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不穏3

「何故あなたはマックスの名を軽々しく呼ぶんですか!!」

 この国にとって名前は特別なものだ。
 だから誰も名乗らないし、呼ばない。

 この人だけがマクスェルの名を呼び、そして彼を陥れようとしている。

 伴侶に贈り合う大切なものを何故。

「あれは私の息子だ。
だから名を呼ぶのも当然だろう。所有物の名は呼んでもいいことになっている」

 王の候補の資料に書かれたマクスェルの部分はとても少なかった。
 子供だから、実質候補外。だからこその少なさだと勝手に思ってしまっていた。

 この人の子だからだったのか。

「あの失敗作の事はどうでもいいだろう。
問題はお前が今私を王として認めるのか認めないのかそれだけだ」

 認めれば恐らくそれを公表するために、それまでは生かしてもらえる。
 この人を王と認めなければこの場で不幸な事故が起きる。

 それほど時間がかからないからと侍女たちの随伴が断られた理由がようやく分かった。

 それから神官である白き竜がなぜ赤き竜に気を付けろと言っていたのか。

 この人達は赤き竜の末裔なのだろう。
 そしてこの国の中枢に居続けたい人達。


 ふと周りを見るとここは貴族の別邸の一室の様だった。

 贅を凝らした調度品は美しく、そして財をこれでもかとため込んでいることがよく分かるものだった。

 ここではい分かりましたとこの人を王に推挙しても、王政が安定した瞬間殺されるだろう。
 王になった後私は間違いなく不要なのだから。


 その時ドアがノックされた。
 「入れ」と国主が短くいった。


「お呼びでしょうか……」

 マクスェルが私をみて息を飲む。
 髪は先ほどの件でぐちゃぐちゃになっているし、縛られた手首は赤く変色している。

 何があったのか。察しの悪い人間でもきっと想像ができる。

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