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12.エルクってお姉さん大好きよね

 ハータで宴会をして1週間後。
 昼と夜の中間くらいの時間に『スイクーンの寝床』の食堂で仲間と飯を食べている。

 ハティは全メニューを制覇するとか言っていて、今日はピリ辛うま豚丼を食べている。
 俺もそれにすれば良かった。
 リリアンはチーズスライムかけハンバーグを食べている。
『スイクーンの寝床』はスライム料理を扱っていなかったんだが、リリアンが食堂の人に強くオススメしてメニュー追加された。

 客足が落ち着いたんだろうか。
 サーシャ先輩が俺の隣に座り、テーブルに頬杖をつく。

「エルク君。最近うちの仕事も冒険者のクエストもしてないみたいだけど、何してるの?」

 サーシャ先輩のジト目。

「いや……その。前のクエストが大変だったので、長めのお休みってことにしてるんです」
「へ~。そんなに休めるほどたくさん稼いだのね」
「ははは。えぇ。まぁ」
「なるほど~。じゃあ、普段お世話になっている美人の先輩に何か贈り物をしてもいいんじゃない?」

 サーシャ先輩はニコッとしてくる。

「あ~。おカネは新しい武器買うのに結構使っちゃったんですよ」

 俺はリリアンの持つ、リリアンの頭くらいの大きさの宝石が埋め込まれた杖を見る。魔力を強化する効果があり、かなり高かった。
 リリアンの召喚魔法は俺たちパーティの一番の強みだ。
 俺はパーティの強みをさらに強化することにした。

 一度、俺がはめている指輪をリリアンに貸してみたが、魔力の高まりを感じ取れなかったらしい。
 相性とかあるんだろうか?

 まぁ、余ったカネでしばらくは仕事サボれるから、こうやってダラダラしているんだが。
 真面目な性格のサーシャ先輩には俺のなまけっぷりが気になるんだろう。
 サーシャ先輩は諦めない。

「それか、たまにはうちの仕事もしてよ。最近お客さんが増えてきて大変なの」

 少し疲れた表情のサーシャ先輩。
 働かずに飯だけ食べている俺にもわかる。
 最近は戦士風の客が増えている。どうやら、周囲の町から兵士や冒険者を集めているようだ。
 ガルアスト砦の戦いが激しくなり、ガンガン戦える人を集めてるんだろう。

 さてと、なんて言えば働かずにいれるだろうか?

「あの……お兄さん……」

 考え込んでいたからか、サーシャ先輩の横に白いローブの人が立っているのにいまさら気づいた。
 って、前に黒ネコを探していた金髪のお姉さんじゃないか。

「ど、どうしたんですか? ハータにいたお姉さんですよね。クヴェリゲンまでネコ探しに来たんですか?」

 お姉さんは軽く口元に手を当て、柔らかい笑みを浮かべる。

「フフ。そうです。ハータでお会いしましたが、もうネコは見つかりましたよ。ここへはお兄さんにお話しがあって来ました」

 俺に話?
 なんだろう?
 金髪お姉さんは少し息を整え、

「お話の前に、自己紹介がまだでしたね。わたくしはアリアと申します。聖ユリス様に仕えるプリーストをしております。以後よろしくお願いします」

 ペコリとお辞儀をするアリアさん。
 俺のまわりには数少ない、まともな人だ!
 俺は思わず立ち上がる。

「こ、こちらこそ。よろしくお願いします。俺はエルクといって、冒険者してますです」

 すこし噛んだ。
 俺は慣れてないお姉さんと話すのは緊張するんだ。
 アリアさんはお上品に笑っている。

 サーシャ先輩は「なーにビクビクしてんのよ」といい、アリアさんに席をすすめて仕事へ戻っていく。
 アリアさんが席に座ったので俺も座る。

 ハティとリリアンも軽く自己紹介をする。
 ハティは奴隷をしていると言ったが、特に表情を変えずに挨拶を返すアリアさん。
 聖ユリス教は奴隷に反対のはずだが、アリアさんは普通の信者と違うんだろうか?

 改めて、アリアさんが話を続ける。

「実はご相談がありまして、わたくしをエルクさんのパーティに入れていただきたいのです」
「えっ!? 仲間って俺たちと一緒に冒険者になりたいんですか?」
「はい。そうです。先日のハータでのご活躍を聞いたのですが、どうやらプリーストがいらっしゃらないようですね。なので、わたくしでお役にたてることがあると思いましてここに参りました」

 俺たちも有名になったもんだな。
 正直ありがたい。回復魔法が使えるプリーストは欲しい。
 しかもそれが綺麗なお姉さんなら、なおさら欲しい。
 とても仲良くしたい。

 俺は仲間と相談すると言って、アリアさんに席を外してもらう。

「聞いてたか? 仲間にしようぜ」

 俺はすぐに提案する。
 ハティはなぜかムスッとしている。

「あーはいはい。エルクはあのお姉さんが好きなんだもんね。別にいいんじゃないの? 仲間にして毎日乳繰り合ってなさいよ!」
「おいおい。なに怒ってんだよ。好きかどうかの話なんてしてないだろ? 回復役が増えたら楽になるから仲間にしようぜって話だろうが」
「だーかーら。私は反対しないってことよ。賛成もしないけどね!」

 なんかめんどくせーこと言ってんな。
 ま、いいや。

 リリアンは「ふむ」と言った後。

「私も反対はしません。そもそも、私のサファイアちゃんがいれば誰もケガすることはないでしょうからね。それこそ、エルクのセクハラに耐えてもらう仕事しか役割が無い気がしますよ?」
「んなわけあるかい! セクハラなんてしねーわ。俺はお姉さんに嫌なことはしない主義だ」
「全く。どの口が言うかと思えば……。私をおんぶしてるときに、胸や足をいやらしい手でさんざんもてあそんでるじゃないですか」

 こいつ、寝てるときも少しは意識があるのか?
 って違う。

「もてあそんでねーわ。背負いなおしたりしてて、たまたま当たっただけだ。そもそも俺はお姉さんが好きなんであって、リリアンみたいなお子ちゃまに興味ねーんだよ!」
「なんですとー! 来年の今頃に後悔しても遅いですよ。最近はハティにおっぱい育ってきたねって言われてるんですからね!」

 まぁ、おっぱい育ちは、わからんこともない。
 最初の頃のように肋骨が直で当たってる感は無くなってきてると思う。
 たくさんごはんを食べてるからかな?

 俺が黙り込んだのをハティが指さして大声を出す。

「あー! エッチなこと考えてる!」



 ――――



 この後、俺がどれだけエロいかの話が盛り上がり、アリアさんをかなり待たせてしまった。
 アリアさんへ「すみませんすみません」と謝った後、パーティに加わってもらうよう言う。
 とりあえず明日は簡単なクエストを受けることになった。

 でもさ。
 アリアさんが俺と話すとき胸を隠すようなしぐさをしてたけど、たぶん俺の気のせいだよな?

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