02 アメイジング.comですって ↗↗
女神様の手によってずいぶん、ささ〜っと異世界に送られてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そこは木洩れ日の差し込む明るい森の端っこ辺りのようで……
ここから奥は深い森、その反対側の眼下はずっとひらけていて、大きな木のその先には一面に草原が広がり、その青々とした草花は暖かな風に揺れている。
そして、左手のずいぶん先にはかすかに人里らしきものが見えるけど。
けっこうな奥地のようね。
それにしても草木のとても良い匂いがする ♪♪
私の大好きな森の香りがしたの。
異世界の第一印象は最高にハナマルかな ☆☆
森林浴は未病(病気の一歩手前の状態)にも予防効果があるらしいからね。
こっちの世界でもきっと元気になれると思うわ。
そうそう、健康といえば一番気になってたのは年齢よ。
「うわっ !」
それを確かめようとすると、そうイメージしただけで目の前のやや左上にステータスウィンドウが現れた。
★★アイリ 村娘 16才 女★★
レベル:1 人族 異世界人
攻撃力:1000
守備力:1000
体力 :1000
速さ :1000
魔力 :10000
好運 :1000
HP:10000/10000 MP:10000/10000 SP:100000
スキル:鑑定・アイテムボックス(日本SP・ノーマル)・転移・スキル操作(女神級)・アメイジング.com・異界言語文字理解・強健な身体
❖女神イーリスの加護❖
レベルは1だけどステータスはほとんどが1000と10000だった。
随分キリの良い数字がずらっと並んでいる。
う~ん、かなりやっつけ仕事っぽい。
このステータスを決定するまでの時間はきっと最小限で、10秒から20秒ぐらいでパパパっと作成された感じがするわ !
これって、適当に作った感が にじみ出ているわね !
それはそれで良しとして、ずっと下まで見ていくと、ああっ、なんてこと !!! スキルに通販大手のアメイジング.comなんてのがあるよ〜 !!
「やったー ☆☆☆☆ 女神様ありがとうございます !!」
信心深い ?? 私はパパンと手を叩き、続いてそっと両手を合わせて、さっきまでのやっつけの部分を平謝りしつつ、感謝の意を最大限に込めてお祈りした。
なにしろ御本人にお会いしたのだから…… 祈りにも熱意がこもるってものよ。
神様なのに少し軽くって人間味のある女神様だったけどね !
""軽いがよけいよ~~ !""
(え~~~ !?!? これってナンでしょうか〜 ? なにやら思念のようなモノが届いたわよ~ ! こんな遠くの世界で心に思ったことまで伝わってしまうのですか~ ? 神の力、恐るべし !!
かしこみ かしこみ あなかしこです~ !)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて、動揺する心を落ち着かせて、とにかくアメイジング.comを検証することにした。
まず何かウィンドウをタッチするものがないかなと思い浮かべたら、なんと ! 右手の中には自宅にあったはずの私愛用、世界一有名な猫<ミッチーキャット>の絵が可愛く描かれたタッチペンが現れた。
ええっ ?! それらしきものを想像しただけで出現したわ。なんていう素晴らしいシステムなの ?
しかも、私の資産をこっちの世界に送るって約束だったけれど、こういったアイテムまで簡単に取り出せるようにしてくれたんだ。うれしい !
元の世界の持ち物を思い浮かべてバッグやスキンケア用品などを何度か出したりしまったりしてみた。
う〜〜ん、うんうん。自由自在でとても便利。
アイテムボックスから出てきたのかしら ?
あっ ! アイテムボックス日本SPの部分が点滅しているわ。
なるほど、きっとここから出たのね ?
アメイジングは一旦キープしておいて、更にアイテムボックスのSPをタッチしてみると家、倉庫、くるまから茶碗、はしに買い置きのチョコレートもポテチも、食べかけのポテチ13分の4まで一覧になっていて取り出すことができそうだった。
って、イエ ? クルマ ?
うわ〜 ! スゴい。
試しに食べかけのポテチ13分の4をタッチすると本当にポテチが現れた。
「ふええーーーーーーーーーーーー、ホントに昨日の食べかけのポテチだ~ !! 最高です !」
「出したついでに食べちゃお !」
パリパリッ、バリバリッ、ボリボリ。
う〜ん、美味しい。
そうか~、タッチしても思い描いても取り出せるってことね。
そして後回しになってしまったアメイジング.comにミッチーのタッチペンで触れると、見事にアメイジングのサイトがオープンした。
良し良し ! では最初にお願いしていた水と食料を試しに出してみようかな ?
食料は今回、クロワッサン10個入りと甘栗800g入りとミックスナッツ1キロ、そしてペットボトル入りの水2リットルを購入してみたんだ。
食料の合計金額の6286円を支払うと…… どういうことなのか残高が380億5536万8790円 になっていた。
「さんびゃく〜~~ ¯\($$$驚$$$)/¯ なっ、なんじゃこりゃあ~~ !!! 」
……ああそっか。
これはひょっとすると前の世界の土地や金融資産や資金などを合わせて計算した金額じゃないのかしら ? だいたいこれぐらいになる気がするわぁ。
チーーーン ▷▷▷▷▷▷▷▷▷▷
うわあっ、ペットボトルとかの商品が地面にドドドンッとでました~ !
スゴいシステムね ! 送料はかからなかったけど実際はスゴい金額になりそうだわ。
そして、重いものを購入した時は足を挟まないように気をつけなきゃ !
どうやら、いつでもアメイジングのサイトから取り寄せができるようね。
これで飢え死にはしなさそう。未知の世界だし、助かるわ。
本当はこのクロワッサンをトースターで温めてサクッとさせてからバターをつけて食べるのが最高なんだけど、それは落ち着いてからね !
「食べかけでも保管できそうだから、クロワッサン一個だけ食べちゃお ! あっ、あと、ナッツもひと掴み食べちゃおっと。へへっ ! ……うん、シアワセ~ ♪♪♪」
それじゃあ、パンやお水は一旦しまっておいてと、ひとまずアメイジングの検証はこれで終了ね !!
続いては、ナンだかスゴそうな予感のするスキル操作というスキル ?? をいただいたので試してみましょうか ?!
使い方が良く分からないんだけど~、ミッチーのタッチペンで適当にスキル操作のところを触れるとSPの部分が点滅し出した。
今度は点滅したSPの部分に触れると設定可能スキルの見出しが一覧でズラズラ~っと表示された。
「むむむむむ〜~ !!! 一覧がたくさんありすぎて、テンでわかんないよ~~ !」
ちなみに、SPのポイントは10000かと思っていたら、驚くべきことに100000だった。
こんなにあったらスキルは何でも取り放題じゃないのだろうか ?
実のところ、スキルって見事に良く分からないから、魔物から逃げられそうな駿足と身体強化、それともしもの為の、回復魔法と火魔法、生活魔法を選択した。
すると全てLV1と表示されレベルアップさせるのにSPが20必要とあった。
問題ないので、全てをレベル2にした。
その上に、レベル3に上げるのに30、4は40、レベル5は50必要だった。
SPは死ぬほどたくさんあるし、いちいちめんどくさいので、全部最高レベルの10にしてしまった。
すると、ジョブの選択可能なモノが白、赤魔法使い、魔術師、武闘家、拳闘士、運び屋、土建屋、採掘士、神官、治癒師、聖女、大聖女、などなどたくさん現れたので、適当に一番良さげな大聖女を選択した。
一番モテそうだしね !
けれども、こんなに上げちゃって良かったのかなぁ ? その結果、普通の人ではあり得ないような能力になっていないかな ?
とはいえ、それはそれ。常識的じゃなくても、どうにかしてモテなきゃならないんだから !!!
そこはさ、自分で自分を言い聞かせて切り替えよう !!
うん、まずは最初に軽く ? 少し泥がついて汚れた服を生活魔法でキレイにしてみようかな。
でも、魔法なんてどうして良いのか分からないわ。
それなら〜、ありきたりだけど…… そうよ、魔法はイメージが大切なのよ ! やってみよう !!
「お願い、洋服をキレイにして !」
と、適当に言ってみたらシュワシュワッとキレイになってしまった。
こんなんでイイのなら意外と簡単だわ !
初めての魔法はそれなりに上手くできた。
せっかくなので、それならばと火魔法も使ってみたくなった。
「いくわよ~~ ! 空を焼き尽くせ ! 煉獄の業火〜 !!!!!」
……ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー !!!!!!! ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーン !!!!!!!
「うわっ、わわわわわっ、 ヤバいヤバいヤバい ! ストップ ! スト~~~~プ !!!」
まるで、本当に空を焼き尽くすのではないかと思えるような、大きな火魔法の塊が上空に向けて放たれた。
危なくこの辺りの木々が丸焼きになるところだったよ。たまたまここは拓けた場所だったから、大きな木の先っちょがプスプスと焦げる程度で済んだみたい ! ホッ。
なんて危ないのかしら。異世界の魔法は取扱いに注意が必要ねっ !
女神のつぶやき)///危ないのは魔法ではなくてアイリ、貴女じゃないのかしら ?
さあ、スキルも魔法も万全だし、これで大丈夫でしょう !? かなり楽観的な思考かもしれないけれど、自信満々で一面の草原に足を踏み入れていった。
ここから未知の異世界の物語が始まるのね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
少し進んでみた。
草原といっても足元には案外草木が生い茂っている。
こんなふうに地面が見えないと、何がいるか分かったもんじゃなくて案外怖いわ !
できるだけ草の少ないところを選んで進むけど気味が悪い。
恐る恐る足を出してみた。
「ギッ、グギギギギーー !」
足元ばかりに気をとられていたら、突然木陰から緑の魔物が現れた。
「イヤーー ! ニタニタと笑って気持ち悪〜い」
それはもう、生々しい害意と性欲の入り混ざった凄まじい迫力を感じるわ !
鑑定してみたらゴブリンだった。
「ゴブリンかぁ ?!」
か弱い人間のメスに出会って、ゴブリンはとても興奮し喜んでいた。
「グモー ギャッ ギャッ ギャッ !!」
「うへえ~ !
ヤバい、ヤバい、ヤバいよ~〜〜
こっちに来ないで~~~~~ !」
ゴブリンは意外と素早く私に駆け寄ってきた。
そしてなんと抱き付いて来たのだ。とても動揺してしまい、接近を防ぐことがまったくできなかった。こんなのって、ありえない !
「ナニナニナニナニ ?!?!
うわあああ~~〜~~~~ !!! 」
腰を私の足に擦り付けて “クニクニクニクニ” としている。
その事象はとても受け入れることができる範ちゅうのモノではなかった。
「あっ!! うわっ !! うえええ〜〜〜~ !!!!!
オマエなんて燃えちゃえっ、業火ああ~〜~~~ !!!!!!」