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秋の味覚フェア第二弾 その2

 秋の味覚フェア第二弾を展開しているコンビニおもてなしですが、僕としましてはもっと何か商品を増やせないかと考えていました。

 とはいうものの……

 すでに柿もどきのカルキは使っていますし、栗もどきのバックリンや椎茸もどきなカゲタケなんかもあれこれアレンジして、すでに商品化していますので、正直すぐには浮かんで来ないこない感じです。

「そんなに大した物でなくてもいいんだけど……」
 腕組みしながら考えこんでいた僕なのですが……まぁ、考えていても始まりませんね。

 そう思った僕は、コンビニおもてなし本店の廊下に常設されていますスアの転移ドアをくぐっていきました。
 その先は、テトテ集落です。

 ここテトテ集落は、僕達コンビニおもてなしと関連店で使用している野菜や果物の多くを生産してくれています。

 ですので、ここテトテ集落で今の時期にたくさん収穫されている野菜や果物を実際に見させてもらいながら、改めて何か考えてみようと思った次第です。

 テトテ集落の転移ドアの出口は、おもてなし商会テトテ集落店兼コンビニおもてなし出張所テトテ集落店のありますリンボアさんのご自宅の中にあります。
 その奥にあります扉をくぐると、ちょうどリンボアさんがコンビニおもてなし出張所の店番をしておられました。
 
 そんなリンボアさんに軽く挨拶した僕は、集落の中へと移動していきました。

 集落の中には果物狩りを行っている大規模な果樹園があります。
 その周囲には今日もすごい数のお客さんが集まっています。

 最初はどうなるかと思ったテトテ集落の果樹園経営ですが、盛況が続いているようですね。

 その様子を遠目に確認した僕は、そちらには行かずに集落の奥地へ向かって移動していきました。
 集落の奥には、テトテ集落の皆さんが管理なさっている広大な農場があるんですよね。

 テトテ集落では、果樹園がオープンしたことでそちらに多くの人手を割いてはいるものの、こちらの農場の方も今まで以上に力を入れて頑張ってくださっているんです。

 そこで栽培している野菜の多くは、僕が元いた世界の野菜によく似ているこの世界の野菜達で占められています。

 そういった野菜の多くは、この世界では貧相だったり、味がいまいちだったりと、品種改良前の段階とでもいった感じの物が多かったわけです。

 で

 それをですね、スアの魔法であれこれ品種改良を重ねてもらい、僕の世界の野菜に近づいた野菜の種を使って、ここテトテ集落の農場でその野菜を栽培してもらっているわけなんですよね。
 もともとテトテ集落で栽培していた野菜も多いのですが、今では僕が依頼した野菜の方を多く栽培なさっている感じです。

「おぉ、店長さんじゃないですか」
 農場に顔を出すと、この農場の総責任者を務めている熊人(ベアピープル)のベアタロウさんが笑顔で僕に声をかけてくれました。

 このベアタロウさんですが、年齢こそやや高めなものの、野良仕事を何年も続けておられるもんですから、かなりの力持ちなんです。
 年相応に、ややふっくらした体型のベアタロウさんは、気は優しくて力持ちの象徴と言える人格者でもありまして、長のネンドロさんと並んで、この集落のリーダー的な存在です。
 
 ちなみに、魔法使いの奥さんをもらったばかりの新婚ほやほやさんでもあります。

「ベアタロウさん、こんにちは」
 僕は軽く挨拶をしながら、畑の中のベアタロウさんの元へと歩みよっていきました。
 ベアタロウさんの横には、魔法使いの奥様の姿があります。
 魔法使いの衣装を着ているのですが、裾をたくしあげ、腕まくりして鍬をふるっている姿は、ちょっとミスマッチな気がしないでもありません。

 ベアタロウさん曰く『小柄だけど、よく働いてくれるんですよ』と、お聞きしてます。

 で、そんなお2人の側へと歩みよった僕は、しばらく雑談していったのですが、
「……ところでベアタロウさん、ちょっと相談なのですが……」
 ほどなくして本題を切り出しました。

「この時期に収穫出来ている野菜ですか……」
 ベアタロウさんはそう言うと少し首をひねりました。
「そうですね……増産体制が整っている野菜はすべておもてなし商会で買い取ってもらっていますし……」
 ベアタロウさんがそう口にしていると、
「あなた、あれはどうかしら?」
「あれ?」
「ほら、あの紫の……」
「あぁ、あれか」
 奥様の言葉を聞いたベアタロウさんは、ポンと手を叩きました。

 で、

 そんなベアタロウさんと奥さんに連れられて、僕は農場の一角へと連れていかれました。

 そこは、野菜の試験栽培が行われている一角みたいなのですが。
「以前、スア様にいただいた苗を試験栽培していたのですが、やっとここまでになったんですよ」
 ベアタロウさんが指さしている先には……

 あ、この葉っぱ、思いっきり見覚えがあります。

 間違いありません。
 その一角いっぱいに広がっているのは、サツマイモの葉っぱだったんです。

 そういえば、サツマイモもどきの生産って、少しの量は成功していたんだけど、なかなか大量生産出来るほど苗が増えなかったんですよね。

「おかげさまで、しっかり実もなってますし、ちょうど増産にも目処がついたとこなんですよ」
 ベアタロウさんがその茎を引っ張りますと、その根っこの部分に綺麗な赤紫色をしたサツマイモがわんさかとくっついていました。

 うん、これなら使えるかも。

 そう思った僕は、早速その場でそのサツマイモもどきを調理してみることにしました。
 まぁ、調理といいましても、農場の一角に集められています落ち葉の山を使ってたき火をして、その中で焼き芋にしてみようと思っているだけなんですけどね。

 ベアタロウさんと一緒にたき火を始めた僕は、魔法袋に入れて持参していたアルミホイルで収穫したばかりのサツマイモもどきをくるんでは、その中へ入れていきました。

 ちなみにこのアルミホイルですが、コンビニおもてなしの商品在庫として残っていた物をスアとルアに研究してもらいまして、僕が元いた世界のアルミホイルとよく似た物作り出してもらい、それを量産してもらってコンビニおもてなしで販売しているのですが、それを持って来た次第です。

 たき火を囲んで、僕とベアタロウさん、そしてその奥さんの3人がのんびり雑談をしていますと、

「お、店長さんじゃないか」
「おいでになられていたのでしたら、一声かけてくだされば駆けつけましたのに」

 僕の姿に気付いたテトテ集落の皆さんが次から次へと僕達の周囲に集まってこられました。

 気が付けば、かなりの数に膨れ上がっていたんですよね。

◇◇

 ……そのまま、それなりの時間が経過しました。

「……うん? 何やらいい匂いが……」
「ほんとね……」
 たき火を囲んでおられる皆さんの中から、そんな声がチラホラ聞こえ始めました。

 皆さん、鼻を鳴らしながらたき火へ視線を向けておられます。

 どうやら、頃合いのようですね。
 僕は、手にもっていた木の棒で、すでに炭化している落ち葉をかき分けていき、その中のアルミホイルを取り出しました。
 かなり熱いですから、手には持参してきていた軍手をはめています。
 
 ちなみに、この軍手もコンビニおもてなしの商品在庫を元にして、テトテ集落で服などを作ってくださっている皆さんに量産してもらっているんですよね。

 で、軍手をはめた手でサツマイモもどきを取り出した僕は、それを真っ二つにわってみました。

 ほわぁ……

 すると、周囲一帯に香しい香りが立ちこめていったのです。
 これぞまさに焼き芋の匂いです、はい。

 その匂いを嗅いだみなさんは、

「うわぁ、美味そうな匂いだなぁ」

 そんな声と同時に、喉をならしておいでです。

 そんな皆さんの前で、まずは僕が試食よろしく、サツマイモもどきを口にしていきました。

 ……うん、これは美味しい!

 黄色い身はほどよくほくほくしていまして、食べると口の中に甘い味が広がっていきます。
 同時に、その匂いが鼻をくすぐりまして、ホントこれたまりません。

「うん、いい感じですね」
 僕が一言そう言うと、

「て、店長さん、ワシにもくれんか!」
「私もほしいです!」
「こっちも頼む!」

 周囲に集まっておられた皆さんが一斉に手をあげながら僕に声をかけてこられました。

 そんな皆さんに、僕はサツマイモもどきを取り出しては、それをお渡ししていきました。

 で、そのアルミホイルを剥いて、中のサツマイモもどきを口になさった皆さんは、

「うん、確かにうまい!」
「ホント、おいしいわ!」
「これはいい、うん!」
 思わずそんな声をあげておられたのでした。

 この調子ですと、このサツマイモもどきを焼き芋として販売出来そうですね。

 嬉しそうに焼き芋を口に運ばれている皆さんの姿を見回しながら、僕はそんな事を考えていました。

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