67章 セカンドライフの住民の生活
一週間後、アカネは情報屋に足を運んだ。
「アカネさん、報酬の準備をします。しばらくお待ちください」
大金を扱う仕事は大変だ。アカネなら責任の重さに、仕事を放棄してしまいそうだ。
マツリがお金の準備を終えたのか、こちらに戻ってきた。
「今回の報酬は1兆ゴールドですけど、100億ゴールドを付与として控除します。アカネさんには9900億ゴールドをお渡しします」
10分足らずで9900億ゴールドというのは、コストパフォーマンスに優れている。こんな仕事ばかりなら、まともに働かなくても生きることができる。
「付与金は条件を満たした住民に、均等に配布されることになります。今回は1人当たり、300万ゴールドくらいでしょうか」
セカンドライフで生活するにあたって、一年で必要とされている金額ではないか。アカネは全
住民の生活を支えたことになる。
「今回の寄付金は、『セカンドライフの街』の平均年収を上回ります。一部の大富豪を除外し
た、平均年収は150~200万ゴールドといわれています」
一年間で200万~300万ゴールドが必要といっていた。収入と支出のバランスが崩壊している。
「平均労働時間はどれくらいですか?」
「平均労働時間は月に240時間くらいですね。300~400時間の労働をする人もいます」
1ヵ月で240時間の勤務で、生計が成り立たないとは。労働者を安くこき使うのが、「セカンドライフの街」のスタンスのようだ。
「アカネさんのおかげで、セカンドライフの住民は快適な生活を送ることができます。本当にありがとうございます」
「お金をもらったあとは、働かなくてもいいんですか?」
「今後1年間における、1ヵ月あたりの平均労働時間が、150時間未満だった場合は没収されます。お金をもらった人は、労働の義務が発生します」
生活保護だけもらって、仕事をしない暮らしは認めないようだ。日本もこの部分については学んでほしいところ。家の中で過ごしているだけの人が、労働している人よりも、裕福な生活をで
きる社会は明らかに間違っている。
「アカネさんのおかげで、ライフバランスは安定するでしょう。お金を稼ごうとするあまり、過労で倒れる人は少なくありませんでした」
強制労働ほどではないものの、人間の体力の限界を超えた労働が行われていた。それを改善できるのは、いいのではなかろうか。
「寄付金に上限はあるんですか?」
「一年間でもらえる寄付金の上限は、400万ゴールドまでとなっています」
生活保護程度のお金は渡すけど、あとは自分で稼ぎなさいということか。楽をして生活をさせるという概念はないようだ。
「付与されたお金は、給料アップにも割り振られます。アカネさんが仕事をすればするほど、全員が豊かな暮らしをできるようになります」
寄付金をもらえるだけではなく、労働環境改善につながるのか。寄付金は二重の意味で、住民にメリットをもたらしている。
「給料アップはどれくらいですか?」
「1憶ゴールドの寄付金で、1時間当たりの所得は3ゴールドアップします。今回は100憶ゴールドなので、300ゴールドの給料アップになります」
元々の給料が少ないからか、高額に感じられる。1時間で300ゴールドもアップすれば、かなり楽になるのではなかろうか。
「アカネさんが仕事をすればするほど、もらえる金額は増えていきます。これからもよろしくお願いします」
人間は一人の力で生き抜くと思っていただけに、腑に落ちない部分もあった。