第10話 寝るならほかの場所で寝ろ!!
ゆっくりと慎重に進むエリシュの背を視界に捉え、俺は寡黙に追従していた。
80階層の
それらの残響を背に遠ざけて、
エリシュの案内があってこそ、だ。
しばらく整備の整った洞窟のような
そしてその吹き抜けの中心部を支配しているのは、青白く屹立した水晶にも似た柱。
大人ならなんとかしがみつけそうなほどの円柱で、放つ光は吸い込まれるように美しく、そして同時に人を寄せ付けない不気味さも感じさせる。
上下を見渡せば階層を突き抜ける形で伸びており、どちらにしてもその光源の終始点は薄暗い闇に飲み込まれていた。
これこそが
初めて見るこの世界の命の光を目の当たりにして、俺は妙案を思いついてしまった。自分で言うのもアレだけどハッキリ言って完璧な作戦だ。
「なあエリシュ、この
「———触ってはダメ!」
「……え? 触ったら、どうなるんだよ」
「死ぬわ」
「ウソ!? ———うわっ、あぶね! そう言うことはもっと早く言ってくれよ!」
慌てて手を引っ込める俺に、エリシュはため息を
「この柱の光は、最上階の王族しか触ることが許されていないの。許可なく触れたら一瞬で蒸発してしまうわ」
「なんだよそれ! 怖っ! ……でもよ。この光のおかげで、みんな生きていられんだろ?」
「……そうね。私たちはに与えられているのは、その光の恩恵だけ。ただ光をその身に受けて、生かされているの」
神聖なものなのに、今にも唾を吐き出しそうなエリシュの顔も気になるけども。
……せっかくのナイスアイデアだと思ったのによぉ。
それよりも俺には落胆のほうが遥かに大きく、苛立ちを隠しきれなかった。
結局のところ、
俺の苛立ちと焦燥が伝播したのか、エリシュはチラリと振り返る。そしてにべのない顔に少しだけ
「……少しだけ、急ぐわね」
先を行くエリシュの速度が上がり、小走りになる。
音を極力奏でないように、静かに、速く。そして慎重に。
迷宮の曲がり角。並走する俺とエリシュは生温かい感触に押し戻された。
決して警戒をかなぐり捨てた訳じゃない。
だけど慢心は確かにあった。俺の心情を汲んでくれたエリシュを責めるだなんて、俺はそんなに腐っちゃいない。
直角に曲がった通路のすぐそこに、大きな体躯をとぐろに巻いて寝ている
(———こんなところで、寝てるんじゃねーよっ!)
気だるそうに持ち上げる目蓋の奥から覗かせた