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テトテ集落の果物狩り その2

 ネンドロさんにお願いしまして、ここテトテ集落で果物栽培を行っているみなさんに集まっていただきました。

 この集落に長くお住みのお年寄りの方が多いのですが、みなさんの隣には多くの魔法使いの女性が寄り添っておられます。
 見た目では、白髪で白い髭の男性の横に、若々しい女性が仲睦まじく寄り添っている光景になっているのですが……男性陣が平均年齢6,70才なのに対しまして、魔法使いの女性陣の方々の平均年齢はといいますと、およそ100~150才といったところなわけでして……見た目とは裏腹に女性達の方が圧倒的に年上なわけでして……
 ……あれ? なんでしょう……そんな事を考えていたら、何やら魔法使いの皆さんの視線が急に厳しくなったといいますか、刺すようになったといいますか……

 少々身の危険を感じましたので、本題に戻ろうと思います。

「この果物園を利用して、果物狩りを行ってはどうかと思っているんです」
 僕の言葉を聞いた皆さんは、
「果物狩り?」
「お前聞いたことがあるか?」
「いえ……私も初耳でございますわ」
 そんな会話を交わしながら、ざわざわし始められました。

 そんな皆さんを前にして、僕は、
「え~、果物狩りというのはですね……」
 おもむろに、説明を始めていきました。

 卸売り専用の樹木と、それ以外の樹木をわけ、それ以外の樹木を植えている区画にお客さんを入れ、一定時間果物を好きなだけ収穫して好きなだけ食べていただく・重さあたりいくらといった具合でお持ち帰りも可能というサービスを行うのが、果物狩りなわけでして……

 ただ、このような説明をさせていただいたものの……

「果物を収穫するのがそんなに楽しいのか?」
「魔法で回収すればすぐですのに……」
 そんな声があちこちから上がりまして、再び皆さんわざつきはじめまてしまいました。

 う~ん……確かに、果物狩りの習慣が無く、ただ仕事として果物の世話をされ続けてこられているみなさんには果物狩りの楽しさがなかなか理解しにくいのでしょうね。

 そこで僕は、
「では、まぁ実際に僕達が果物狩りを行ってみますので、その様子をみなさん見てみてください」
 そう言いました。

 その後、僕は、パラナミオ・リョータ・アルト・ムツキ・アルカちゃんを引き連れて果樹園の中へと入っていきました。
「じゃあみんな、今から1時間、この果樹園の中の果物を好きなだけ取って食べていいよ」
 僕がそう言うと、みんなは
「ほ、本当ですか!」
「うわぁ!すごいねアルカちゃん」
「は、はいアル、リョータ様!」
「アルト、感激でございますわ!」
「ムツキも嬉しいニャシィ!」
 一斉に歓声を上げながら果樹園の中へ走っていきました。

 ピルチの樹に駆け寄ったパラナミオ・リョータ・アルカちゃん達は、一心不乱にその実をもいでは口に運んでいます。
 アルトとムツキは、イルチーゴを栽培しているコーナーに移動して、それをもいでは口に運んでいます。
 みんな満面の笑顔で、果物を自分の手でもいではそれを口に運んでいます。
 この果樹園には、様々な果物が栽培されています。
 その中を、みんなはあっちへ移動し、こっちへ移動しながら、あれこれ食べ続けています。

 ですが……
 やっぱり子供ですからね、そんなに多くは食べられません。
 時間の後半には、果物を眺めて回りながら
「これも美味しそうですねぇ」
「次に来たら、これも食べたいアル」
「いっそ、お持ち帰り出来ましたらよろしいのに」
 そんな会話を交わしていた次第です。

 この1時間の間に、パラナミオ達はお腹いっぱい果物を取って食べたのですが、それはこの広大な果樹園全体の1%にも達しておりません。
 これなら、多数のお客さんをお迎えしても、それなりの期間営業出来るのではないでしょうか?
 それに、魔法使いのみなさんの魔法で、果物の実の成長を早めることも可能なはずですしね。

 そういった実務的な面以上に、テトテ集落のみなさんの興味を引いたのは、パラナミオ達の楽しそうな姿でした。

 みんな、満面の笑顔で果物を自分の手でもいで、それを口に運んでいたわけです。

 その笑顔を前にして、みなさん思わずその顔をぽやや~んと笑顔にしていた次第でした。

「うん、そうだな。これはいけそうだ」
「確かに、パラナミオちゃん達のあの楽しそうな姿を見れば、成功間違いなしとしか思えないな」
 最初は疑心案着な状態だったテトテ集落のみなさんなのですが、パラナミオ達の試験果物狩りの様子を見終わった途端に、すごく前向きになられていた次第です、はい。

◇◇

 その後、テトテ集落のみなさんとも相談いたしまして、

 ・現在の果樹園の半分を、果物狩り用に解放する
 ・果樹園への入場料は僕の世界の通貨換算で大人1000円 子供500円/1時間
 ・制限時間10分前に、お客様個別に魔法によるお知らせが脳内に伝達される
  ここで延長を申請すると時間を延長することが可能となりお帰りの際に追加分を支払うことになる
 ・制限時間がくると、魔法で出口に移動
 ・果樹園の隣には狩った果物を持ち出して食べることが出来るコーナーを設置
  このコーナーまでは果樹園の果物の持ち出し可能
  このコーナーを越えて果物を持ち出す―持ち帰る―場合は、重さによって別料金が発生
  このコーナーではコンビニオおもてなしのお弁当やスイーツも販売

 そんなことを申し合わせていった次第です。

 入場料は入り口で徴収しますが、それ以外にも定期魔道船のチケットとセットになった果物狩りツアーチケットをコンビニおもてなしで販売することも申し合わせた次第です。
 セット販売分は、若干割引料金にしてあるのは言うまでもありません。

 魔法使いの奥様方の魔法で、収穫された果物の実を再び生成するのにだいたい一晩かかりますので、閉園後は魔法使いの奥様方が総出で再生作業にあたる予定になっています。魔法使いのみなさんの魔法では、木一本ごとに魔法をかけていかないといけないんですよね。スアなら一瞬なのですが、こればっかりは仕方がありません。
 清掃作業も、その際に一緒にしていただく予定になっています。

 そんなわけで、トントン拍子に話は進んで行きました。
 それもこれも、テトテ集落のみなさんが僕の意見を全面的に受け入れてくださったおかげなんですけどね。
 これはやはり、パラナミオ達が実際に果物狩りをしている姿を見てもらったのが一番効果があったと思います。
 何しろ、僕が何か提案する度に、
「うむ、何しろパラナミオちゃん達があんなに喜ぶのじゃしな」
「間違いはないでしょうね」
 と、みなさん口々にそう言われながら頷いてくださる次第だったわけです、はい。

◇◇

 そんなわけで、テトテ集落果物狩りツアーが開始されることになりました。

 チケット販売は、コンビニおもてなし並びに各地の商店街組合にお願いしています。
 そのチケットの販売に際しまして、ちょっとした宣伝を行っています。
 いえね、先日、パラナミオ達が楽しそうに果物狩りをしている姿を水晶記録器で記憶させておいたのですが、この姿を延々自動再生出来るようにスアが魔法を設定した水晶をですね、チケット販売所に設置している次第なんです。
 で、動画はだいたい1分で1サイクルになるように編集してありまして、最後に

『楽しいテトテ集落の果物狩りツアー・チケット好評発売中』

 と、文字が表示されるようにしてあります。
 合わせて、パラナミオ達が果物をもいでいる姿のポスターも作成していまして、それをその水晶の後ろに貼ってもらっています。

 その宣伝のおかげで、前売りチケットはかなりの売れ行きを記録した次第です。

 ちなみにこの水晶は、テトテ集落にあります果物狩り受付にもおかれています。
 ここに設置されている水晶は特別製でして、水晶の上空にまるでスクリーンに投影するかのようにパラナミオ達の様子を映し出す仕組みになっています。

 で、パラナミオ達の様子を30分に1回上映していまして、それ以外の時間は果樹園の中の様子を映すように設定してある次第です。
 いえね……最初はパラナミオ達の動画を延々リピート上映しようと思っていたのですが……そうなると、テトテ集落のみなさんが水晶画像の前から動かなくなってしまう可能性が……
 とりあえず、みなさんにはパラナミオ達のポスターを無料配布させていただきまして、この動画に関しては納得していただいた次第です、はい。

 そんなわけで、いよいよ明日からテトテ集落の果物狩りが開始になります。

しおり