②
着替えも済んで、姿見にオレンジ色のドレス姿の自分を映しながら、ライラはあのときもらったピンクのブーケを思い出す。
次の花嫁さんは、貴女。そういう意味を持ったブーケ。
でも嬉しいような、ちょっと寂しいような、だ。想うひとはまだ、花嫁さんになれるどころか恋人でもありやしない。
いつかはこんなブーケを持って、リゲルの隣に居られたらいいのに。オレンジ色のこのドレスじゃなくて、純白のドレスで。そんなことはまだ夢でしかないけれど。
「ライラ? 入っていいか?」
まさにそのとき、こんこんとドアがノックされてリゲルの声が聞こえて、ライラは喉から心臓が出るかと思った。想っていたことを見透かされたようだったので。
やだ、こんなのまるで新婦さんを見に来た新郎さんのようじゃない。
そんな妄想をしてしまって、自分に恥じ入った。
「い、いいよ」
でもリゲルにこのドレスを見てもらいたいとは、母と選んで買ってもらった当初から思っていたのでとても嬉しい。綺麗だと言ってくれるだろうか。
「お邪魔します」
律儀に言われて、ドアが開く。リゲルも普段より少しかっちりとした格好をしていた。普段着の部類ではあるだろうが、タイトなパンツにベストといったスタイルだ。
こういう格好をすると、いくら童顔であろうとも立派な大人にしか見えない。ライラはそういう意味でもどきどきしてしまう。
「おお、綺麗だな」
ライラの晴れ姿を見たリゲルは目を丸くした。その様子は本気でそう思ってくれていることを如実に伝えてくれて、ライラの胸を熱くした。おまけに多分この顔は、「想像以上に良い」と思ってくれているときの表情だ。
「お前、いつのまにか大人になってたんだな」
感嘆の声で言われた。ライラは勿論膨れる。
「ちょっと! 子どもだと思ってたの!?」
「や、そうじゃないが」
ライラの言葉を一旦否定したものの、リゲルはちょっと言い淀む。ライラをしっかりと見ていた視線をそらして、ちょっと横へやった。
「なんつーか……色っぽくなった、っていうか?」
「……えっ」