②
「頑張ってね」
「ああ。ここからが俺のスタートだけど、いつかは花のたくさん咲く綺麗な庭を作るんだ。japan風の庭ってのも興味があるな。池とかオブジェみたいなのとかもあるんだと」
理想の庭について語るときのきらきらした目でリゲルは話した。遠い国の、しかし美しいと定評のある庭についても付け加える。
「お、そろそろ集合だ。じゃ、行ってくる」
「うん! あとでお話聞かせてね」
ちょっと寂しく思いつつも、出発前に話ができたことを嬉しく思う。あとでお屋敷のお仕事の話を聞くのも楽しみだ。
「あのね、これ、応援にあげる」
ライラがポケットから取り出したのは、持ってきていた一輪の花。庭にあったものを摘んだだけだが、綺麗だと思ったのだ。
色は淡いオレンジ色。なんの花かは知らなかった。ただ綺麗だと思って朝、摘んできたのだ。
「お、ありがとな。……ぷっ」
リゲルは嬉しそうにそれを受け取ってくれたのだけど、ちょっと噴き出した。
「くくっ、ポケットに詰めてきたんだろ。歪んでる」
「えっ」
確かにリゲルの手の上に乗った花は、花びらが歪んでしまっている。
綺麗だと思ったのに。
どきっとして、すぐに悲しい気持ちになりそうになったけれど、リゲルはそんなライラの気持ちを吹き飛ばしてくれた。そっと手を伸ばして頭を撫でてくれる。
「や、形なんかよりライラがくれたって気持ちが大事だから。嬉しいよ」
言われてほっとした。
喜んでくれたことに。
そして自分の気持ちを大事だと言ってくれたことに。
まだ幼かったライラは単純なもので、すぐに満面の笑みに戻ることができた。
「学校抜けてきたんだろ。見つからないように帰れよ」
その表情と様子の変化がおかしかったのか、くす、と笑ってリゲルはライラの髪をもう一度撫でた。低めの背に似合わない、案外しっかりした手で。
「そんなヘマしないから!」
膨れたライラに、はは、と笑って。リゲルは初の、きちんとした仕事へ向かっていった。