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コンビニおもてなし、秋の新商品 その2

 クエビを使ったエビチリを、早速お弁当に仕上げてみました。
 やや辛口な味わいですけど、それがご飯によくあっています。

 試食した魔王ビナスさんも

「あらあら、これはなかなか。濃厚なソースがクエビによくあっておりまして食が進みますわね」
 そう言ってくださった次第です。
 一緒に試食してもらったクエビのエビチリまんも、
「あらあら、これもまたなかなかな美味しゅうございますわね」
 そう言いながら、こちらも美味しそうに食べてくださった次第です。

 僕が元いた世界のエビチリよりも辛さはかなり抑えてあります。
 これは、子供達でも安心して食べられるようにと配慮しているからといいますか……辛みを増してしまうと、この料理を作るアルカちゃんが、試食出来なくなっちゃうんですよね……

 なんといいますか……まだお子様ですから、はい。

 そんなわけで、アルカちゃんがメインで作ってくれるエビチリをメインの味にすることにしました。

 その横で、『辛口エビチリ弁当』として、本来の辛さのエビチリを使用した弁当も準備することにしています。
 こちらは僕が調理を担当することにしています。
 
 アルカちゃんは、
「パパ上様と共同作業アルね。アルカ、嫁姑問題もばっちりアルね!」
 なんか嬉しそうにそう言っていたんですけど……いや、僕は舅であって姑はスアなんだけど……ま、まあいいか。

 そんなわけで、弁当の新商品『エビチリ弁当』『辛口エビチリ弁当』が弁当のラインナップに加わることになりました。
 すると、それを聞きつけたティーケー海岸のアルリズドグさんが、
「こうしちゃおられねぇ! せっかく店長さんがクエビを売ってくださろうとして頑張ってくださってるんだ! アタシ達も応援するぜ!」
 そう言いながら、転移ドアをくぐって大挙してコンビニおもてなし本店へとやってきてくださいました。

 アルリズドグさんと一緒に、アルリズドグ商会の皆様がおいでになられています。
 アルリズドグ商会の皆様を見ていますと、どこかカマキリに似た方や、アルリズドグさんをメカにしたような方や、第四形態まで変化しちゃいそうな人や、音速で飛んじゃいそうな人とまぁ、どこか異世界怪獣総進撃といった言葉が無意識に脳裏に浮かんでしまうのですが……そんな皆様が、全員エビの着ぐるみを着ておいでなんですよね……あ、お一人だけ着ぐるみを着ないでもエビの姿の方もおいでです、はい。
「店長よ! アタシ達が各地のコンビニおもてなしに行って、この格好で販促してやるぜ!」
 アルリズドグさん自らもそう言いながら、巨大なエビの着ぐるみを身につけておられました。

 と、まぁ、そんなわけで、急遽アルリズドグ商会の皆様によります試食イベントまで決定した次第です、はい。

 ちなみに、そんなアルリズドグさん達にも、このエビチリ弁当とエビチリまんを試食して頂きましたところ
「ん!?」
「キュイ!?」
「クァ!?」
「ギー……!?」
「キュピー!?」
 皆様、一斉に歓喜の声……と、思われる声をあげながら、一気に試食を食べ尽くしてくださった次第です。

 どうやら、みなさんにも気に入ってもらえたようですね。

◇◇

 そんな中、コンビニおもてなし本支店ならびに出張所におきまして、本日からエビチリ弁当と、中華まんの販売を開始することにしました。

 中華まんの蒸し器の機械は、コンビニおもてなし本店の倉庫の中に保存してありますので、それを各本支店に配布することにしています。
 大半の店員は昨年もこの機械を使用していますので使用方法は熟知しています。

 唯一、この機械をはじめて使用するテトテ集落のミミィにだけは、個別に事前指導してあります。

 中華まんは、タテガミライオンまん・デラマウントボアまん・エビチリまんに加えまして、ケロリン製のあんまんもラインナップに加えた次第です。和系のスイーツを得意としているケロリンだけに、あっさりとあんまんの技法をマスターしてくれたんですよね。
 僕が
「ケロリンのおかげでもう一品増やせたよ、ありがとう」
そう言うとケロリンは、
「め、め、め、めっそうもございませんわぁ、す、す、す、すべて店長様の指導方法が素晴らしいからでございますわぁ」
 そう言いながらその場で土下座をしていきました……なんというか、ホントヤルメキススイーツのみんなって、どうしてこう土下座体質になっちゃうんでしょうかねぇ……

 今朝の各本支店ならびに出張所への荷物と一緒に中華まんの店頭販売用の蒸し器も各魔法袋につめていったのですが、その作業風景を見た荷物運搬係のヴィヴィランテスが
「なぁにぃ? まぁた魔法袋が重くなったのぉ? ほんっとハニワ馬使いが荒いんだから」
 ブツブツ言いながら、準備が出来た各店用の魔法袋を背に乗せていた次第です。

 後でスアに確認したところ……魔法袋に詰めてしまえば、魔法袋そのものの重さはほとんど変化がないそうなんですけどね。

 で、まぁ、そんなヴィヴィランテスに僕は、
「いつも済まないねヴィヴィランテス。悪いけどよろしく頼むよ」
 そう言いながら頭を下げました。
 すると、ヴィヴィランテスは、
「あんたね、よーっく覚えて起きなさい。アタシじゃなかったらこんな作業をやるハニワ馬なんているわけないんだからね、しっかり感謝するがいいわ!」
 そう言いながら、転移ドアに向かって歩いていきました。

 すると

 その途中で一度足を止めたヴィヴィランテス。
「……何かあったら遠慮無く相談してもいいんだからね!」
 そう、一言付け加えてから、転移ドアの向こうへと消えていった次第です。

 なんといいますか、ホント頼りになるツンデレなんですよね、ヴィヴィランテスってば。

◇◇

 こうして、各地のコンビニおもてなしの店頭に、エビチリの弁当と、中華まんの機械が並んでいきました。
 
 ちなみに、中華まんですが……
 一度蒸し上げた中華まんを魔法袋の中に保存してありますので、長時間機械の中に残っていて、べちゃべちゃになってしまうということがありません。
 この機械は、新規に中華まんを蒸し上げるためと、お客さんに『中華まんあります』を印象づけるために置いている次第です、はい。
 ちなみに、中華まんが魔法袋の中に保存されていて、新規に蒸す必要もない……つまり蒸し器の中が空っぽの時には、機械の後部にありますボタンを押すと、投影魔法が作動しまして、機械の中に中華まんが満載になっているように見えるよう細工をしてある次第です。
 この細工がスア製なのは言うまでもありません。

◇◇

 コンビニおもてなし本店の営業が開始となりました。

 お店に、常連の皆様が一斉になだれ込んでこられます。
 開店直後の店内は、朝ご飯を求める皆様でいっぱいになっていきます。
 そのため、弁当コーナーにお客様が殺到していくわけです、はい。

 そんな弁当コーナーの少し脇に、アルリズドグさんが立っています。
「さぁ、今日から発売のエビチリ弁当はいかがだ、おい! ティーケー海岸でとれとれピチピチなクエビを使った弁当だぜ!」
 アルリズドグさんは豪快に笑いながら試食を配っています。
 女性とは言え、かなり筋肉質で大柄で、さらにやや強面なアルリズドグさんに迫られたお客さん達は、その迫力に気圧されながら試食を受け取って行くのですが……そんな皆様が試食を口になさると、
「ん!?これは美味い」
「うん、美味しいぞ」
「これを使った弁当はどれだ?」
 と、一斉にエビチリ弁当へ殺到していかれたのです。

 そんな試食組の動きに、他のお客さん達も釣られてエビチリ弁当を手にしていかれます。

 そんな皆様がレジに並ぶと、そこには中華まんの蒸し器が鎮座しているわけです。
 しかもそこには、タテガミライオンだの、デラマウントボアだのと、コンビニおもてなし弁当で人気のお肉の名前を冠している商品がずらっと並んでいるわけです。
「あ、このタテガミライオンの中華まんも一緒に」
「俺はデラマウントボアまんを2つだ」
 そんな感じで、弁当のついでにこの中華まんを購入なさるお客様がどんどん増えている次第です。
  
 そんなお客様に、僕は
「はい、ありがとうございます!」
 満面の笑顔で商品を袋詰めしていました。
 
 秋の新商品ですが、こんな感じでなかなかな滑り出しですね。

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