コンビニおもてなしと、ナカンコンベ大運動会 その1
こちらの世界で偶然出会ったユキカ達ですが、毎日ドンタコスゥコ商会で頑張っているそうです。
まさか、こっちの世界に僕以外にも転移してきていた日本人がいたことに少なからずびっくりもしたのですが、そんな彼女が頑張っている様子を、コンビニおもてなし5号店西店店長のシャルンエッセンスから伝え聞く度に、なんだか嬉しく思えてくる次第です。
……しかし、こうして考えるとあれですね……
時々お店の手伝いにも来てくださっているオトの街のヨーコさんという方も、やっぱり僕やユキカと同じように日本からの転移者なんじゃ、と、思ったりすることもあるのですが、ヨーコさんの場合は僕やユキカのような人種族ではなく、白い狐の姿をなさった亜人さんですからね、やはりその線は薄いんじゃないかと思ったりしている次第です。
◇◇
と、まぁ、そんなわけでユキカの一件も一段落したコンビニおもてなしは通常営業に戻ったわけです。
本店の店長業務に戻った僕は、毎朝の日課となっている弁当作りに今日も勤しんでいます。
魔王ビナスさんとのコンビでこの作業を行っている僕なのですが、息の合った連携を駆使しながらあっという間に作業を終えている次第です。
とんでもない量をたった2人で仕上げているものですから、厨房の向かいでヤルメキススイーツの担当者の1人として最近作業に加わっているアルカちゃんが、
「お、お、お、お2人ってば、ちょっとすごすぎるアル」
そう言いながら目を丸くしてしまうことも少なくありません。
弁当の追加を支店から依頼されてもすぐに対応出来るように、すでにこの時点で多めに弁当類を作成もしているのですが、ナカンコンベにあります5号店の東西店舗で提供しているお弁当の追加分に関しましては、コンビニおもてなし食堂の名前を冠しています食堂ピアーグで対応をしてもらっています。
何しろ辺境都市ナカンコンベはこの一帯では一番人口の多い都市ですからね。
1都市の中に、東と西の2店舗を展開しているにもかかわらず、その両方の店舗が、コンビニおもてなし全店舗の売り上げ1位2位を独占しているほどの売り上げを日々記録し続けているだけあり、弁当の販売個数も半端じゃないもんですから、こういう措置を講じている次第です。
これは、追加が必要になる時間帯はコンビニおもてなしの本店も結構忙しい時間帯にバッティングしていることが多いためでもあるんですよね。
以前、コンビニおもてなし5号店が軌道に乗るまでの間、僕が現在の西店の店長を務めていたのですが、毎日のように電動バイクの「おもてなし君1号」を駆使して食堂ピアーグとの間を往復しまくっていたものですが、その役目は現在、コンビニおもてなし5号店西店の現店長シャルンエッセンスが引き継いでくれていまして、
「追加ですわ!お弁当の追加をお願いいたしますわぁ!」
慌てた様子の声をあげながらおもてなし君1号で食堂ピアーグに向かっていくシャルンエッセンスの姿がよく見られるようになっているそうです。
ルア工房のルア曰く、
「今じゃすっかりお馴染みの光景になってるよ:
とのことでした。
◇◇
そんなある日のことです。
「リョウイチお兄様、ちょっとよろしいでしょうか?」
ちょうど本店の営業を終えてコンビニおもてなし本店の後片付け作業を終えたばかりの僕の元に、5号店西店のバイクのお姉さんとして広く認知されつつある ー本人は全く知りませんー シャルンエッセンスがやってきました。
「どうかしたのかいシャルンエッセンス」
そう言う僕に、シャルンエッセンスは
「はい、実はナカンコンベの商店街組合からこのような回覧が回ってまいりまして……」
そう言いながら一枚のチラシを僕に差し出して来ました。
で
そのチラシへ視線を向けますと……その表題部分には、
『ナカンコンベ大運動会のお知らせ』
と、書かれていました。
何々……僕はその内容に目を通していきました。
なんでも、毎年この時期に、辺境都市ナカンコンベで運動会を開催しているのだそうです。
これは、ナカンコンベ商店街組合が主催していまして、ナカンコンベ商店街組合に加盟している全店舗に参加資格があるのだそうです。
運動会では組合に加盟しているお店が屋台を出すことも出来るのですが、同時に運動会にも参加も出来るのだそうです。
お店の規模に応じて各店から参加出来る人数が決まっていまして、コンビニおもてなしは東西店と食堂ピアーグ・マクローコ美容室の4店合同で総勢20名まで参加可能ということでした。
ちなみに、この参加者は、ナカンコンベ以外に本支店がある商会やお店は、そちらの店の店員も参加可能なんだとか。
「へぇ、子供参加の競技も結構あるんだね」
そのラインナップを見ていた僕は、そんな事を口にしていたのですが、
「パパ、パラナミオがお役に立てることが何かあるのでしょうか?」
そんな事を言いながら、ちょうど学校から帰ってきたパラナミオがチラシを覗き込んできました。
「うん、今度ナカンコンベで運動会があるみたいでね、それにパラナミオ達も参加出来るみたいなんだよ」
僕がそう言いますと、パラナミオはぱぁっと笑顔を浮かべました。
「パパ! パラナミオ頑張ります! 運動会任せてください!」
そう言いながら胸をドンと叩いているパラナミオ。
そんなパラナミオに、僕は
「そうだね、せっかくだからパラナミオやリョータ、アルト・ムツキ・アルカちゃん達にも頑張ってもらおうか」
笑顔でそう言いました。
で、
ちょうどその言葉を厨房で聞いていたらしいアルカちゃんが
「ぱ、ぱ、ぱ、パパ上様に、すでに家族の一員として認めて頂けているアル!? こ、こ、こ、これはもう死ぬ気で頑張るしかないアル」
そんな声をあげているのが聞こえて来た次第です。
そんな中……
「あれ?」
僕はあることに気が付きました。
いつもは本店の地下にあります冷蔵室にいて、冷媒としてその部屋を冷やしてくれているシオンガンタとユキメノームの2人の使い魔が地下からの階段のところからひょこっと顔を出していたのです。
で
その手には、
「ガンバレ!パラナミオちゃん」
「ファイト!パラナミオちゃん」
そんな手書きの旗がもたれていたわけでして……
地の龍であるパラナミオなんですが、成長過程にあるからか結構涼しくなってきた最近でも
「ふう……暑いですねぇ」
そう言うことが多いのです。
スア曰く、
「……成長しているせいで、体内温度がかなり高めになってるみたい、ね」
とのことだったのですが、その暑さを凌ぐために地下室によく出向いているパラナミオ。
そのおかげで、その地下室にいることが多いシオンガンタとユキメノームの2人とすっかり仲良しになっているもんですから、2人は早速応援に駆けつけてくれたのでしょう。
パラナミオは、そんな2人に向かって
「はい!まかせてください!頑張ります!」
笑顔でそう言っていました。
そんなパラナミオの様子を見つめながら、僕は
「となると、他の支店からも参加希望者を募らないといけないな」
そんな事を考えていた次第です。