コンビニおもてなしの各部門リーダー その2
会議を終えた僕達は、コンビニおもてなし6号店の2階で簡単な宴会を行っていきました。
「じゃあみんな、これからもよろしくね」
皆が席についたところで僕はそう言うとグラスを掲げました。
そんな僕に合わせて、みんなからも
「こちらこそ!」
「よろしくお願いします」
「これからもよろしく!」
そんな声があちこちから聞こえてきました。
「じゃあ乾杯!」
僕の乾杯の音頭と同時に、会場内に
「「「かんぱーい!」」」
みんなの大きな声と、グラスが重なり合う音が響き渡っていった次第です。
お酒を飲む人
料理を食べる人
皆、思い思いに宴会を満喫し始めました。
僕も席に座ると、みんな同様にグラスの酒を口に運んでいきました。
ちなみに、僕が口にしていますのは当然タクラ酒です。
スアビールも好きですけど、やはり自分の名前がついている酒ですしね、かなり愛着がわいているといいますか……それに、このタクラ酒、決して不味いわけではありません。
味はいいんです、味は……
このオザリーナ温泉郷では結構人気になってきていますしね、このままジワジワで構いませんので売れていってほしいと切に願う僕です、はい。
この日の宴会はあくまでも新しい組織分けの決定のお祝いといいますか、みんなに
『これからもよろしくね』
そんな意味合いを込めた宴会なわけです、はい。
そんな宴会ですので、僕は会議に参加していなかった方々を4名ほど追加でお呼びしていた次第です。
ルア工房のルア
ペリクドガラス工房のペリクドさん
スアの使い魔の森のタルトス爺とヴィヴィランテス
以上の4名です。
ルアには、武具や調理器具の他に、コンビニおもてなしで使用している弁当の容器などの製造でお世話になっています。
正直、ルアが僕の要望に対して柔軟にあれこれ対応してくれたからこそ、コンビニおもてなしがこんなに早く軌道に乗れたと行っても過言ではありません。
ちなみに、ルアの片腕とも言える存在のパラランサくんは、コンビニおもてなしでスイーツを作成していますヤルメキスの旦那さんです、はい。
「店長、こっちこそこれからもよろしくな!」
ルアは上機嫌な様子でお酒のグラスを口に運んでいます。
子供のビニーは、今日は旦那のデュラハン、オデン六世さんにお願いしているそうです。
そういえば、オデン六世さんってば、ガタコンベの衛兵の仕事をしている際にルアに一目惚れして、コンビニおもてなし本店から、その向かいにあるルア工房の中で作業しているルアのことをじーっと見ていたんですよねぇ……それがきっかけになって、今では夫婦になって子供まで出来て……コンビニおもてなしがその縁を取り持ったといえなくもないわけです、はい。
そう考えると、ちょっと嬉しくなってしまいますね。
その横ではペリクドさんがお酒を飲んでいます。
とはいえ、どこかソワソワした様子です。
…コンビニおもてなしで扱っていますガラス製品全般を作成してくれているペリクドさんなのですが……そろそろ新しい子供さんが生まれそうなんですよね。
「そんな状態でしたら無理しなくても」
僕はそう言ったのですが、
「コンビニおもてなしさんのお誘いだろ? 断るわけねえじゃねぇか」
ペリクドさんは笑顔でそう言ってくれた次第です、はい。
とはいえ……4号店のクマンコさん並に大勢の子供さんを抱えておいでのペリクドさんなのですが、いまだにラブラブなご様子ですし、なんか生まれてもまたすぐに次の子供さんが……そんな気がしないでもありません。
そんなルアとペリクドさんの横では、大きな甲羅を背負っているタルトス爺と、ハニワ馬姿のヴィヴィランテスが酒を飲んだり食べ物を食べたりしています。
この2人といいますか2匹といいますか2頭といいますか……とにもかくにも、この両名はともにスアの使い魔です。
スアは、この世界でも希少とされている亜人達を使い魔にして保護し、自分が管理している小型の異世界『スアの使い魔の森』で暮らしてもらっています。
保護してもらっていた使い魔達は、スアへの恩返しとばかりにコンビニおもてなしの商品の生成などを頑張ってくれています。
主な商品といたしましては、スアビール・タクラ酒・パラナミオサイダーといった飲み物類や、ウルムナギの養殖事業などですね。
スアの使い魔の森の最高齢にして長的存在のタルトス爺は、この作業の陣頭指揮をとってくれている存在です。
タルトス爺があれこれ尽力してくれたおかげで、スアビールの製造量が今では最初の頃の30倍近くになっています。
このままあちこちの辺境都市に売り込みを……って考えたこともあったんですけど、今のコンビニおもてなしでは、ナカンコンベにありますコンビニおもてなし5号店でのスアビールの売り上げがすさまじくてですね、タルトス爺が頑張って増産してくれた分のスアビール全てがここで消費されている計算になっている次第です、はい。
そんなわけで、おもてなし商会を通してあちこちの辺境都市に輸出することが出来るようになるのは、まだ先のようなんですよね、残念ながら。
「まぁスア様の旦那様、お任せくだされ、またすぐに増産体制を整えますでな」
タルトス爺はそう行って笑ってくれました。
年はとっていますけど、ホント頼りになります。
その横で、ハニワ馬状態のまま四つ足で立ち、お膳の料理を貪り、お酒のグラスを器用に咥えては、首を持ち上げてその中身を口というか、ハニワ状態の口部分にしみこませている感じのヴィヴィランテス。
コンビニおもてなし各支店に荷物を運搬する役目を一手に担ってくれているヴィヴィランテスなのですが、
「まったく、ほんとハニワ馬使いがあらいんだから」
と、毎朝ブツブツ言っているのですが
今まで一度として遅刻したことはなく、
今まで一度として運搬拒否をしたこともなく、
今まで一度として配送が遅れたこともない……と、
本当に頼りになるといいますか、ある意味コンビニおもてなしの経営の土台をガッチリ支えてくれている存在といえるわけです。
各店で弁当などが品切れになり、臨時で緊急に搬送が必要になることが多々発生するコンビニおもてなしなのですが、ヴィヴィランテスはその都度
「ったく、まぁたアタシの世話になりたいっての?」
呼んでもいないのにそう言いながら現れまして、
「ほんっとハニワ馬使いが荒いんだから……」
そう言いながら、荷物を運搬してくれるんですよね。
以前一度、あまりにもヴィヴィランテスが
「ハニワ馬使いが荒いんだから……」
というもんですから、タルトス爺に相談して他の使い魔にも運搬作業を手伝ってもらおうとしたことがあったんですけど、するとヴィヴィランテスってば
「ぶ、ぶぁかじゃないの!? この仕事はこのヴィヴィランテスにしか出来るわけないじゃないの! 他の使い魔なんて不要よ!」
「え、でも……いつもヴィヴィランテスに苦労を……」
「あーた! つべこべ言うんじゃないわよ! とにかく、この仕事はこのヴィヴィランテスの物なのよ! 他に誰にも譲らないんだからね!」
と、まぁ、なんだかよくわからないツンデレを発揮されまして、その結果未だにこの作業はヴィヴィランテス一人にお願いしている次第です、はい。
「ほんっと、ハニワ馬使いが荒いんだからねぇ、アンタってば」
僕がお酌をしていると、ヴィヴィランテスはそう言いました。
そんなヴィヴィランテスに僕は
「ホントに助かってるよヴィヴィランテス。いつもありがとう」
そう言いました。
するとヴィヴィランテスは
「ふん……まぁ、わかってるんならそれでいいのよ、それで……まぁ、その謙虚な姿勢をこれからも継続するっていうのなら、これからも頑張ってあげなくもないんだからね!」
ヴィヴィランテスはそう言うと、僕が自分の席に置いていたグラスを咥えて僕に手渡し、そこにお酒を注いでくれました。
そのお酒は、ちゃんとタクラ酒でした、はい。
ホント、ヴィヴィランテスってばいいヤツなんですよね。
そんな、皆も加えた宴会は、みんなの楽しい笑い声とともに続いていきました、
僕の隣の席に座っているスアも、そんなみんなを見回しながらどこか楽しそうです。
超絶人見知りなスアですけど、コンビニおもてなしのみんなと一緒だと、それを発症しなくなっているんですよね。
これってあれでしょうか……コンビニおもてなしで働いているみんなの事を家族同然と思ってくれているからなのかもしれませんね。
みんなに一通りお酌して回ってきた僕は、自分の席に座ると、
「スア、これからもよろしくね」
笑顔でそう言いました。
そんな僕に、スアは
「……うん、まかせて」
笑顔でそう言うと、右手の親指をグッとたてました。
そんなスアの笑顔が、僕は最高に大好きです。