儀式4
「あはは、乙女が気が強いひとなのかな?」
プラチナブロンドの髪の毛を揺らして騎士が言った。
気が強いと言われた事は無い。
けれど、止めなければと思った。
「まあいいや。挨拶はできたから僕は今日はこれで失礼するよ!」
手を振りながら白い竜だと名乗った騎士は部屋から出て行ってしまう。
「なんだか、嵐のような人でしたね……」
私がそう言うとマクスウェルが、ふっ、とふき出した。
彼を儀式にと指名してから初めての対面だったとそこで気が付く。
それに子供だ子供だと殊更強調されていることも気になった。
それに子供だと言われているのに謁見のあの場にいたことも。
「あ、あの……、お茶など一緒にいかがですか?」
名前を呼ぶことはこの国では特別な意味を持つ。
彼の名前は知っているけれど呼ぶべきでは無いのだろう。
家門の名も知らない。
子供という事は騎士ではないので卿と呼ぶのも違うのだろう。
そういう時に何と呼んだらいいのか。メアリとシェアリに聞いておけばよかった。
マクスウェルはきょとんと私を見た後「私でよろしければご一緒いたします」と丁寧に言った。
あの時の様な打ち解けた言葉遣いはもうしてもらえないのかもしれない。
してもらえないという考え方はおかしいと思い直して、それからメアリにお茶の準備をお願いした。
◆ ◆ ◆
マクスウェルはお茶を飲むときのマナーも美しかった。
私の国で言うと少なくとも大貴族を思わせる優雅な所作。
子供扱いをされていることについて、聞くのがマナー違反になるのかが私には分からない。
「赤き竜と、白き竜がこの国にはいるのですか?」
「建国の星が赤き流星と白き流星にございます」
控えていたメアリがそう私に伝えてくれる。
「白き竜は彼の様にプラチナブロンドの髪をしていて、赤き竜は私の様に赤毛の者が多いですよ」
マクスウェルが言った。
赤き竜に気を付けてという言葉が蘇る。
あの騎士はマクスウェルに気を付けてと言っていたのだろうか。
私はこの国で彼より赤い髪の毛のひとを見ていない。
国主と言われていたひとも茶褐色の髪の毛をしていたがもっと黒ずんだ茶色だった。
そもそも、あの騎士の言うことを信じていいのか分からない。
「それ以外の方は?」
「そのどちらでも無い派閥だよ」
この国は王がいないからそれに封ぜられる伯もいない。
最初の流星の一族の特徴を持つものとそうでないものがいるだけなんだよ。と当たり前の様に言われてしまって困惑する。
そんなもので国は治まるのだろうか。
メアリとシェアリは真っ黒な髪の毛をしているから赤い竜でも白い竜でも無い。
「ではあなたの事は赤き竜とお呼びすればいいのですか?」
私が聞くとマクスウェルは「なりません!」と大きな声で言った。