現世の罪3
『ほう。本当によいのか? 悪役令嬢になったら死ぬかもしれんぞ?』
「悪役令嬢にならなくても、このまま意識を取り戻して現世に戻ってしまっても……死んでるのと同じじゃない」
『現世に戻って一生涯フリーターをしながら罪を償うでもよいぞ。どちらにせよそなたのご両親は死んでしまうがな』
この人本当に私のご先祖様なの!? と、疑いたくなるほど私を試す。
「さっきから何なの!? 私のご先祖様なら私と私の家族を幸せに導いてよ!」
『勘違いも甚だしいのう、わしはそなたの“先祖”であって、“守護霊”ではないからのう。因みにそなたの守護霊は30%しか力を発揮できんけんの、そなたにせめてもの救いで差し伸べておるんじゃ。“導いて”と、他人任せじゃから現世で罪を犯したんじゃろ』
「………………なっ」
『もう一度問おう。“現世”に戻って現世で罪を償うか、“異世界で罪を償う”かどちらにするんじゃ。異世界に行った際は“導いてほしい”だの、自分の欲を全て捨てて償う事に徹するんじゃ。あとはそなたで考えるように。以上じゃ』
今まで目に見えないものは半信半疑だったけど、今何となく神様が分かるような気がする。
確かに、私のこんな考えじゃ絶対に異世界でも何かしらやらかしてしまう。
せっかくご先祖様が出てきてくれたんだ。もっと本気で、私の未来を変えてやる。
「ご先祖様、私異世界に行きます」
ご先祖様は私の真剣な表情から何かを受け取ったのか『うむ』と頷いた。
『では、異世界に送ってやろう』
「はい。よろしくお願いします」
『杖に捕まるんじゃ』
言われた通り細長い杖に捕まると、ご先祖様に高く高く投げられた。
***
「うっ、いたたっ…………」
ドスン、と鈍い音を立ててどこかに落ちた事は分かる。
体の痛みでゆっくりと目を開ける。
見渡すと一面緑の芝生で、ミケ猫がニャーと私を見て鳴いている。
“異世界に行きます”
現世の行いを正す為に自分から言い出した事が今起きている。
ここは異世界だ……
空は青く空気も良い。
自然に恵まれていて異世界だという事を忘れてしまう。
何度も息を吸ったり吐いたり深呼吸をしていると、ミケ猫がまた私を睨んでニャーと鳴いた。
【おい、何してる。早く村に帰るぞ】
…………え、何?
誰か分からない声が私の脳内に響き渡る。
辺りを見渡してもこの場にいるのは私とミケ猫だけで、喋れる人なんていない。
いったい誰が!?
まさか……
「このミケ猫が??」
そんなワケないかとククッと笑いを溢す。
ミケ猫がさっきより怖い顔で私を睨みつける。
【ミケ猫とは何だ!? ミケ猫とは! ケネという名があるわい】
……………そんなワケあってしまった。
今、脳内に響いているこの声はミケ猫の言葉らしい。
ーーーーーどうしよう。笑ってしまったし、何ならこの猫バカにしてしまったし。もう処刑ルート確定だろうか。