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洞窟探検

「どうしたサラ!お前の力はそんなもんか!」
「なにをー!なまいきなー…えいっ!」

 今俺とサラは戦っている。といっても本気で争っているわけではない。体がなまらないように、時折こうして組手をして互いに鍛えているのだ。
 サラがアッパーをくりだしてきた。俺は後ろに体をずらし、攻撃をかわすと手刀で反撃した。サラは俺の手刀を受け止め、腕を持ち一本背負いをしてきた。俺は地面にたたきつけられた。間髪いれずにサラが俺の顔面めがけてパンチを放った。俺は顔をずらし、サラのパンチをよけると同時に飛び起きた。俺は上段回し蹴りを打ったが、サラは身をかがめて、俺の腹にパンチをあびせた。

「うっ…やるなサラ…腕をあげたじゃないか」
「でしょ!今日はこのへんにしておこうかしら!さぁごはん、ごはん」

 俺達は弁当を食べ始めた。やはり、思いっきり運動して腹をすかせている時の食事は格別だ。なんの変哲もないただの弁当なのに、高級レストランの料理を食べているかのような錯覚に陥る。
 弁当を食べ終わると再び俺達は歩き出した。ゴツゴツした岩場なので歩きにくかったが、砂漠に比べればたいした事はない。足をくじきながら進んでいると、妙な洞窟を発見した。相当古くからある洞窟のようでコケがびっしり生えている。

「洞窟を見ると中に入りたくなるよな」

 俺はウキウキしながらサラに言った。

「そうね、冒険者たるものそこに洞窟があれば入らないわけにはいかないわ」

 俺は魔法で火を出し、洞窟の中に入った。真っ暗なので火で照らされてる自分の周りしか見えないがなんとか注意しながら前に進んだ。

「キャア!」

 サラがいきなり悲鳴をあげた。

「どうした?サラ」
「今、私のおしり触ったでしょ?」
「え?何もしてないよ」
「アロルしかいないでしょ!エッチ!」

 バチンとほっぺをたたかれた。なんで何もしてないのにたたかれなきゃいけないんだ。俺はブツブツ文句を言いながら歩いた。
 洞窟の中は分かれ道がいくつもある。相当長い洞窟だ。俺は帰る時迷わないように分かれ道には必ず目印をつけた。右に行ったり、左に行ったり、下におりたりしながら、最深部を目指した。なかなか冒険者の心をくすぐる洞窟で、俺達はワクワクしながら歩いていた。

「こういう洞窟ってさぁ、罠とかありそうだよな、サラ」
「やだ…変な事言わないでよ」

 サラがそう言うといきなりどこからかサイレンが聞こえてきた。そしてそれと同時に変な声がした。

「侵入者発見。ただちに排除する」

 その声が聞こえたかと思うといきなり目の前に岩でできたモンスターが現れ、襲いかかってきた。

「やる気のようだな…しょうがない、メサオ!」

 炎がモンスターの体を取り巻いた。しかし炎攻撃をくらっても岩のモンスターはへっちゃらのようだ。

「なんだコイツ…全然効いてないようだ…」
「どいて、私がやる!ガトリングシャワー!」

 サラは水魔法で攻撃した。しかし、サラの攻撃は全てモンスターの体をすりぬけたように見えた。
 モンスターは大きくふりかぶり、俺達めがけて拳をふりおろしてきた。

「キャア!」

 サラは思わず目をつぶった。
 しかし、モンスターの攻撃は俺達の体をすりぬけてしまった。

「あれ?当たらないぞ…なんでだろう?」

 俺はモンスターに近寄り触ってみようとした。しかし、やはり手がすりぬけてしまうのだ。

「これ幻だ!びっくりさせやがって」

 俺は胸をなでおろした。

「なんだそうだったのか、よかった」

 サラも安堵している様子だ。

「でもなんでこんなものが仕掛けられてたんだろう?」

 俺は首をかしげた。
 もしかしたらこの辺りに何か重要な秘密が隠されているのかもしれないと思い、調べてみたが何もなかった。仕方なく先に進む事にした。大きく曲がったカーブを進むとその先はなんと行き止まりだった。

「あれ、行き止まりだ!仕方ない…戻ろうか?」

 俺はガッカリしながら言った。

「ねぇ、あれなんだろう?」

 サラは丸い突起物を指さして言った。よく見るとその突起物の部分だけ周りとは明らかに違う。岩石というよりゴムに近い感じがした。
 俺はその突起物を押してみた。すると洞窟全体がガタガタと音をたてながら震えだし、道をふさいでいた岩石がパッと消えて通れるようになった。
 どうやら魔法で道をふさいでいただけのようだ。
 さっそく俺達は先に進んでみた。すると遂に最深部らしき場所にたどり着いた。とても広い空間で声がよく響く。歩き回っていると高価そうな宝箱を見つけた。さっきの仕掛けはこの宝箱を守るためのものだったのだろうか?
 俺はドキドキしながら箱の取っ手に手をかけた。

「さぁ、何が出て来るかなぁ…」
「早く早く!」

 サラが俺をせかした。
 俺は一気に箱を開けた。中を見ると古い巻物が入っていた。

「何が入ってるのか楽しみにしてたのに、入ってたのはこの巻物だけか…」

 俺は肩をおとした。

「読めないけどきっとものすごい事が書かれてるんだよ!」

 サラは興奮ぎみに話した。
 俺達は一応鑑定士に見てもらう事にした。もと来た道を戻り、洞窟を出ると近くの町の古物鑑定事務所を訪れて、巻物をみてもらった。

「どうですか?何かわかりましたか?」

 俺は鑑定士に尋ねた。

「これはものすごい歴史的価値の高い物ですよ。詳しくはわかりませんが、どうやら古代兵器の隠し場所について書かれてあるようですね」

 鑑定士は嬉々として語っている。

「そうなんですか、俺達には必要のないものなんで良かったらあげましょうか?」
「いいんですか!?是非頂きたいです!ありがとうございます」

 こうして苦労して見つけた巻物をタダで鑑定士にあげてしまった。どうせ持っていても邪魔になるだけだ、早めに処分した方がいいだろう。
 俺達は用を済ませると鑑定事務所を出て、雑貨屋に入って必要な品物を選んでいた。

「キャア!」

 サラが大声を出した。

「なんだい?サラ」
「また私のおしり触ったでしょ?」
「違うって!俺の手を見て!商品持ってるでしょ」
「えー、じゃあ誰なんだろう…周りには誰もいないし」

 辺りを見回していると男が突然スッと現れた。

「やべっ!魔法がきれちまった!」

 男はそう言うと走って逃げだした。

「今の見たかサラ、きっと今の男が透明になってサラのおしりを触ったんだ。洞窟で触ってきたのもきっと今の奴だよ!捕まえて白状させよう」

 俺達は男を追いかけた。なかなか追いつかなかったが徐々に差をつめて、やっと男を捕まえた。

「くそっ!まだ魔力が十分回復してないがしょうがねぇ…」

 男はまた透明になった。捕まえていた俺の手をふりほどき、攻撃してきた。俺はよける事もガードする事もできずに男の攻撃をもろにくらった。

「いてぇっ!ちくしょうどこにいるんだ!」

 男が地面をける音をたよりに大体の場所を勘で攻撃してみたが、あたらなかった。また男が攻撃してきた。今度は左頬を殴られた。続いて腹をけられ、俺は膝をついた。それでも男の攻撃はやまず、頭をおもいっきり殴られた。俺はついに倒れてしまった。
 こんなに攻撃をくらうのは久しぶりだ。やっぱり殴られるというのは嫌なものだな。俺もしかしてここでこの男に殺されてしまうのかな…
 人生を諦めかけたその時!
 男が姿を現した!

「あっ、また魔法がきれちまったー」

 男は急いで逃げようとしたが、俺はすかさず男の足をつかんだ。男は転んで顔面を地面にぶつけた。

「いったー!」
「俺がこのまま逃がすと思うか?」

 俺は起き上がり、思いっきりすごんでみせた。

「ひぇっ、た、たすけて…」

 俺は馬乗りになり、男が失神するまでボコボコにしてやった。ボコボコにしたあとで思い出したのだが、サラのおしりを触った事を白状させるのを忘れていた。

しおり