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敵国の魔導士にスカウトされた

図工王国は算数大陸同盟から除名された。隣国の技術家庭科国は海の向こうのIT合衆国と軍事同盟を結んだために既に算数大陸同盟を脱退している。図工王国は長年にわたり国境争いをしてきた美術人民共和国と不承不承、和平をした。そのせいで算数国としての技術力も落ちたらしいしね。そんな事情があって数学教育もどんどん遅れていく」
「そうですか」
「うん、だから君には是非とも算数をやって欲しいと思っているんだよ。僕としても君の頭脳なら数学に向いてそうだと思ってるんだけどなぁ……どう?」
「申し訳ありません。僕はどうしても魔法がやりたいんです」
真也はそれを聞いた先生の顔を見て驚いた。彼は今、初めて笑顔を見せたのだ。その顔は真也の記憶の中にいる『彼』と同じ表情をしていた。
「そっか……じゃあしょうがないな。でも、何かあったらまたおいでよ。僕たちは友達だろ? それに、君のご両親は君をここに送り込んだことを後悔してるとか聞いたけど……僕は君のことを誇らしく思う。実を言うと僕は図工王国の潜入スパイだ。君を図工王国のドローイング・ウィザードとして見込んでいる。一緒に来てくれないか?」
真也はその申し出を聞き驚くとともに嬉しく思った。それは彼がずっと望んでいた言葉だったからだ。
真也は一瞬ためらいがちに手を差し出す。すると彼の手に暖かい手が重ねられる感触がある。真也は自分の顔を見上げるとその人物と目があった。その人物は彼の記憶の中でいつも自分を見守っていてくれた人だと理解すると同時に涙が出た。その人はそんな彼に優しく微笑みかけると声に出さずに呟いた。
「君はここに君が君を育てたから、今度は僕が君のことを育ててみせるよ」
――パパとママに見守られながら生きられる。そう思うと真也はすごい幸せを感じた。
真也は彼の姿を見ると急いで頭を下げた。
「ありがとうございます――パパとママ」
その感謝の言葉に彼の親は彼を抱きしめる。そして、「良かったよ」って言った。
「よかった……ほんとうに」
真也は涙を流す二人に抱きしめられたままそっと呟いた。あの時も真也はパパとママに見守られながら生きられたのだろうか。そんなことを考えながら真也は自分の両親の頬に触れてみた。それは本当にお父さんとママとの愛の深さを感じされた。
「僕らはもう行くね。もう少し君の夢を見せてくれないと、君自身に生きがいがあることが分かっていないかもしれないからね」
「はい、お世話になります」
「本当に色々とありがとうね。頑張ってくるよ」
母親は彼にここまで言わせてくれたことに感謝をしつつ真也は両親と別れて町へと帰った。

しかし彼の両親がいなくなったあとも真也の目からは一滴の水滴が流れた。それを拭いながら彼は笑った。
れだけで十分です)

 
挿絵

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