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第12話 誤解?(4)

 そう彼、魔王の奴は、妃である私に不意を突かれて只困惑、動揺をしているのみに違いない。間違いないのだ。

 だって私の魔王は、今も自身の頭の後ろの部分……。

 まあ、わりと立派な乳房の間──谷間と言う奴に挟んで。挟み、スリスリと、さり気なく甘え、堪能をしている癖に、素知らぬ振り……。

 そう、家のひとは、勇者である私に対して、自分自身は魔王ではない! 誤解! 誤解だと告げてくる。くるのだ。魔王の奴はね。

 昨日? 今日? なのか? 私自身も少しばかり記憶が朦朧、ハッキリとしていないので。この男──。魔王との、己の命、魂をかけた争い! 戦い! 攻防戦をおこなった。荒々しい行為が、昨晩だったのか? 今日の早朝での出来事なのかまでは? 良く解らない。理解ができないが。

 この男……。



 自分自身が生死を賭けた物々しい争いをした男の顔、顔だけは忘れない。忘れはしないのだ。

 魔王自身が、頭鎧を着衣していようが、この男性(ひと)。魔王の素顔を漆黒の闇に覆われた謁見の間であった。あったとしても。

 勇者である私が女だと自分自身の目で確認、分れば。

 私の顔を見て、クスッと不適に笑った。笑いかけてきた漢……。この男の顔を忘れる。忘れる訳がない。ないのだ。

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