③
「まず本屋に行くんだったな」
リゲルが言った。そのとおり、向かうのは街でも一番大きな本屋だ。
「うん。今度の試験が外国語なの。教科書よりもうちょっと詳しいのが欲しくて」
「勉強熱心だな。良いこった」
ライラの返事にリゲルは、ふっと笑ってくれたものの、ライラはちょっと申し訳なくなった。
中等科卒業間近な自分とは違って、リゲルは初等科しか出ていないのだ。彼がもしもっと勉強したい、と思っていたのであれば、こんなことは見せつけになるのかもしれなかった。
でも彼は笑ってくれたので、良いことにする。割り切りのいい彼のことだ。うじうじ引きずっているようには思えない。
話した通り、本屋で教材を見て、わかりやすそうな参考書があったのでそれを購入した。
そのあとは雑貨屋。新しい便せんや封筒が欲しかったのだ。
結婚した、従姉妹のお姉さん。結婚して夫となった男性と、少し遠い場所へ越してしまった。なので手紙を書こうと思ったのだ。
今まで使っていたものは残り少なかったし、もう少し洒落たものが欲しかった。大人っぽくなったと言ってもらえたので。それにふさわしいようなお手紙を書かなければ、と。
そのあとは食器屋を少し見た。母が「新しいココットがほしいわね」と言っていたのだ。寒くなるのだ、温かい料理を作るのに必需品。
ココットは、ちゃんとしたものを買おうと思えば少し値段が張る。だから今日は偵察のつもりだった。良さそうなものがあったなら、母に伝えて改めて買い物に来るつもりだったのだ。
目星をつけたのは、深緑の小型のものだった。前菜とする料理に向いているだろう。
これ、お母さんに今度教えてあげよう。
そんなふうに考えて、見てくれた店員さんに、「ちょっと考えてみますね」と言って、店を出たのだった。