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そんなライラをフォローするように、まだ若い、きっと今回結婚するライラの従姉妹と同年代であろう店員の女性が一着を示してくれた。
「こちらはいかがでしょう。襟ぐりにフリルがありますから胸元にボリュームが出ますし、スカート部分はスマートですから、背のお高いお嬢さんにはお似合いになると思いますよ」
店員によって取り上げられたのはオレンジ色のドレスだったので、ライラはちょっとどきっとした。しかしそれは母の気に入ったらしい。
「あら、綺麗なお色ね。まるでカーネーション」
確かに『襟ぐりのフリル』はぎざぎざのついていながらふんわりした印象の花弁を連想させるし、しゅっとしたスカートは長い茎を示しているようであった。
「ええ、御髪(おぐし)のお色とも良くお似合いになると思いますよ」
確かにオレンジ色は似合うといわれるけれど、どうしてもどきどきしてしまう。
彼がよく身に着けている色だから。リゲルが良く選ぶ色だから。
「いいじゃない。ライラ、これ、着てみなさいな」
「……はい」
そして着てみたドレスは自分で見てみても似合う一着であった。
襟ぐりのフリルはほどよいボリュームで、小さな胸をあまり目立たなくしてくれるし、スカートは細めでスタイルを良く見せてくれる。そしてドレスのオレンジが、ライラの髪の淡い水色とも良いコントラストになっていた。店員の女性の見立ては実に正確だったらしい。
かわいい、似合う。
試着室で鏡を見たとき自分でも思って嬉しくなったうえに、試着室を出て、着たところを見せると母も満足げな顔をした。
「とても似合うわ。スタイルよく見えるじゃない。これにしましょうか?」
「うん! 私、これがいい」
ライラも嬉しくなってしまい、ドレスは比較的あっさりと決めることができた。
決まったドレスは丁寧に畳まれて、紙に包まれて、そのうえから袋に入れられる。その間に母が会計をしてくれた。綺麗なドレスに決まってうきうきしていたけれど、待つ間に目立つように飾ってあったドレスが目に入ってライラはちょっと目を細めてしまった。
それは純白のドレス。ウエディングドレスも扱っているのである。