

 ブラコンベ辺境都市連合の話し合いも終了して、いよいよ秋の収穫祭の準備がはじまりました。

 今回は、温泉郷のある辺境都市ララコンベが主催であり会場になります。
 その運営は、ララコンベの商店街組合がメインになって行うことになっています。

 普通の辺境都市であれば、そういった仕事はその都市の長と役場が行うはずなんだけど、このパルマ大陸の辺境の、さらにド田舎に位置しているこのブラコンベ辺境都市連合に加盟している辺境都市の大半は、正式な長も、きちんと機能している役場も存在していません。
 昔々は王都から長が派遣されて、役場もきちんと整備されて機能していたらしいんだけど、ド田舎すぎて赴任希望者が激減したそうで、結局このブラコンベ辺境都市連合に加盟している辺境都市の大半の都市は正式な長不在なんだよね。
 これは、ブラコンベ辺境都市連合に限った話ではないそうで、他のド田舎の辺境都市の多くもそんな感じなんだとか。

 ま、そんなわけで、正式な長もいないし役場も機能していないブラコンベ辺境都市連合の各都市は、役場機能を商店街組合の蟻人達が代行してくれています。
 これは王都にある中央辺境局っていう、辺境都市の管理をしている役所の許可を正式にとってからおこなっているそうなので、まぁ、問題はないわけなんです。

 そんなわけで、ララコンベ商店街の蟻人達が、すでにあれこれ動いてくれています。

 これを受けて各都市の商店街組合も同様に動いていて、各都市の商店向けにあれこれ回覧を回してくれているんです。

 そんな回覧板が、今日もコンビニおもてなしへと回ってきた。
 いつもは週に1,2回、数枚のチラシが挟まれた木の板が回ってくるだけなんだけど、祭りの時期の回覧はさすがの威容といいますか……

 何しろ、50枚近いチラシが挟まれて回ってきてるもんだから、その分厚さときたらちょっと半端ない感じですね。

 ただ、この世界の皆さんがすごいな、と、思うのがですね、このチラシを毎回すべてしっかりと読んでくれていることなんです。

 僕が元いた世界でも回覧板が回ってくることはありましたけど
「え? そんなの聞いてないよ」
「え? そんなこと知らない」
 後からそんなことを平気で言う人が多かったこと多かったこと……

 でも、この世界の皆さんからそんな声を聞いたことがありません。
 どんなに分厚くても、その内容全てにしっかり目を通してくれているもんですから、伝達事項がしっかり皆さんに伝わっているんですよね。

 これは、インターネットのような仕組みが発達していないっていうのも影響している気がしないでもないんですけど、とにかく、この分厚い回覧板の内容も、表紙にサインしている各店の皆さんが確実に把握していることは間違いありません。

 で

 この内容によりますと、祭りの参加希望者は今週中に商店街組合に出向いて参加の手続きをする必要があるらしく、その際に

 祭りで販売する予定の品目
 参加者屋台の数(希望数)
 
 こういった内容も会わせて届け出るようにとの指示が書かれていました。
 
 また、今回は温泉郷で開催されるため温泉宿へ宿泊を希望する参加者は、その旨も届け出るように指示が書かれていた次第です。

 まぁ、僕達コンビニおもてなしの面々は、オザリーナ温泉郷にあるコンビニおもてなし6号店の2階にちょっとした宿泊施設と宴会場があるので、そこを利用してもいいな、と思っている次第なんですけどね。

 せっかく温泉郷で開催されるわけだし、今回は各地の支店や出張所のみんなに出店の担当をしてもらって、夜には温泉を満喫してもらおうと考えています。

 これは、夏にティーケー海岸の夏祭りに参加した際にも行ったように、従業員のみんなの慰労も兼ねているわけなんですよ。
 いつもみんな頑張ってくれているんだし、これくらいはさせてもらわないと、と思っている次第です。
 当然、この日の夕食代や温泉の利用料なんかは、すべて僕がポケットマネーで対応させてもらう予定にしています、はい。
 
◇◇

 例年、辺境都市連合主催で開催されるお祭にほぼ毎回参加している僕達は、出店でお弁当を中心に販売しているんだけど、その中でも特に人気なのがスアの魔法薬なんです。

 何しろ、ド田舎のこのあたりには似つかわしくない超高級魔法薬が、信じられないバーゲン価格で販売されているもんですから、毎回大人気なんですよね。

 で

 今回も、スアが気合いをいれて魔法薬を大量に生産しているんですけど、
「……今日はちょっとでかけてくる」
 今日のスアは、そう言うと、魔法の絨毯にのっかってお出かけしていきました。

 魔法薬用の薬草を追加で採取するのが主な目的らしいんだけど、
「……なんかね、面白い魔石があるって、お茶会倶楽部のお友達のドラコから聞いたから、ついでに見てくる」
 とのことでした。

 スアなら転移魔法を使えばすぐに行けるんじゃないの? と思った僕だったんだけど……スアの転移魔法は一度行ったことがある場所へしか行けないんだよね。
 で、その面白い魔石を持っている人が住んでいる村にスアは行ったことがないため、こうして魔法の絨毯で移動していっているわけです。

 ちなみに、その村まで普通に荷馬車で移動していっていたら片道で2,3ヶ月はかかるそうなんだけど、魔法の絨毯を使用すると
「……お昼には、帰ってこれると思う、よ」
 とのことだった。
 これには、帰宅の際は転移ドアを使用することが加味されているわけなんだけど、それでも荷馬車で数ヶ月かかる道のりを半日かからずに移動出来ちゃうわけです。
 ホント、スアってばすごいよなぁ、と、改めて思った次第です、はい。

 さて

 秋の収穫祭に、当然コンビニおもてなしとして参加する気満々なわけですが、その準備もあれこれ進めないといけません。

 具体的には、出店の店番の希望者を募らないといけないわけです。

 基本的には全員に参加してもらって、夜には日頃の慰労を兼ねた宴会に参加してもらうつもりでいるんですけど、子だくさんのクマンコさんや、まだ育休中のヤルメキスもいますしね、そんなみんなの意向を聞いて、店番や宴会の調整をしていくのも僕の仕事なわけです、はい。

 僕は、早速出欠を書いてもらうための用紙を準備して、それを店長回覧していきました。
 これは、本店の店長である僕が2号店の店長であるシルメールに手渡しておけば、各店の店長が店員の意向を確認した上でその店の店員の出欠をすべて記入し、その上で順番に回覧してくれて、最終的に6号店の店長チュパチャップが僕の元に届けてくれる手はずになっています。

 で

 今日も、その書類を朝一番で店長回覧として回したところ、その日のお昼前には戻ってきたんですけど
「タクラ店長様、店長回覧をお持ちしま……」
「ひゃあ!? またすっころんでしまいましたぁ!?」
「きゃああああ、転移ドアをくぐった先でまでスカートがぁ」

 ……と、相変わらずのお約束とともに、チュパチャップが回覧板を持って来てくれた次第です……

 必死にスカートを直しているチュパチャップを見ないようにしながら、僕はその回覧を受け取っていきました。

しおり