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 リゲルの言葉もこれが最後。
 強い心と決意を持った言葉。
 ライラに想いを告げてくれたこと。それがどれだけ重いものだったのか、はっきり思い知らされる。胸をいっぱいに満たしていって、限界だった。
 視線の先の、リゲルの琥珀色がぼやけた。つぅっと頬をあたたかいものが伝う。
 不安に思っていたことがなくなった安堵。
 そして、有り余る嬉しさ。
 今の涙はそういうもの。リゲルもそれはわかってくれたろう。
 そっと手を伸ばされるのが、歪んだ視界でもわかった。
 ライラは目を閉じる。閉じたまぶたに圧迫されて、もっとたくさんの涙が頬に伝った。
 けれど今はそれすら嫌な感触ではない。リゲルが伸ばした手でライラを抱き込んで、ぎゅっと捕まえてくれたから。たまらずにライラもリゲルの背に腕を回す。身を寄せて、抱きついた。
「お前は綺麗だよ。一人の女として、とても綺麗だ。自信、持て」
 うん、としか言えなかった。リゲルに、恋人にそんなことを言われて嬉しく思わないはずがない。抱いたライラの背中をぽんぽんと叩きながら、続けてくれる。
「そうだな、大人として綺麗になったと思ったのは、朗読会のときだな。はっとした。お前、背が高いし細いし、すらっとして雑誌に載ってるモデルみたいに美しかったよ」
 たくさん、たくさん褒められたのに。
 それでもライラは言ってしまった。
「でも、リゲルは」
 リゲルに甘えてしまうような言葉を。
 もっと安心させてほしいと。
「ストップ。身長のことは言うな。確かに気にしちゃいるんだから」
 しかしそれは遮られた。ライラがなにを言いたいかは伝わったようだ。

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