④
夜も更けて、湯も使って。
夜着に着替えて、その姿を姿見で映してみて、ライラは、はぁ、とため息をついた。
この夜着はお気に入りだった。ゆったりとした作りのロングスカートのワンピース。着心地も良くて、リラックスできる。
なのに、やっぱり胸元はずいぶん控えめに見えた。いつも以上に。
普段からたまにミアなどにからかわれている。「胸ちっちゃくてかわいいね」などと。それは単に女友達同士の悪ふざけであるので、いつも「ミアなんてちびっこのくせに!」なんて言い返す。だから常に気にしているというわけではないのだけど。
自分にはないものをたくさん、たくさん持っていたひとのこと。ずいぶん久しぶりに思い出してしまった、と思う。
普段は忘れているのに、ことあるごとに、ふっと頭をよぎるのだ。それはリゲルのことを考えたとき、特に彼への恋愛としての気持ちを考えているときであることが多かった。
だって、気になるだろう。
自分でない相手に恋をしていたこと。
おまけに、その相手が自分とまったく違うタイプの女性であるということ。
だから、彼が自分を気にしてくれることはないのでは? なんて不安がそのたびによぎるのである。
胸はコンプレックスだとしても、ライラの体型としての良いところは『高めの身長とスタイルの良さ』であるといえた。痩せ形であるのですらりとして見える。ロングスカートやタイト目のスカートが良く似合うのだ。それに年齢以上に大人っぽくも見せてくれる。
顔だってとんでもない不細工ではないと思うし、自分だって綺麗じゃないなんて思わない。
でも、それはもしかしたらデメリットになるんじゃないか、と思うことが時々あった。少なくともこの恋に関しては。
もう少し背が低くても良かったから、胸が大きくて肉付きもいいような、ふっくら女性らしい体型のほうが良かったのでは。そのほうが彼の気に入ったのでは。
そう、あのひとがそうであったように。
そんな、無いものねだりでしかないことを妄想してしまう。