36章 エサを与えられていないペットたち
「なごみや」の店内では、他の利用客がエサをあげている。彼らも癒しを求めてやってきたのかな。
ペットを見ると、アカネのテンションはガタ落ちする。エサを満足に食べていないのか、ほっそりとしている。動物本来の持つ、癒し効果は小さくなる。
うなだれている犬に、パンとチーズを与える。お腹が空いているのか、あっという間に完食することとなる。
犬はエサを与えられたばかりにもかかわらず、次の餌を催促をしてくる。飯をよこせ、飯をよこせという言葉が聞こえてくるかのようだった。
食べすぎになってもいいのかなと考えてると、ミライの母親がこちらにやってきた。
「アカネさん、セカンド牛が焼き上がりました」
「ありがとうございます」
食中毒を防ぐためなのか、肉は焼きすぎというくらいに焼かれていた。こんなに焼いてしまっては、肉本来のおいしさは得られないのではなかろうか。
「ペットを個室で買っているんですね」
「そうです。好きなペットと触れ合えるようにしています」
維持費、光熱費などでお金を使い果たしてしまい、エサをあげられないのかな。経営状態はわからないものの、すぐに倒産しそうな状態である。
「ワンちゃん、セカンド牛だよ」
犬はセカンド牛を口にする。あまりにもおいしそうに食べるので、こちらまで幸せな気分になった。
食パン、チーズ、セカンド牛をミックスして、サンドウィッチを作った。こうすることで、料理がおいしそうに見える。
「ワンちゃん、サンドウィッチだよ」
セカンド牛のにおいを嗅ぎつけたのか、他の犬の鳴き声が聞こえてきた。ごちそうに興味を示すのは、人間も犬も変わらない。
いろいろな犬が喜んでいる姿を見たい。アカネは追加注文をすることにした。
「セカンド牛3000グラム、食パン30枚、チーズ2000グラムなどをお願いします」
普段なら食べすぎだろうけど、今日くらいはいいかな。犬に栄養を取ってもらって、元気な姿を見せてもらいたい。
「ありがとうございます。お代は60000ゴールドです」
1時間2000ゴールドの「なごみや」で、10000ゴールド以上を使ってしまうとは。本来なら自重すべきなのだろうけど、止められそうになかった。働きづくめで蓄積したストレスは、アカネの想像を遥かに超えていた。
自宅でペットを飼いたいと思ったものの、仕事で家を留守にすることが多い。エサの問題を解決しない限り、家で飼うのは無理である。ペットの姿を見るために、「なごみや」に足を運ぶことになりそうだ。