第5話 真冬の怪奇?(5)
そう、僕の背後に迫る、謎の物に対して願い。嘆願。『僕の許へとこないでくれお願いだ』と、言わんばかりに、だけではい。
『僕の許へとくるな! こないでくれ! お願いだ!』と威嚇とね。
『お前! 貴女! の向かう前方には人──。そう、僕がいるのだから。謎の物は直ちに反転をして方向を変えて欲しい……。そして僕の許──。何処か遠くへ行ってよ。お願い。お願いします。御代官さま……』、『ではなく物の怪さま』と、嘆願をしたい衝動に駆られながら、己の生唾を『ゴクン』と、飲み込み、喉を鳴らしながら無心、無関心、素知らぬ振りを装いながら。今の今迄とめていた自分の両手、掌を再度動かしながら。お片付けの作業の続きをおこなう。おこない始める。
でもね?
〈ガリガリ〉
〈ズルズル〉
〈ガリガリ〉
〈ガシャン〉の鈍い金属はとまらない、どころか?
僕の予想通りでやはり? 段々と己の耳の大きく聞こえ始めている。