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07 60で奴隷に ? ええ~⤵最低でも200でしょ


仲間がヤバい魔物だというレッドベアをしっかりと観察した。
 間違っても攻撃を喰らいたくない。

 「噛みつかれたり、鋭い爪で引き裂かれたり、はたかれたりはしたくないよ〜」

 ああっしまった !! これ言っちゃダメなヤツじゃない ?

 まさかね。イタくするのはやめて欲しい…


 その後もじっくりと吟味した結果、ヤッちゃうか ? さほど問題は無いのかな ? と判断した。

私は不意に身体を沈め、全速力でレッドベアに向かって突っ込んだ。

 そして、その勢いのまま右手に持っていたサバイバルナイフを振りおろし、レッドベアを切り裂いた。


シュパッッッッッ !! ドサッッ !!!

レッドベアは簡単に刃を喰らい鈍く大きな音をたてて倒れた。

更にもう一頭の方へササッと駆け寄り、そっちの熊もナイフを素早くなぎ、一閃した。

シュパッッッッッ !! ドサッッ !!!


「「おおおおおおおおーーー !!!」」

「どへっ ?」

二人は大いに驚きレイは驚きを通り越して呆気に取られていた。

 「口があいたままて、マヌケな顔になってるわよ」

 「うっ、うるせー !」

何だかね、ひどく警戒していた彼らには申し訳ないけど、意外とあっさり二頭とも倒してしまった。

「アイリ、君は…… 」

「あっ !! レベルが2に上がって、攻撃力が1100になったわ !」

「ズコッ、1100ううーーー↗ !?!?」

「コイツ鬼かよ ? どおりで…… 」

「スゴいです聖女様 !」

「レベルが上がったのも分かるのかい ?」

「ええ、鑑定のスキルでね♪ 今のでクラウはレベルが2つ上がって村長とレイは二人ともひとつ上がったようね」

「鑑定持ちかー ? それも私たちのレベルまで簡単に解ってしまうのか。アイリは何でも来いだね !」

 「スゴい力をお持ちですね」

 「なんなら転移もできるわよ。するとこ見せよっか ?」

シュンッと10メートル先へ転移してみた。

「はあー。もう私はそれくらいじゃあ驚かないよ !」

「えええ~~ ⤵⤵⤵」

「イエイエ ! 素晴らしいです聖女様 !」

村長は軽く流そうとしたところをクラウが優しい言葉で受け止めてくれた。
 だけど、ちょっと言葉遣いがおかしくない ?

「ハハハッ ! だけどアイリは本当に規格外で無敵だね !」

「食いもんに関しては確実に助かってるぜ !」


やがてレイとクラウは倒した後のレッドベアを切ったり剥いだりし始めた。

 解体しているのかな ? まあ、それ系の何らかの処理をしているようね。

どうやら簡易的に解体していたようで、処理済みのそれを私がアイテムボックスに収納した。

 私は慣れてないからこんなグロいのは直視できないわぁ !

それにしても思い返せばこの人達は本当に献身的に私を守ろうとしてくれた。

 きっと女の子だからなのでしょうね。

 憎まれ口のレイまでもがそうしたのには驚かされたけど、村長の気概が若い子たちにまで伝わっているのかも知れないわ ?

それにひょっとしたら村の人たち全員がこういう気質なのかも知れないわね ?

どっちにしてもこういう男たちって悪くないわ !

 それに守られるなんて悪い気はしないしね !


さて、その後も私たち一行はメイジゴブリン混じりのゴブたちの群れやコボルトやウルフ、そしてオークを倒しながら町に向けて進んだ。

小物ばかりだったけどゴブリンやコボルトなんかはかなりの数を倒したのでクラウは何度かレベルが上がった。

私はレベル2から3にはなかなか上がらなかった。クラウは元々のレベルが低いからなのかけっこう簡単に上がったけど、それに比べると私の方が上がりにくいのかな ?

私が相当戦えることが分かったので、街道まで出てしまえばこの辺りならたいして警戒もせずに歩みも速かった。

当初、か弱い聖女を守りながら安全にと考えていた厳しいであろう行程は、一転してとても順調な旅になった。

 じいさん達と荷車をひいて2日の予定だった道のりも楽々一日で、それも日が暮れる前に目的地まで到着することができたのだ。

かくして私たちは無事にコンテの町へと到着した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


町の人達にはアイテムボックスや聖女のことは知られないようにしなければならないので、町に入る前に荷車と荷馬車を取り出して道中で倒した魔物の肉や素材もいくらか積んでから町に入った。

熊は大きすぎて、とても荷車には乗らないのでそのままアイテムボックスの奥の方へしまっておいた。

 熊を荷車に乗せたら一頭で満杯になってしまいそうなのよね。


それと私は勝手に街だと思っていたけど、残念ながら街ではなく町だった。
 それもギリで町なのよ~。

村人たちが "まち" というから繁華街や大きな建物があってどんなにか大きな街だろうと思っていたけど、古い西洋的な建物がポツリポツリと建っていて中心地は何軒か固まっているけど.日本で例えるならばせいぜい田舎の商店街ってとこね。

確かに町ですか ? それとも村ですか ? と聞かれたなら村よりは町なんだろうけどね。

これじゃあ王子様は住んでなさそうね !

それどころか貴族のご子息様とかも居なさそう。

町への期待が大きかっただけにけっこう残念だわ。

ショックを受けてナンだか落ち込んでしまった。

「あゝ、ワタシの愛しい王子様はどこ ?」

「おっ、どうしたアイリ、荷車が重いのか ? オマエが元気ないなんて珍しいな !」

「私が元気ないと、アンタは嬉しそうね ?」

「まあまあ。この町は歴史のある町でね。前はもっと栄えてたんだけど……
ここからずっと先にある町ネバーフルの方が人気があるんだ。あっちは王都に近くてここより大きな町なんだよ」

「へえ~~ 」

「ここはアルテ村に比べれば町だけど、それでも地方の田舎町ですね、廃れてきて空き家も多いんですよ。僕は都会よりも、このコンテの町の方が好きなんだけどなぁ」

「クラウは若いのに古き良き物が好きなのかな ?」

「そういうのは時代の流れなんだろうねえ ? だけどこの町だって一通りは揃ってるんだよ。さあ着いた。ここはいつもお世話になっている、小さな店だけど信用できる唯一の商店なんだよ」

ちょうど目的地に到着したみたい。

「ジョエルさん、こんちわっ !」
「「お世話になります !」」

「やあやあ、遠くから良く来たな ! おっ可愛いお嬢ちゃんは初めてだね !」

「ホントね、ご苦労様 !」

「アイリです。よろしく !」

優しそうな夫婦が笑顔で出迎えてくれた。

二人は村長たちといくらか会話を交わすと、積み荷を見てぱっぱっといくらか取り出していった。

 種類はたくさんだけど数はひとつふたつだった。

 残念ながら全体の積み荷の10分の1も買い取ってくれ無さそうだ。


「せっかく来てくれたのにたくさん買い取れなくてすまないね、元々小さな店なのに最近ではお客も減ってしまってねぇ」


「いえいえ ! 私達も時々しか来られないのにジョエルさんにはいつも良い値段で引き取っていただいて助かってます」

取り引きは良好にまとまり、私達はジョエルさんの店を出た。


そしてしばらく歩き今度はさっきよりもかなり大きな店の前に来た。

「この店はたくさんの品物を色々と手広く買い取ってくれる商店だ」

「こんちわっ !」

「お世話になりますビリーさん」

「はいはい村長、毎度。おおおおおー、若い娘かね ? アンタらの村では珍しいじゃないか~(ニタリ)奴隷商にでも売りに出すのかい ? 」

「イイエ、そんな」

「なかなか器量も良さそうだし、もし良けりゃあ20万ギル(日本円で約20万円)ぐらいなら出してやるからさ、1年の条件付き奴隷でウチの店の売り子にでもしないかい ?」

「ええええ~~ !? 私、売られちゃうの ??」

 (聞き間違えかしら ? 200万円でもどうかと思うのにたったの20万円ぽっちで~~~~ !? …ヒドいよ)

「あゝ心配ないよ。大事にするからな ! フォッフォッ」

「ダメだ !」

 「ダメです !」

「まあまあレイもクラウも落ち着いて !! ……イヤイヤすまないビリーさん。この子は私の遠い親戚なんだよ」

(いやいや、どこまでさかのぼっても血は繋がって無いと思うのですが…… )

「またまた〜、村長とは全っ然似てないではないか。そうか、じゃあ分かった40万出そう ! これならアンタらも損はしないはずだぜ !!」


「本当に申し訳ないね ⤵⤵ 大事な大事な本当に大切な娘さんなんだよー !」

「じゃあこれで最後だ、 60で買おう。60じゃダメか ? 」

「本当にすまないね ⤵⤵⤵」

「ちぇっ、まさかあんたが囲う訳じゃあるまいな。だけど良いのかね ? お前らの卸せるところはわずかなんだろ ? ワシにそんな態度をとって。もしワシの機嫌を損ねたらアンタらは今みたいには暮らしていけなくなるんだぞ ! ええっ ?」

(なんだかこの人、態度はデカイし、めちゃ感じ悪い奴ねえ ? ひょっとしたら村長さんたちって相当足もと見られてるんじゃないのかな ?)

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