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夏祭り×夏祭り 序

 夜明け前です。
 僕はいつものように目を覚ましました。
 僕の横ではスアが寝息を立てています。
 今朝はスアの研究室の中にある簡易ベッドで目を覚ました僕です。
 寝室にある大型ベッドの上で子供達が寝静まるまで一緒に寝た後、僕とスアはここに移動していたした後、一緒に寝たんですよね。
 で、先に目を覚ました僕は、スアを起こさないように御姫様抱っこして寝室へと移動しました。
 ベッドの上では、子供達が気持ちよさそうに眠っています。
 その一番横、ムツキの隣にスアを寝かせると、僕はコンビニおもてなしの制服に着替えながら本店へと向かって行きました。

 今日から僕はコンビニおもてなし本店での勤務に戻ります。
 ここ数ヶ月、5号店の営業を軌道にのせるために悪銭苦闘していたわけですけど、その役目を無事に果たして戻ってこれたことで、安堵しきりだったりします。
 とはいえ、本店も大変なわけです。
 以前から店長補佐として、コンビニおもてなし本店を支えてくれていたブリリアンがいなくなったわけですからね。
 その分も皆で頑張らないといけないわけです。

 現在のコンビニおもてなし本店の顔ぶれは

 店長が僕
 社員として
  イエロ
  セーテン
  テンテンコウ
  ヤルメキス
  ケロリン
 バイトとして
  魔王ビナスさん
  
 以上のメンバーです。
 一見多いように見えますけど、イエロとセーテンの2人は肉確保のための狩り要員のため店にはほとんどいませんし、ヤルメキスとケロリンの2人は早朝から閉店までヤルメキススイーツを作成していますのであまり接客作業を行うことが出来ません。
 そのため、僕が戻る前の本店では主に、ブリリアン・魔王ビナスさん・テンテンコウの3人が接客を行い、スアがアナザーボディで商品補充を手伝っていたんです。

 空席になった店長補佐ですが……最初に考えたのはバイトの魔王ビナスさんを正式採用になってもらって、就任してもらえたらな、といった案でした。
 実績といい、その処能力といい、最適な人材と言っても過言ではありませんからね。
 ただ、魔王ビナスさんはあくまでも内縁の旦那さんのお仕事のお手伝いを第一に考えられているため、正社員にとの要請に今まで一度も首を縦に振ってくれていないんです。
 なので、多分今回も駄目だろうなぁ……と、思っていたのですが、
「条件付きでよろしければ、お受けさせていただいても構いませんわ」
 魔王ビナスさんはそう言ってにっこり笑われたのです。
「え? マジですか!?」
「はい、今はミクナスの子育てを優先して旦那様のお仕事の手伝いは自粛してほしいと懇願されてしまいますので」
 魔王ビナスさんはそうおっしゃいました。
 
 魔王ビナスさんの内縁の旦那さんって、元勇者で今は異世界の勇者の手伝いをするお仕事をなさっているとかで結構やばい時も多いって話だったんですよね。
 それだけに、その旦那さんが魔王ビナスさんのことをおもんばかってそう言われたのもわからないでもありません。

 で、その際に魔王ビナスさんから出された条件というのがですね
「勤務時間は、今までより若干長い午後2時まででよろしければ」
 とのことでした。
 なんでもこれ、ご自宅の家事をなさるため、とのことでした。
「何しろ、他の内縁の奥方の皆様は揃いもそろって家事を苦手になさっておられるものですから」
 魔王ビナスさんはそう言いながら少し困ったような表情を浮かべておられました。

 とまぁ、そんなわけで魔王ビナスさんが正式にコンビニおもてなしの店員になり、副店長に就任してくださいました。勤務時間が短いため、給与形態は今までのバイト時と同じ時給制ですが正社員としての分と、副店長としての役職加算分を時給単価に反映させましたので、結構なアップになっています。でもまぁ、魔王ビナスさんにお支払いするのなら安いものです、はい。

 で、僕が厨房に顔を出すと、その魔王ビナスさんがすでに笑顔で鍋を振り回しながら調理作業を始めておられました。
 背中にはおんぶ紐でミクナスちゃんをおぶっています。使用しているおんぶ紐は当然コンビニおもてなし製です、はい。

 ちなみにですね……
 こうして魔王ビナスさんがミクナスちゃんを、コンビニおもてなしで販売しているおんぶ紐でおぶって仕事をしているもんですから、おんぶ紐の売り上げが急増しています。
 それにつられるように、他の赤ちゃん用品もよく売れているんですよね。
 これには、5号店でビニーを背負ってあちこちで仕事をしているルアの影響もあると思いますけど、ホントにありがたい次第です。

「あ、店長さん、おはようございます」
 僕に気が付いた魔王ビナスさんが挨拶をしてくれました。
 すると、中央の調理台でスイーツ作成作業を行っていたヤルメキスとケロリンも同時に顔をあげ
「お、お、お、おはようでごじゃりまする」
「お、お、お、おはようございますぅ」
 と、同時に挨拶を延べ、そして2人して頭を下げすぎて調理台に派手に額をぶっつけて痛がっていた次第です。
 なんというか、こういった仕草もなんか懐かしく感じてしまいますね。

 以前ですとここにテンテンコウがいるのですが、パン工房を5号店の地下に移設した関係で朝一の時間は5号店で仕事をしているんですよね。

 そんなわけで、僕達は、僕・魔王ビナスさん・ヤルメキス・ケロリンの4人で調理を行っていきました。

 1時間ほどして、各支店行きの調理がほぼ完成し、品物を各支店行きの魔法袋に詰め終えた頃合いを見計らったかのうようにハニワ馬のヴィヴィランテスが姿を現しました。
 ここら辺のタイミングはホントさすがですね。
「あら? あんたってば今日からこっちに戻ったの?」
「あぁ、そうなんだ。よろしく頼むよヴィヴィランテス」
「ふん、まぁそこまで言うのならよろしくしてあげなくもないわよ」
 ヴィヴィランテスは悪態をつきながらも、どこか楽しそうな様子で魔法袋を背に乗せ、転移ドアをくぐっていきました。
 そんなヴィヴィランテスを見送った僕達は、今度は本店の営業開始準備を始めていきました。
 掃除を行い、商品を補充し、弁当をならべ、ヴィヴィランテスが5号店から持って帰ってくるパンをおけるようにスペースをあけておきます。
 スアの新しい魔法薬をおもてなし診療所のダマリナッセの元に届けたり、と、あれこれ作業を行っていきます。

 ほどなくして、開店時間がせまってまいりました。
 すでに、ヴィヴィランテスから受け取ったパンの陳列も終わっています。
 お店の前には、開店を待っているお客さんの列が出来ています。
「じゃ、みんな今日も頑張っていきましょう!」
「「「はい!」」」
 みんなの元気な返事を確認した僕は、
「いらっしゃいませ! お待たせしました、コンビニおもてなし本店開店しま~す!」
 そう声をあげながらお店の入り口の扉をあけていきました。

◇◇

 お店は相変わらず好調です。
 弁当やおにぎり、パン類を中心にあれこれどんどん売れています。
 スアの薬品も好調ですし、その他の雑貨も順調に売れています。
 今日は、ルア工房製の高級品・アカゾナエに発注が入ってびっくりしたりもしました。

 あれこれ忙しく仕事をこなしていき、もうじき閉店時間という頃合いで商店街組合のアレアが尋ねてきました。
「店長さん、いつもお疲れさまですです」
 そう言いながらアレアは書類をいくつか僕に手渡してきました。
 それは、週末に開催する予定になっているブラコンベ辺境都市連合で行う夏祭りの計画表でした。
 すでに、ブラコンベとララコンベの商店街組合とのすりあわせは済んでいるようです。
 その中には、参加費の徴収方法とその分配計画・出店の配置予定図・催し物枠の調整などについてまとめられていました。
 その他の主だった内容としましては、辺境都市連合以外にオトの街・テトテ集落・ナカンコンベからの参加希望の打診があり、前向きに検討しているといったあたりですね。
 どうやら今回も、賑やかな祭りになりそうです。

 今のコンビニおもてなしは、ティーケー海岸で開催されています夏祭りにも出店参加していますが、この週末で担当を3号店とバトンタッチします。

 あれこれ忙しいコンビニおもてなしですけど、これも喜ぶべきことですよね。
 僕は、書類に目を通しながら、少し嬉しくなっていた次第です、はい。

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