①
しかしそのネックレスは、早々に悲しい気持ちをライラにもたらすことになる。
帰って早速つけてみて、ライラはとても嬉しくなった。ミアの言った通り、髪の先の色とよく合って両方を引き立ててくれる色合いだったのだ。
おまけにどちらかというと上品なものであったので、大人っぽい服を着るときに似合うかも、と思った。そう思って、試しにと学校に行くときの大人しめの服に合わせてみたのが間違いだったのだ。
学校でライラのそれを見たミアもシャウラも、そしてほかの友達も褒めてくれて、ライラはとても満足した。
似合うものを見つけられたことに。
褒められたことに。
そして思った。今度リゲルにも見てもらおう、なんて。リゲルに褒められれば余計に嬉しいだろう。そんな画策をしていたのだけど。
「……あっ」
授業の終わった放課後。先生の手伝いをしていて資料を運んでいたときのことだった。
屈んだときにネックレスが揺れて、引き出しの端に触れてしまったらしい。声を出したときには既に遅かった。
そこへ引っかかったネックレスは、ぱちんと嫌な音を立ててライラの首元からするりと逃げてしまった。チェーンが細くて繊細だったためだろう。僅かに引っ張られただけで切れてしまったのは。
嘘、今日おろしたばかりなのに。
ライラはしばし呆然として、落っこちたネックレスを見下ろした。すぐに胸が締め付けられるように悲しくなる。
気に入ったのに。
嬉しかったのに。
こんなに早く駄目にしてしまうなんて。
自分が酷い馬鹿のように感じて、涙ぐみそうになった。子供であったなら泣きわめいていただろう。今日、先生の手伝いをしていたのは自分一人であったので、友達に泣きごとすら言えなかった。
でも仕方がない。不注意だった自分がいけないのだ。悲しくなりながらも、せめて家に飾っておこうかな、と思うしかなかった。
落としてしまった、切れたネックレスを拾い上げてポケットに入れる。すっかりしょぼくれてしまって、ライラは先生に「終わりました」と挨拶だけして、肩を落として帰路についたのだった。