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夏のティーケー海岸ものがたり その6

 ティーケー海岸のお祭りのコンビニおもてなしティーケー海岸出店はおかげさまで大盛況です。
 特に、リョータとアルトが担当してくれているかき氷の実演販売が大人気でして、一日の間に何度も買いに来てくださるお客さんも少なくありません。
 中にはかき氷を真似しようとした出店も結構あったのですが、やはりかき氷機がないとうまくいかないようで、そのことごとくのお店が失敗していました。
 中には包丁で氷を刻もうとなさった方もおられまして……えぇ、偶然気が付いたので大慌てで止めさせて頂いた次第です、はい。

 お客さんの子供達の間では、キュアキュア5の水着やビーチボール、浮き輪などが大人気でした。
 3日目になると、結構な数の子供達がキュアキュア5の水着を着て街道を歩いている姿を見かけるようになったほどです。
 その姿を見たパラナミオが、すごく嬉しそうな顔をしていたんですよね。

 僕の作っている串焼きも、海鮮系の串焼きが並んでいる中で山の魔獣であるタテガミライオンの肉の串焼きを中心に販売しているおかげで、まず珍しさで購入していただけて、そしてその味でさらに購入していただけ話題になっていくという相乗効果が巻き起こっておる感じです。
 
 ムツキのアイスクリームも好調に売れていますし、その他の商品も好調な売れ行きを記録しています。
 
 出店のお手伝いは、

 初 日……グリアーナ
 2日目……トルソナ
 3日目……ジナバレア

 と、5号店の店員交代交代で担当してもらっています。
 せっかくですので、お祭りの雰囲気を満喫してもらって、閉店後は一緒に屋台を満喫してもらおうと思っている次第です。

 5号店は、コンビニおもてなしの中でも1日の来客数がダントツに多いんですよね。
 本店から4号店までの中で一番来客が多いのはブラコンベにあります2号店なんですけど、その倍以上の来客を毎日記録しているんです。
 今も、こうしてティーケー海岸出店のために僕ともう1人が毎日抜けているため、他店からヘルプにきてもらっているほどです。
 そんな激務を頑張ってくれているみんなの息抜きを兼ねて交代で出店を担当してもらっている次第です。
 担当してくれた店員には夜の屋台を満喫してもらい、子供達と一緒に臨時巨木の家で寝てもらい翌朝一緒に朝食を食べてから次の店員と交代してもらうといった具合にしています。
 みんな
「屋台で楽しく飲み食い出来て、波の音を聞きながら眠れるなんて最高でした。景色もとっても素敵ですし!」
 と、みんな喜んでくれていまして、企画した僕としましても何よりです、はい。

 そんな中、4日目から子供達が数名加わりました。
 フク集落のピラミと集落の子供達です。

 いえね、これ、ファラさんたってのお願いだったんですよ。
 元々このティーケー海岸にあるおもてなし商会ティーケー海岸店を担当していたファラさんなんですけど
「ねぇ、店長……よかったらさ、ピラミ達に出店の手伝いをさせてあげてくれないかしら?」
「出店の手伝いをですか? 人手なら足りてますけど」
「いえ、そうじゃなくてさ……あの子達にも海を経験させてあげたいっていうかさ……」
 珍しく、少し恥ずかしそうな表情を浮かべながらそう言われたファラさん。
 いつもは、ドンタコスゥコ相手に地獄の閻魔様ばりの魔性の笑顔を浮かべているファラさんなんですけど、どうもピラミのことをすごく気に入っているようなんですよね。
 今もおもてなし商会ナカンコンベ店でピラミを雇用して自分の下で働かせているわけですけど、ホントあれこれピラミや、ピラミと一緒に暮らしている子供達の事まで気にかけておられるんです。
 そんなファラさんのお願いですから、僕としても断る訳にはいかないと思ったわけです。

「パラナミオちゃん、来たコン!」
 ファラさんに連れられて出店にやってきた狐人のピラミは嬉しそうに尻尾を振りながらパラナミオに抱きついていきました。
「わぁ! ピラミちゃんお待ちしてました!」
 そんなピラミをパラナミオも笑顔で抱きしめています。
 年が近いのもありまして、2人は仲良しなんですよね。
 その後、みんなで挨拶を交わし合った子供達。
 それが一段落したところで、僕は子供達にお仕事をお願いしました。
 
 2人は、リョータとアルトのかき氷販売のお手伝い。
 2人は、ムツキと一緒にアイスクリーム販売のお手伝い。
 残りのみんなはパラナミオと一緒にキュアキュア5の商品販売のお手伝い。

 僕の指示を受けた子供達は、真剣な表情でそれぞれの場所へ移動していきまして、そこを担当していいる我が家の子供達から指示をしっかり聞いていました。

 開店時間がきました。

 今日は、昨日までよりも賑やかなコンビニおもてなしティーケー海岸出店です。
 フク集落の子供達は
「いらっしゃいませ~」
「おいしいですよ~」
 と、笑顔で声をあげています。

 ちなみに、集落の子供達みんなにキュアキュア5の水着を着てもらっているんですけど。
「うわぁ、可愛いコン!」
「素敵!」
「夢みたい!」
 と、みんなすごく喜んでいたんですよね。
 その影響もあってか、みんな気合い満々な様子で声をあげています。
「みんな、張り切りすぎないようにね、1日は長いから」
 串焼きを焼きながらそう声をかけたところ、みんな
「はい、わかりました」
 そう返事を返してくれてはいるんですけど、相変わらず張り切って大きな声を上げてくれていました。
 
 ピラミ達も頑張ってくれたおかげで、今日もいろいろな商品がたくさん売れました。

 夕方近くになると、ファラさんが様子を見に来ました。
 ピラミはファラさんの姿を見るなり顔を輝かせていました。
「ピラミ、みんな、頑張ってる?」
「ファラお姉ちゃん、私もみんなも頑張ってるコン!」
 そう言いながら、ピラミは尻尾を嬉しそうに振りながら抱きついていきました。
 ほどなくして、出店を閉店して骨人間(スケルトン)達に任せる時間になりました。
 今日はせっかくなのでファラさんも一緒に屋台を回っていきました。
 ファラさんはフク集落の子供達に囲まれながら屋台街を歩いています。
 みんながファラさんの手や尻尾を掴もうとするもんですからファラさんは歩きにくそうなんですけど
「ほらほら、横には広がらないのよ」
 ファラさんはそう言いながら、どこか嬉しそうに笑っておられます。
 
 以前、ファラさんからお聞きしたことがあるんですけど……
 ファラさんはかなり昔、森の奥でひっそり暮らしていた事があったんだそうです。
 その近くに、山賊に襲われていた村があったそうです。
 それに気付いたファラさんは、人の姿になって助けに行ったそうなのですが、すでに大人達は殺された後で、子供達は奴隷として売り飛ばそうとしていたのか、みんな縛り上げられていたそうです。
 その子供達を助けたファラさんは、その子供達としばらくの間一緒に暮らしていただそうです。
 ただ、しばらくすると子供達の親戚が迎えに来て、みんなファラさんの元からいなくなってしまったんだとか……
「べ、別にね、だからといってその時の子供達のことを、ピラミ達に重ねてなんかいないんだからね!」
 ファラさんはそう言ってましたけど……

 この日、日が暮れると、ファラさんは リヴァイアサン化してみんなをナイトクルージングよろしく海上遊覧に連れていってくれました。
 スアが隠蔽魔法をかけてくれましたので、誰にも見つからずにすんでいます。
「……ピラミ、楽しい?」
「コン! とっても楽しいコン!」
「そう……」
 ファラさんは、頭の上にのせているピラミとそんな会話を交わしながら、結構長い時間遊覧してくれました。

 フク集落の子供達は、このまま僕達5号店の担当が終了する週末まで出店を手伝ってくれました。
 ファラさんも毎日おもてなし商会の仕事が終わると出店を訪ねてきてくれて、毎晩みんなをナイトクルージングに連れていってくれました。
 夜は、スアが拡張してくれた子供達用のベッドで、子供達と一緒に寝ていたファラさんなのですが、ピラミや他の子供達に抱きつかれて嬉しそうに微笑みながら眠っているファラさんの寝顔はとても素敵でした。

 こうして、僕達5号店の当番は終了しました。
「店長ちゃん! 次は任せて欲しい、みたいな! きゃは!」
 そして僕は、次の当番である4号店のクローコさんに出店を引き継ぎました。

 出店の担当は終了しましたけど、また時間があったら様子見をかねて子供達を連れてみんなで遊びに行ってみようと思っています。

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