③
客室でメイドにドレスを脱がされて、メイクを落とされて、お風呂に入れられ髪も体も洗われたが恥ずかしいどころではなく、サシャは始終ぽぅっとしていて、気が付いたときには「ごゆっくりおやすみくださいませ」と就寝前のホットミルクを出されていた。
レースのネグリジェ。
昨日から過ごして多少は馴染んだ部屋。
日常とは程遠いが、パーティーより数センチは日常寄りだろう。
状況をやっと落ち着いて考えられる状況になって、サシャは思わず顔を覆っていた。
顔が熱くてならなかった。きっと赤く染まっている。
あれはきっと、ロイヒテン様のおきもち。だって、『彼女を黙らせるためではあったけれど』『勿論それだけじゃない』と言ってくださった。それに続くのなんて、自分を想う言葉であってくれるに決まっていて。
もう、婚約者のふりどころではなかった。恋人にもなれないなんて諦めるどころではなかった。
国王陛下のご挨拶のタイミングによって切られてしまった、言われかけた言葉の続きが気になって仕方がない。
言ってほしい、と思った。
一体あの続きはいつ聞けるのだろう。
サシャが悶絶するうちに、ホットミルクは冷めきっていた。
月も真上をすっかり越してしまったところで、眠らなくてはとなんとかベッドに潜り込んだものの、今夜こそ眠れるはずがない。
抱き寄せられた感触。
くちびるへのキス。
それが何度も何度もリピートされて、そのたびにサシャはベッドの中を転がった。
朝日が差し込む頃には、サシャが暴れまわったせいで、フリルたっぷりのシーツはぐしゃぐしゃになっていた。