54章 報告
アカネは無事に帰還することができた。裏世界の住民から攻撃を仕掛けられたときは、どうなることかと思った。
仕事を終えた後、情報屋に足を運んだ。
「裏世界探索に行ってきました」
「裏世界はどうでしたか」
「人間の形をしたロボットみたいな生き物が生活していました」
人間、ロボットのどちらなのか区別はつけづらい。人間ロボットという言葉がしっくりとくる。
「まだ生きているんですね。もう絶滅したのかなと思っていました」
裏世界の住人の数は少なめだった。全部で100体もいないのではなかろうか。
「裏世界を撮影してきました」
裏世界の住民ともめごとにならないよう、すべての写真において許可を得てある。双方の合意によって成り立つということが、ビジネスの世界においては必要不可欠だ。
マツリは撮られた写真を、一枚一枚確認していた。
「アカネさんはすごいです。私は写真を一枚もとれないと思っていました」
勝算のない仕事を依頼するのはどうなのかな。60パーセントくらいは成功できるものであってほしい。
「マツリさん、裏世界は人間を敵対視しています。人間を見かけたら、攻撃するようにプログラムされているみたいです。私だから大丈夫だったものの、他の人なら間違いなくあの世行きだっ
たでしょう」
半分は地上界への人間に対する警告、半分は裏世界を守るためだった。彼らの生活に、人間が入り込んではいけない。
「やはりそうですか。裏世界では人間に対する警戒心が強いんですね」
「写真を納める代わりに、こちらの世界の人間が悪さをしないよう、結界をはりました。裏世界への侵入は絶対にさせられません」
裏世界に侵入するものが現れたら、完全に修復不能になる。アカネは約束を守る義務がある。
「裏世界侵略に失敗したときに、裏世界に行くための道具は廃棄されているんです。人間界においてもあの出来事は黒歴史となっています」
結界をはらなくとも、裏世界の安全は保障されていたのか。アカネは余計なことをしてしまったような気がする。
「人間が侵略したあと、裏世界の住民が復讐にやってきました。ほとんどの人間は殺され、わずかな人数で村を立て直したんです」
危害を加えそうなものは、先に殺してしまえ。裏世界の住人の行動原理は、極端な理論によって成り立つ。一歩間違えれば、非常に危険な方向にものごとが進みかねない。
「人間の無力さを痛感させられたので、いろいろな防御壁を作ることとなりました。裏世界の住民専用の武器などが大量生産されました」
人間も生き残るために必死になっている。アカネはそのことに対しては、やむを得ないかなと思った。
「アカネさんは写真を収めることに成功しました。信頼されているとみなしてもよいでしょう」
信頼されているというより、力で押さえつけてしまった。屈服の方が正しいような気がする。
「アカネさん、今回もおつかれさまでした。ゆっくりと休んでください」
仕事も終わったことだし、家で歓迎パーティをやろうかな。お金もたくさんあることだし、最高級の食材を揃えよう。