58章 ミライの切実な相談1
「アカネさん、相談に乗っていただきたいことがあります」
「相談?」
「はい、2つほど相談したいことがあります」
「いいよ。話してみて」
ミライの瞳が濁っているのを見て、アカネは重い話をするのかなと思った。
「一つ目は店のことです。利用客が増えたのはいいけど、赤字額が膨らんでしまいました」
人の多さからして、大繁盛しているのかなと思っていた。あれだけの人数が集まれば、収益は
上がるのではなかろうか。「なごみや」の入場料は高めに設定されている。
ミライは店の状況を話した。
「入場料の収入はあるのですが、パンやチーズを1個だけ購入して、長期滞在する人が多数を占めています。店は客の人数で餌を仕入れるので、入荷コストが重くのしかかります。余った場合は、全額が赤字となります」
「なごみや」が制限時間を設定したのは、赤字を拡大させないためだったのか。エサ代を100ゴ
ールドしかお金を落とさない人間が、10時間も滞在すれば売り上げは激減する。
「なごみや」にお金が落ちないのは、貧困層が圧倒的に多いから。アカネの思っている以上に、生活に苦しんでいる人が多いのかもしれない。
「入場料をもらっていても、ペットの維持費などが上回ります。赤字続きになると、店を運営できなくなるでしょう。母と店を畳む時期について相談することもあります」
1日の餌代や維持費で、30万ゴールドはかかるのではなかろうか。1カ月換算にすると、900万ゴールドになる。1ヵ月あたりの売り上げが500万ゴールドだとすると、400万円の赤字になる。
1年間に換算すると、4800万近いマイナス収支となる。アカネの一億ゴールドがあったとして
も、2年ですべて消えることになる。
「ペットは好きですけど、借金をするわけにはいきません。アカネさんからもらったお金が無くなる時期を見計らって、営業を終了すると思います」
赤字を垂れ流す店を続ける意味はない。ミライたちからすれば、自然な判断といえるのではなかろうか。
「アカネさんの援助を生かせませんでした。心からお詫びします」
ミライは深々と頭を下げる。
「気にしなくてもいいよ。私にとっては痛くもかゆくもないから」
4000億ゴールドを稼げる女性にとって、1億ゴールドは子供のお小遣いのようなものだ。なく
なったとしても、痛手とはならない。
「アカネさん・・・・・・」
「私にとっては心のオアシスなの。動物たちと過ごしているだけで、嫌なことを忘れられるような気がするの」
「そういっていただけると、とっても救われるような気がします」
「建前でいっているわけじゃないよ。私の本当のお気に入りの店なの」
アカネは明日、明後日のいずれかに店に行くつもりでいる。ワンちゃんたちと戯れることで、ストレスを解消したいところ。
「アカネさん、希望のペットはありますか?」
「いまのところはないかな」
ワンちゃん、ネコちゃんと一緒に時間を過ごせればいいかな。
「アカネさんの希望があれば、すぐにペットを購入します。遠慮なくいってくださいね」
「ありがとう」
「セカンドライフの街」には、どのような動物がいるのかな。そのことが頭に思い浮かんでいた。