お祭り後と、ドゴログマ前夜
夏祭りも無事終了いたしました。
コンビニおもてなしの出店は最終日の終盤には大半の品物が売り切れ寸前になるほどの大盛況だった次第です。
相当な数の補充用商品を準備していたにも関わらずこれなのですから、そのあまりの売れ行きにびっくりしたことこの上ありませんでした。
ただ、3号店にある魔法少女戦隊キュアキュア5ランドから仕入れていたキュアキュア5関連グッズだけは結構早くに売り切れてしまいまして、
「すいません、キュアキュア5関連商品は売り切れてしまって……」
と、お客様にお帰り願うしかなかった次第です。
思っていた以上にキュアキュア5の関連商品が売れたもんですから、なんかあったのかな、と思っていたのですが……よく考えたらですね、多くのお客さんが利用した定期魔道船の操舵をしていたのが、このキュアキュア5の絵本の原作者のテレコだったのですが、そのテレコがキュアキュア5のコスチュームを着て操舵をしてたわけです。
以前、メイデンが操舵をしていた際には、メイデンが何かしでかさないように舵の周囲を厳重に壁で覆っていたため、船室から操舵手の姿は一切見えなくなっていたのですが、操舵手がテレコになってからはこの壁を取り払ったおかげで一般客室から操舵手のテレコの姿が丸見えになっているんですよ。
しかも今回は、船内案内係をしている勇者ライアナもキュアキュア5のコスチュームを着ていたもんですから、小さいお子さん達を中心に
「ママ、あのお姉ちゃんが着ている服がほしい!」
って声が、定期魔道船の中に殺到していたそうで、勇者ライアナも
「その服、どこで売ってますか?」
と、相当数聞かれたと言っていました。
「魔法使い集落にあるコンビニおもてなし3号店か、ガタコンベで開催されている夏祭りのコンビニおもてなしの出店で扱っているはずですよ」
そう、勇者ライアナが案内したそうなので、それでお客さんが殺到してきたんでしょうね。
あとで聞いたところ、キュアキュア5ランドの方も相当なお客さんで賑わったそうです、はい。
これを受けまして、今後はコンビニおもてなし各本支店でもキュアキュア5関連商品の取り扱いを増やすつもりです。
やっぱり、こっちの世界でも子供の欲しがる物は人気ってことなんですねぇ。
お祭りでは、コンビニおもてなし以外の出店も軒並み盛況だったそうなのですが、ナカンコンベからやってきたドンタコスゥコ商会や、テトテ集落の皆さんの出店も当然大勢のお客さんで賑わったそうです。
どちらの皆さんも、おもてなし酒場に併設されている宿屋を使ってくださっていたのですが、皆さんイエロとセーテンの2人と一緒に朝まで飲み明かしてから出店を営業なさっていたもんですから、大丈夫なのかな、と、最初は心配していたのですが、スア製の二日酔い止めと栄養剤をがぶ飲みして乗り切ったそうなんです。
この栄養剤は使いすぎると反動ですさまじい倦怠感に襲われてしまいますので、処方しているダマリナッセに
「あんた達、そろそろ終いにしときなよ」
と、散々怒られながらもなんとか売ってもらっていた次第です。
ちなみに、パラナミオ達とピラミちゃんは無事会えたそうでして、みんなで楽しくお祭りを満喫出来たそうです。
最後の花火を
「綺麗ですねー」
「綺麗コン」
と、笑顔で見ていたそうです、はい。
なお、僕とスアが上空の魔法の絨毯の上でキスしていたのをファラさんはしっかり見ていたらしく
「ホント、店長と奥さんは仲がおよろしいことで」
と、苦笑されてしまった次第です。
◇◇
とまぁ、そんなわけでブラコンベ辺境都市連合の夏祭りは無事終了しましたが、ティーケー海岸で開催されている夏祭りはまだまだ続いています。
この週末で、3号店のエレから2号店のシルメールへと担当がバトンタッチされました。
シルメールはお店の方を担当するため、出店は2号店副店長の単眼族チュパチャップが仕切ることになっています。
日差しがきついため、チュパチャップはサングラスをかけているのですが、単眼族用のサングラスって横長の長方形なもんですから、どこか犯罪者の目線を隠しているように見えなくもないわけでして……
そんなチュパチャップの他に、2号店の店員の元シャルンエッセンス家のメイド達が交代で出店の店員を務めることになっています。
エレから引き継ぎを聞き終えた僕は、
「じゃあチュパチャップ、よろしく頼むね」
そうチュパチャップに声をかけました。
僕の言葉に、チュパチャップは満面の笑顔を浮かべると、
「はい! お任せください!」
そう言ってくれました。
「何かあったら、転移ドアをくぐって本店に来てね」
そう伝えて、僕はガタコンベへと戻りました。
◇◇
コンビニおもてなし本店では、ヤルメキススイーツ担当として、新たにアルカちゃんが加わりましてとても賑やかになっています。
アルカちゃんはまだ子供ですので、目が覚めてからお手伝いに来てくれているのですが、いつも結構早くに起き出してきてはヤルメキスとケロリンと一緒にスイーツ作りを頑張ってくれています。
店内の方では、学校が夏休みになったパラナミオをはじめとした我が家の子供達が簡単な商品補充やお店の前のお掃除、それにかき氷機を使ったかき氷の実演販売などを頑張ってくれています。
そんなわけで、コンビニおもてなし本店にお客様がやってこられると
「「「いらっしゃいませ!」」」
元気な子供達の声がお出迎えしてくれているもんですから、
「おぉ、可愛い店員さんがいっぱいだね」
と、お客さん達も思わず笑顔になっているんですよね。
そんなある日
「……旦那様、これ」
スアがそう言って一枚の紙を僕に手渡してきました。
その紙には
『ドゴログマ侵入許可書』
と書かれていました。
そういえば、今回の夏祭り用に珍しい薬品をあれこれ調合したせいで、ドゴログマでしか採取出来ない薬草のストックが少なくなったので侵入の申請をしたって言ってたっけ。
「じゃあ、せっかくだからみんなで行ってみようか?」
僕がそう言うと、スアは嬉しそうに微笑みながら頷きました。
で、
夕食の際に、みんなに
「……と、言うわけで、次のお休みの時、みんなでドゴログマへ、ママの薬草採取を兼ねて遊びに行こうと思うんだ」
そう言ったところ、まず真っ先にパラナミオが立ち上がりました。
「パパ! パラナミオ行きたいです!」
そう言うと、パラナミオは右手を挙げながら頷いています。
それに続いてリョータやアルト、ムツキも笑顔で賛同でしています。
ただ、アルカちゃんだけは、
「え? え? ど、ドゴログマ? アルか?」
と、最初困惑していたのですが、
「リョータ様が行かれるところでしたらどこへでもお供するアル」
そう言いながら、リョータの右手を嬉しそうに握っていました。
そんなアルカちゃんに、リョータは
「みんなで楽しく過ごしましょう」
そう笑顔で言ったのですが、それを聞いたアルトとムツキが、
「そこは『2人で一緒に』ですわ」
「もう、リョータ兄ちゃんはぁ、肝心なところが抜けてるにゃしぃ」
小声でそんなことを言いながら、リョータの背中をつつきまくっていた次第です。
しかしあれですね、リョータに仲の良い女の子のお友達が出来たのはなんだか微笑ましく受け止める事が出来ているのですが……もし、パラナミオやアルト、ムツキに彼氏が出来て、そのまま嫁に行くことになったりなんかしたら、その時、僕はどんな顔をするのかなぁ……なんてことを、ついつい考えてしまったりもしたのですが、とにもかくにも今はみんなとの楽しい思い出をいっぱい作らないとな、と思った次第です、はい。