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プロローグ

「はっ? 今更俺に何の用だよ!」

「だから、コレ、引き取ってよ。次の結婚に邪魔なのよ!」

「邪魔って、親なら責任持てよ!! 俺の時みたいに勝手な事ばっかりしやがって」

「うるさいわね!! とにかく私には邪魔な存在なのよ!! ほら、私の方はもう、全部書類は用意して記入はしてあるから。あとはよろしくね。父親が違うだけで、一応は兄弟なんだから、これから仲良く暮らしなさい! じゃあね!!」

「お、おい!! 待てよ!!」

 僕達のママがドアをバタンッ!!って閉めて、それを男の人が追いかけて行きました。でもすぐに男の人は戻って来て。僕の知らない男の人。

「くそっ、どうしたらいい。とりあえず寺田さんに連絡を」

 知らない男の人が、僕はよく分からないんだけど、お母さんや別の男の人がよく使ってる、小さな箱みたいな物に1人でお話し始めました。

「ママ…」

 あっ、聖也が泣きそう! 僕が側に居るから大丈夫だよ。きっとすぐにママ帰って来るよ。僕は弟の聖也の前にしゃがんで、聖也が僕の事抱きしめてきます。

 少しして男の人が箱とお話し終わって、僕達の方を見てきました。それからママが置いていったカバンをゴゾゴゾ。ママはここに来る時、カバンに聖也の洋服を入れてたんだ。それから聖也と僕のおもちゃとか、僕のご飯の入れ物とか、色々な物いれたの。

「これだけしか入ってないのかよ!」

「うぇ、ママ~!」

 ああっ!! 男の人が大きな声出したから聖也泣いちゃったよ!! 僕は聖也に抱きつかれたまま、男の人に向かって唸りました。聖也をいじめる奴は、僕が許さないからね!!

「わ、悪い、驚かしちゃったな。大丈夫だぞ。別に俺は怒ってないからな。分かるか? お前もそんなに唸らなくても、俺は何もしないから安心しろ。なっ。そうだ!! 俺の名前は優也だ。優也お兄ちゃんだぞ」

 これが僕と聖也、優也お兄ちゃんの出会いでした。

 その後、家に別の男の人と女の人が来て、いっぱいお話したあと、僕と聖也はまた別の場所に連れて行かれて。そしたらね僕と聖也は離れ離れになっちゃったんだ。僕とっても慌てちゃったよ。
 でもね、1日たったら聖也と会えました。聖也はボロボロの洋服から、綺麗な洋服に変わってて。それから髪の毛もサッパリ。それから僕も、カッコいい輪っかを首に付けてもらったんだ。
 それから僕達はまた、ママに連れて来られた、優也お兄ちゃんの所へ戻って。僕達がママに連れて来られた場所は、優也お兄ちゃんのお家だったんだ。僕達は戻って来てすぐに優也お兄ちゃんに、これから一緒に暮らすんだぞって言われて。僕、あとでママも来ると思ってました。

 優也お兄ちゃんのお家で暮らし始めてから少しして。その間に何回もまたまた知らないおじさんが、僕達に会いに来ました。最初聖也は優也お兄ちゃんにも男の人にも、怖がって近寄らなくて。ご飯食べるのとか大変だったの。でも僕優也お兄ちゃん達のこと、ずっと観察してて。

 それでなんとなくだけど、優也お兄ちゃん達は大丈夫って分かりました。いつも優也お兄ちゃんは僕達に優しく笑ってくれたし。僕達に怒鳴ったりしなかったから。
 だから僕は優也お兄ちゃんに近づいて、抱っこしてもらいました。そんな僕を見た聖也が、ちょっとずつ近づいてきて。

「ほら、聖也。みんなで一緒にご飯を食べよう」

 これでやっと、一緒にご飯食べられるようになったんだ。

 でもね、何日たっても、ママは迎えに来てくれませんでした。そして僕気づいたんだ。ママは僕達を迎えに来てくれないって。僕達を置いてママは何処かに行っちゃったんだって。優也お兄ちゃんと男の人が、そんな話してたし。それから優也お兄ちゃんが僕達の新しい家族になるって。

 家族…。良し!! ママが迎えに来てくれなくれないなら、僕が聖也を守らなくちゃ!! 聖也は僕の大切な家族で、僕の大切な弟だもん!!

「ぽち、きちぇ!」

 あっ、聖也に呼ばれた。僕ここだよ。駆け寄って行ったら、聖也が僕のボール持ってました。それで遊ぶんだね。うん、遊ぼう!

「これから大変だぞ。本当に良いんだな」

「ああ。こいつらにまで、俺と同じような寂しい思いはさせたくないからな。まぁ、俺もまさか、大学生で父親みたいな事するとは思わなかったけどな」

「まぁ、お前が決めたならそれで良い。幸いここはペットOKのマンションだしな」

「引き離しちゃ可哀想だろ。まるで兄弟みたいだからな。いや本当の兄弟以上か?」

「ははっ、そんな感じだな。良し、とりあえず手続きは終わりだ。あとは何かあれば、すぐに連絡してこい。できる限りの事はしてやる」

「助かるよ。まだ2歳だもんな。当分の間は瞳さんに、手伝ってもらう事になるだろうけど」

「それなら心配はいらない。あいつ新しい洋服や必要な物を買いに行くと、今日も朝早くから出かけていてな。久しぶりの育児に燃えてるんだ」

「本当にありがとう」

「にちゃ!!」

「はいはい、何だ? どうした?」

「ふっ、もう本当の家族みたいじゃないか。いや、本当の家族なんだが」

「だろう? まさかこんなに早く慣れてくれるとは思わなかった」

『ワンッ!』

 お兄ちゃん、聖也が呼んでるんだから早く来て!!

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