第29話 出立の日
翌日。
陽光の代替えとなる
十分な栄養と休養をとった俺は、既に目が覚めていた。
上半身を持ち上げて、大きく一度伸びをする。腕を回し、足を曲げ、腰を捻り、体の状態を再確認。
(おし! どこも異常なーし!)
そのままベッドから飛び降りる。もう一度ゆっくりと体を伸ばし、関節をほぐして準備運動。床に転がる
「それで……二人はこの後どうするんだ?」
歩けるくらいには回復したマルクがベッドから起き上がり、俺たちの元へと歩み寄る。
「あんたらにはあまり隠し事をしたくねーし、薄々勘付いてるとは思うけどな、俺たちは
「な、何を馬鹿なことを! 二人だけのチームで辿りつけるわけないだろう! いくらヤマトが強いと言っても、ここから先の下層はそんなに甘くない。
「別に……あんたらには関係のないことだ」
本気で俺たちを心配してくれているのだろう。
眉間を寄せて強張ったマルクの顔が、雄弁にそれを語っている。
———本気で他人を心配するヤツなんて、元の世界でも何人いただろうか。
みんながみんな、上っ面だけだ。
共に憤るフリ。悲しむフリ。同情を寄せるフリ。
『何かあったら絶対言ってくれ』『すぐに駆けつけるからな』『お前のために言ってるんだぞ!』
聞き飽きた使い回しの陳腐なセリフの大合唱。
どいつもこいつも、他人を心配する自分に酔いたいクソ野郎どもだ。
「……嫌いじゃねぇぜ、アンタ」
「ん? 何か言ったか? ヤマト」
「いや、なんでもねぇ」
違う形で出会えれば、きっとウマの合う仲間になれたかもしれない。歳は離れていようとも、通じ合える
「じゃあ、行くかエリシュ」
「ええ。……あなたたち、いろいろとありがとう。もう無茶はしないでね」
立ち去ろうとする俺たちの姿に、アルベートが狼狽えながらマルクを見た。
「ねえマルクさん。俺たちも、手伝ってあげましょうよ」
「……アルベート、お前、自分が何を言っているのか分かってるのか!?」
いつもはヘラヘラと笑い、やや軟弱な印象のアルベート。その優男から笑みが消えると、顔付きが一変した。
「……分かってますよ! 下層がどれだけ怖いかってことくらい! ……でもあの時、ヤマトさんたちは逃げないで、俺たちを助けてくれた。このままヤマトさんたちを見送るだけなら、俺は……俺たちは、逃げたことと同じになるんじゃないですか!?」
「私もそう思う。ヤマトさんたちには協力しなくちゃいけない……そんな気がしてならないの」
「お、お前ら……」
懇願するように詰め寄るアルベートとクリスティに、マルクは腕を抱えて悩み込む。
半ば気圧される形で、マルクは俺たちへと視線を戻した。
「ヤマト、それにエリシュさん。あんたらのステータスを教えてくれないか?」
「……ええ、いいわよ」
エリシュが